セルヴ達とミーナの出会いー3
モフモフ
《..............。》
モフモフモフ
《.....まだですかね。》
ミーナはひたすらアルトを撫で回すが、飽きる気配はまるでない。
「ぶっ.....ミーナちゃん、アルトばっかりじゃなくて俺とも遊ばない?」
笑いながらもセルヴは助け船を出した。
「おにいちゃん、あそんでくれるの!?」
アルトから手を離したミーナは目をキラキラさせてセルヴに駆け寄った。
「うん、とゆうか俺はお兄ちゃんって歳でもないんだけどな。」
セルヴはエルフ族な為外見よりも遥かに年を重ねている。今さらお兄ちゃんと呼ばれるのは無図痒い。
「おにいちゃんなんさい、なの?」
「んーー確か500歳くらいかな?」
エルフは長命族な為、細かくは数えない者が多い。
「500さい?!おにいちゃんじゃなくておじいちゃん?」
《ふふっっ、おじいちゃん、くくっ。》
アルトはセルヴから顔を背けて笑っている。
エルフの寿命は1000歳を越える者が多い為、500歳のセルヴはまだまだ若い部類に入る。
《おいこらアルト、笑うな。っていうかお前何時もの無表情はどこ行った?!》
アルトは普段あまり表情を変えない。アルトが笑った顔なんてマスターであるセルヴ位しか見たことないのだ。しかも笑う時は大体、悪い事を考えてる時の黒い笑顔だ。
「おなまえセルヴさんだから.....セルヴおじいちゃん、だね!!」
そんなやり取りを知らないミーナは満面の笑顔でいい放つ。
《............................。》
アルトは声も出ないほど体を震わせて笑っているが、セルヴは無視して考える。
(おじいちゃんか、エルフで500歳はまだまだ若い方なんだがな.....まぁいいか面白い。)
「よし!ミーナちゃんわしの事はセルヴおじいちゃんと呼ぶんじゃぞ。」
「あっおじいちゃんになった!セルヴおじいちゃん、みーなのことはみぃってよんで!みんなそうよぶの!」
セルヴがおじいちゃんのようなしゃべり方をし始め、ミーナは本当にセルヴをおじいちゃんと思い込む。
《マスター、何を遊んでるんですか?》
やっと笑うのを止めたアルトは変な話し方をし始めたセルヴを怪訝そうに見た。
《うるさい、笑ってた癖に。いいんだ、この子にとっては500歳なんておじいちゃんだろうし孫を持った気分で面白い。暫くこれでいく。》
《まぁ、私は面白いですし何でもいいです。》
《お前、キャラ変わってるぞ。》
《元々こんな性格ですよ。彼方にはつまらない者達しか居なかっただけです。元王国魔術団団長をおじいちゃん呼ばわり出来るなんて、この子大物になりますよ。》
感心したようにミーナを見るアルトにセルヴは溜め息を吐いた。
「んじゃミィ、改めてセルヴ・アルベルトじゃ。よろしくのぅ。」
「うん!セルヴおじいちゃん。みーなはうさぎのじゅうじんで、ななさいで、おんなのこです!よろしくおねがいします!あるともよろしくね!」
笑顔で自己紹介をしたミーナにセルヴは手をミーナの頭に乗せ撫でる。アルトは返事の代わりにミーナの顔を舐めた。
改めての自己紹介も終わり、セルヴはミーナに疑問をぶつけた。
「してミィは何処から来たんじゃ?森に住んでるのかの?」
それにミーナは首を傾げ、
「みーなはもりのいりぐちちかくのいえで、ぱぱとままとくらしてるの!なむるむらだよ!」
ナムル村はリーフベルトに一番近い村だ。森の入り口に家があるということは少し外れにはあるが村民には違いない.....しかし.....。
「森の入り口からは大分離れているが、どうやって此処まで来たんじゃ?精霊達に迎えに来て貰ったのかの?」
今いる場所は入り口から2時間程度離れた場所。少女が一人で来れる所ではない。この辺には中級魔獣が出るのだ。
「みーな、ひとりできたんだよ?もりのいりぐちは、あぶないから、せいれいたちはきちゃだめなんだよ!」
確かに森の周辺には魔獣を狩りに来た冒険者がちらほら居た。リーフベルトは危険度が高い森の為、殆どの冒険者は奥へは来ない。ミーナが危ないと言うのはその者達に精霊が捕まる危険性を言っているのだろう。
「一人で来たらミィだって危ないじゃろうが。此処には魔獣が沢山いるんじゃぞ?出くわしたらどうするつもりだったんじゃ。」
子供なんて魔獣の格好の的、セルヴは顔をしかめミーナを諭すが、ミーナは少し拗ねたように言い返した。
「みーな、このへんのまじゅうはひとりでかれるもん!」
予想外の返しにセルヴとアルトは開いた口が塞がらない。
《狩れる?こんな小さな子に?》
《マスター、口調が戻ってますよ。.....しかし嘘をついてるようには見えませんね。》
《くっまだ慣れんだけじゃ。Aランクの魔獣って魔法無しで狩れるもんなのかのぅ?》
《弱点を突けば可能かと。》
《そう言うが、よっぽど武器と体術に秀でてないと出来る芸当でわないぞ。わしだって魔法なしでは少し苦労するぞい。》
《私に言われても。ミィは出来ると言っています、この子、嘘は付きませんよ。》
《言われなくても今までのやり取りで分かっとるわい。信じられんだけじゃ。》
二人が念話で言い合っている最中にもミーナは不服そうにセルヴを見ている。
「ほんとうだもん。ねー?みみちゃん!」
ずっと三人の周りを飛んでいた精霊達だが、ミーナは先ほども声を掛けた水色の精霊に話し掛けた。
《ミーナハ、ウソヲツイテハ、イマセンヨ。コノコハツヨイ。テンサイトハ、コノコノヨウナ、コのコトヲ、イウノデスネ。》
話し掛けられた妖精はミーナの肩に乗り、セルヴとアルトに念話を送る。
《《..........天才.....。》》
妖精は強い。1属性特化だが使う魔法は強力でセルヴ達でさえも油断は出来ない。その妖精に天才と言わせるミーナはどれ程の強さなのか。
《ミーナハ、タタカイニナルト、アタマガキリカワルノカ、フダントハクラベモノニナリマセン。ニネンマエニハ、アブナイナガラモDランクノマジュウカラ、ウマレタバカリノナカマヲ、タスケテクレマシタ。》
《2年前って、ミーナはまだ5歳じゃろぅ!5歳でDランク魔獣を魔法無しで倒したじゃと?!》
《それは天才という言葉が適切ですね。ミーナが精霊達に慕われているのはそういう理由でしたか。》
《.....アルトお前落ち着いておるな。》
《驚いてはいますが、ミィには驚いてばかりなのでもう.....何でしょうか?諦めました。》
《確かに。》
二人で溜め息を付いていると突然ミーナが後ろを振り向いた。
「まじゅう.....にひき.....くる。」
ミーナは耳をピクピクさせて一点を見つめた。
《本当にこの子は.....よく気付きましたね。》
アルトが感心したようにミーナを見る。
《わし.....わしが出遅れた.....じゃと?》
ガックリと項垂れたセルヴも魔獣に気付いたようだ。アルトは気付いていたが様子を見ていたのか、呆れたようにセルヴを見た。
《マスター、少女に負けましたね。魔法も使えない少女に負けましたね。》
《2回言うな!!》
セルヴは気を抜いていたのが恥ずかしいのか、顔を真っ赤にさせてアルトに怒鳴った。
するとミーナは、
「みーながまじゅうをたおせるとこ、みせたげる!!」
自慢気に言うと、早速ミーナは履いていたスカートのベルト部分に付けていた短剣を構えた。
《興味がありますねマスター、手を出さないで下さいね。》
《..........危なかったら手を出す。》
現れたのは..............