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シンデレラ

初投稿です

駄文ですがよろしくお願いします

 夜になり、暗くなった森を抜けていく。

 街からは既に遠く、聞こえてくるのは虫の声のみ。

 どうしていつもこうなのだろう。なんで私は夢見ることさえ許されないのだろう…。いくら努力して、足掻いたところで、全て無駄。

 結局は他人に利用され、搾取され続けて最後はゴミのように捨てられる。

 きっとそういう運命。


「なんでこんなところ来ちゃったんだろう…」


 足取りは重く、あまり先に進みたいとは思わない。

 だが、家の方に戻ろうとすると足が動かなくなるのだ。

 結果、ゆっくりとしたペースで今も森の奥深くまで入り込もうとしている。


「掃除しとけって…言われてるんだけどなぁ…」


 もう掃除する場所なんて無いのに。

 今夜の為に、寝ずに昨日の夜から文句のつけようが無い程綺麗に掃除した。

 他の家事だって完璧以上にこなしたはずだ。

 それらの準備も全て水の泡。

 こうして、ありもしないゴミの掃除を命令されている。

 きっとこうしてこれからも私はお姉様方に奴隷のように扱われて生きていくのだろうな…。

 なんだか、もう疲れてしまった。

 奴隷として生きていくくらいなら、いっそこの森で魔物に食べられて死んじゃった方が幸せなのかも。

 いつもならこんな事は考えもしないが、今はそんな事を思ってしまう程参ってしまっていた。

 どんどん森を深く入っていく。

 今までこんなところまで来たことなんて無かったのに。

 ああ、本当にもう帰れない。

 もう帰り道もあやふやで、街がどの方角なのかも分からない。

 森って、暗くて、静かで、とても恐ろしい所なのね。

 なんて、上の空ながらに、心の中で独りごちる。

 怖い。怖い。怖い。

 でも、あの家でこの先もずっと暮らしていくと考えたときの怖さよりは全然マシだ。

 もうこれ以上あの家で暮らしていたくない。


「もう…どうなっても良いや…」


 思考を投げやりにしてただ歩き続ける。

 颯爽と現れて助けてくれる、そんな王子様は現れない。

 ずっといつか誰かが助けてくれる、私を救いに来てくれる。

 そんな風に夢を見てた。

 それは虚しい幻想。現実は今こうして目の前にある。

 だからもう幸福は望まない。

 望んだところで苦しむだけだから。

 私は森を歩き続ける。

 私を終わらせてくれる何かを探して。


「イヤァァァァアアアアア⁉」


 !!!??


 びっくりした…。

 かなり近くで女性の悲鳴が聞こえた…。

 なんでこんな時間、こんなところに女性が…?

 私が言えた話ではないのだけれど。

 悲鳴を上げたってことはもしかして魔物に襲われているの?

 だったら助けなきゃ!


 声のした方角へ急いで走って行く。

 この森では夜行性の魔物が活発に動き出す一番危ない時間だ。

急がないと…。

 声の主の場所には、ほんの数秒でたどり着いた。

 そこで見た光景を、私は一生忘れることはないだろう。

 木々の隙間から月の光が差し込み照らす中、中心にあるベッドに座り込んでいる、あの虹色の美しい女性を。

 きっと私は忘れない。




            *




 ある日、目が覚めたら見知らぬ森の中だった。


「どこここ…?」


 周りは見渡す限り緑一色だ。鼻を突き抜けるのは植物特有の青臭い匂いのみ。

 木漏れ日からは太陽が覗かせている。どうやら今は昼のようだ。

 俺昨日まで何してたんだっけ…。

 そこでふと気づく。


「あれ…昨日どころか自分の名前すら思い出せないんですけど…」


 名前だけでなく家族や友人、自分の歳すら思い出せない。

 おおよその自分に関する記憶を喪失した状態のようだ。

 とりあえず記憶を整理してみようか。

 住んでる場所は少なくともこんなゴリラが住んでそうな森ではない。しっかりとした家に住んでいた筈だ。

 性別は男…だったはず。一人称が俺なんだからきっと男だろう。

 試しに股間に触れようと目線を下げると目の前にはたわわに実ったメロンが。


「あれぇ…なんでぇ…?」


 ていうか今更ながら気づいたが服装も白いワンピースだし…。

 あれ、おかしいな? たしかに男だったはずなんだけど。

 つかマジでデカイなこのおっぱい…下が見えないぞこれ。

 試しに揉んでみると柔らかな手応えが。


「これは…なるほど…」


 初めて揉んだけどこんな柔らかかったんだなおっぱいって。

 なんだか少しムラっときた。


「…! この感覚は…」


 慌てて股間に手を這わすとそこにはご立派な物が。

 やっぱり男じゃないか…⁉

 なんということだ…。推定女から再び性別不明に逆戻りしてしまった。

 …まぁどっちでもいいか。

 考えるのがめんどくさいことは後回しだ。明日から頑張る。

 それよりどっかに鏡ないかな? 自分の顔がどんな顔なのか確認しておきたい。

 今俺がいる場所は森の中だが、詳しくいうとベッドの上だ。何故か森の中で俺とベッドだけが放置されている。

 枕やふかふかの布団まで用意されていて、気持ちよく眠れそうだ。こんなとこに放置するくせに良い寝具を用意してるのが逆にムカつく。そんなとこに気を回すならもっと別のとこに気を遣ってくれよ。

 俺をこんなとこにやった犯人を探したいが、そんなことよりも今は鏡だ鏡!

 森のどっかに落ちてないかな…とベッドから降りようとした瞬間、顔面に鈍い痛みが走る。


「ヘグァ⁉」


 なにこれ…透明な壁みたいなもので塞がれてベッドから降りれない! ていうか鼻痛い。

 涙目で打った鼻を摩りながら壁に八つ当たりする。

 ……手が痛ひ…。

 クソっ! ベッドからは出られないし体は女になってるし、俺をこんな目に合わせた犯人は絶対許さんからな…。


「鏡よ鏡、どうか出てきておくれー…」


 諦観まじりに呟いて項垂れる。


「ん?」


 あれ? 鏡落ちてんじゃん。

 項垂れて真下を向くとそこに鏡が置かれているのに気づく。

 有り難いけど、さっきまでここに鏡なんてなかったよな? なんで急に鏡が…?

 まぁ鏡があるならどうでもいいか。手に取り顔を確認する。


「おぉ〜!」


 めっちゃ美人だ!

 髪は腰まで届くロングで色は虹色のグラデーションがかかった感じで、目も同じく虹色の浮世離れした見た目だ。

 思わず鏡に魅入ってしまうほど、煌びやかなその姿にうっとりする。

 なんというか神々しい?って感じだ。とても美しい。ハラショー! あと三時間は眺めていられるね。

どうせやる事もないし本当にずっと顔を見てようかな…。


         —数時間後—


 飽きた…。いくら美人とはいえ限度がある。

 美人は三日で飽きるどころか一時間くらいでもう完全に飽きてたぞ。

 ベッドからは出られない、暇つぶしの道具もない。やる事が何もなさすぎてヤバイ。

 ………寝ようかな。


  寝た。







 目が覚めたら見知った森の中だった。

 一度寝ればなにか状況が変わるかな〜と思っていたのだけれど、駄目だったようだ。

 太陽は最初に起きた時と同じくらいの位置に来ており、丸一日近く眠っていたみたいだ。体を伸ばして凝りをほぐす。


「ん〜…気持ちいい」


 いや本当これからどうしよう? 寝てる間に誰かが助けてくれないかなって期待してたけどマジで誰も来ねぇ…。

 とりあえず移動したいところだけど…帰るべき家の記憶もないし、そもそもベッドから出られない。完全に詰んだ状態だ。

 誰でもいいから現状の説明をしてくれないかなぁ。


⦅あなたは32時間43分前にここ、ヌマの森で生まれました。⦆


 うわ、ビックリした⁉ 何急に…怖…ていうか誰⁉


⦅私はあなたによって作られた説明係です。これよりあなたが置かれている現状についてご説明します。⦆


 あっこれはご丁寧にどうも。

 ていうかナチュラルに脳内に話しかけてくるのね。

 生まれたばかりとか言ってたけど、どういうことなん?

 少なくとも何年か分の記憶があって、名前とかは覚えてないけど、学校にもちゃんと通ってたぞ。


⦅私はこのベッド範囲内での事しかお答えすることが出来ません。⦆


 いまいち役に立たないなこいつ…。

 なんだろ、死んで転生でもしたのかな。まぁどうでもいいや。

 それで?


⦅あなたはこのベッドの上でのみ万能の力を行使することが可能です。私が生まれたのも鏡が突然現れたのも全てあなたが望んだ結果、それが叶えられ、今に至ります。⦆


 ほあ~なんか凄い事言い始めたよこの人…。

 虹髪虹眼の巨乳で竿付きの万能とかちょっと設定盛りすぎでは?

 あっそうだ。もし本当になんでも出来るなら今すぐにこの透明の壁を壊してベッドから出してくれない?


⦅可能ですが、ベッドから出ればあなたは消滅してしまいます。あなたは生まれてすぐに、寝返りをした拍子にベッドから落ちて死なないよう、無意識のうちに結界を張っていましたが、本当に消してしまうのですか?⦆


 なにそれ聞いてない。

 死ぬの? べッドから降りただけで俺死んじゃうの…? か弱い生き物すぎない…?

 ていうか無意識に結界張るとか俺すげぇ…。グッジョブ過去の俺!

 説明係さん、とりあえず結界を消すのはなしで頼むよ。


⦅私は説明をするためだけに生まれた存在です。結界を消したり張ったりなどはできません。どうするかはあなたの好きにしてください。⦆


 そっすか…。まぁいいや、説明の続きをどうぞ。


⦅あなた同様、あなたの能力で作り出した存在もベッドの範囲から出れば消滅する事になります。⦆


 ベッドの範囲って、横はベッドと同じ長さって分かるんだけど、縦はどこまでの高さがその範囲の範疇なんだ?


⦅高さ制限は2mです。それより上の範囲に出るとこの世から消滅することになります。⦆


 低っ⁉ そんだけ⁉ 誤ってジャンプでもすれば下手したら消滅すんの俺⁉

 日常生活で死にかけるとか、ちょっとデンジャラスすぎる。もうそれは非日常生活しかできないのでは? とりあえず結界はこのままずっと張っておこう…。

 もし説明係の言ってる事が事実なら俺はもう二度と地面に足を着ける事ができないってことになるな。

 つまり一生歩かなくなるって訳で。

 健康とか大丈夫かな…。

 なんか歩かないと筋肉が衰えて健康に良くないとかどーたらこーたらテレビでやってた気がする。

 ベッドに一生監禁の上、病気で寝たきりなんて嫌だなぁ。

 なんかショッキングな新事実ばかり出てくる。もうこれ以上嫌なことは聞きたくないぞ…。


 ………


 あれ、声がしなくなった? なんで? もしかして俺がこれ以上聞きたくないって思ったからなのか?

 まだまだ聞かなきゃいけない事とかありそうだけど、今はこれ以上聞きたくないからもういいや。

 また今度聞けばいいよね!

 それにしても万能の力とかベッドから出たら消滅とか本当なんだろうか?

 さんざん嫌がっておいて今更だが、疑わしくなってきた。

 たしかに急に鏡が出てきたり、こいつ…直接脳内に…をリアルでやられたり、かなりの不思議体験をしたけど、それだけで信じるほど俺はピュアじゃないですし?

 現代の科学技術ならそれくらいできても不思議じゃないですし?

 そう心中で誰とも知れず呟きながら鏡を手に取る。

 この鏡をベッドの外に投げて、これで本当に消えたら信じてやってもいい。

 そうと決めたら即断即決だ!

 俺は力一杯鏡を握り、思いっきりベッドの外に向かって投げつけた。


「おりゃあ!」




 消えた…



 俺の意識が







 知ってる天井だ…。

 天井ってか枝の膜って感じだけど。どうやらまた眠っていたみたいだ。

 時間はどれくらい経ったろう?

 枝の隙間から差す日の様子は初めて目を覚ましたときと変わらない。

 まるで時間が最初に起きたときに巻き戻ったかと錯覚してしまうほどに何も変化を感じられなかった。

 そして、相変わらず人の通りは無い。


「…?」


 妙に頭が痛い…。何故だろうか?

 たしか鏡を外に向かって投げて…そっからどうなったんだ…?

 下を向くと、そこには割れた鏡が。うーん…???

 そうだ、確か…ベッドの外に向かって投げた鏡が、ものすごい勢いで跳ね返って俺の脳天に直撃したんだ。

 気絶する直前の光景がフラッシュバックする。

 顔面に向かって一直線に向かってくる鏡…。大した反射神経を持たない俺にとって、避ける術などあるはずもなかった。

 一瞬の出来事だったが確かに俺の心と体に傷を植え付けていった。

 うん…しばらく鏡は見なくていいかな…。

 そもそもなんで鏡が跳ね返って……ああそうか、結界張ってたんだっけ。

 俺ってばウッカリさん☆

 舌を出しながらデコをゲンコツする。

 …何をやっているんだ俺。

 誰も見ていないのになんだか急に恥ずかしくなって頬が熱くなる。

 ていうかわざわざベッドの外に投げるなんて面倒くさいことしなくても鏡よ消えろ!って願うだけで済んだんじゃ…。


 あっ鏡消えた。


「………」


 なんだか無性に納得いかない…誰が悪いかと言われたら俺が悪いんだけど、なんだろうこの気持ち…。

 まぁ能力が本当だって分かったから結果オーライだよね!

 過ぎたことは気にしてもしょうがない。

 それよりもだ。万能ってことはなんでも作れるってことだよね?

 じゃあ自分好みの女の子を創造することだって可能という事になる…よな。

 …やっべ興奮してきた!

 待て待て落ち着けどんな子が良いかな…?

 やっぱりおっとりしたお姉さん系かなぁ…いや、ツンデレやクールな姉なども捨てがたい…。あっ経験豊富そうなギャルのお姉さんも良いな! うーん…悩む、実に悩ましい案件だこれは。人生始まって以来、最大の問題だな。まだ生まれて3日くらいしか経ってないらしいけど。

 妹系や幼馴染系の女の子も好きだけど、やっぱり初めては年上のお姉さんに優しく手ほどきしてもらいたいよなぁ…。

 いや、記憶が朧げだから、自分が童貞かそうじゃないかしっかりと覚えてないけどね?

 そもそも前世が女かもしれないし。今となってはどうでもいいことだけど。

 よし! 見た目としてはお姉さん系に決定だな!

 性格はまぁ、甘やかしてくれるような優しい感じかなぁ。

 その他にも髪色、髪型、スタイル、決めなきゃいけない事は山積みだ。

 それら一つ一つを選ぶのに多くの苦渋の選択を迫られる事になるだろう。

 だが今の俺にとってそんなもの苦にもならない。

 その先にある理想の女性を創るまで、頑張ろう!

 目指せ理想の彼女とのラブラブ生活!


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