表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜華燕のセラピスト  作者: 高杜 凪咲
Magic1 知らない世界
7/14

大きな扉

 地震が起きた時、未汝は階段を降りている最中さいちゅうだった。


 天井てんじょうの照明がカタカタと揺れ出し、やがて体に揺れを感じた。

 未汝は階段の手すりを落ちないようにぎゅっと握って支えにし、座り込む。


 結構大きな揺れだ。壁に掛けてある絵がガチャンと落ちる音がして、靴箱の上にある花瓶がガタガタと音を立てて倒れた。

 しばらく手すりにしがみ付いていると、揺れがんだ。未汝は立ち上がって階段を下りる。

 倒れた花瓶を直し、靴下をらさないよう靴をいて、たたきに落ちた絵を拾い、濡れていないことを確認して元に戻そうとした。


 だが、今まで絵がけられていたその場所に、見覚えのないかぎのついたネックレスがかっている。


「何?これ」


 未汝は、絵を靴箱のれていないところに置いて手を伸ばし、それを手に取った。

 すると周りの景色がゆがみ、序々(じょじょ)あたりの色が薄くなって、もやがかかっているかのように白くなっていく。


「何?ちょっと何なの!?お父さんっ!!お母さんっっ!!」


 慌てて叫ぶが、その声は空虚くうきょな空間に響くだけで、誰の耳にも届かない。


 しばらくすると、見たこともない大きな扉が、目の前に現れた。


「ここ・・・どこ?」


 家にいたはずだ。自宅の玄関ドアは、こんなに大きな扉じゃない。


 信じられない光景をの当たりにしながら、状況を理解すべく、未汝はとりあえず手に取ったネックレスを落とさないように首にかけて、鍵を握りしめる。


 やばい、異世界へ転生したかもしれない。

 葉月が言うように、一番まともな写真を写真立てに入れて、両親の目につきやすいだろう場所に置いておけばよかった――!!!


 後悔先に立たずとは、よく言ったものだ。確かに、先にやむことは出来ない。


 どうしよう。何かふざけた顔して写ってる写真をビラに使われて、駅前とかで配られてたら。


 この子を知りませんか?と書かれた下に、年頃の少女としてあるまじき顔をした写真が貼られ、本人の知らぬところで醜態しゅうたいをさらしていたとしたら……?


 未汝は、ブンブンと首を横に振った。何やら、血の気が引いていく気がする。

 もし無事に戻れたとしても、そんなことになっていたら、生きていけない。長い人生、たたまれない思いをして歩まなくてはならないなんて、拷問ごうもん以外のナニモノでもない。


 お父さん、そういうところ絶対無頓着(むとんちゃく)だろうし。

 お母さんは、あら、この写真なんて面白おもしろい顔して写ってるわよ?とか言って、絶対嫁入り前の娘が恥ずかしい思いをしそうな写真を選びそうな気がするのだ。


 マズイ。非常にマズイ。どうにかして早く戻らねば。


 未汝は、このおよんでまだ、そんな心配をしているのだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ