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うさぎは王都で伝説になる  作者: ばぁむくーへん
2/7

セルヴ・アルベルトとアルト



「アールト!アール、アール、アルト!」


「ミィ、変な歌唄ってないでこの皿運んでください!」


「はーい!」


台所に立っているアルトに引っ付いていたミィは言われた通り渡された皿を運ぶ。


ミーナとアルトにはかなりの身長差があるため、ミーナが引っ付いているのはアルトの腰辺りだ。


「セルヴおじいちゃん、今日のメインディッシュはお肉たっぷりピザですよー。」


「うまそうじゃ......はて?鶏肉なんぞあったかの?」


皿一杯に乗ったピザにはこれでもかと鶏肉がトッピングされている。


「来る途中襲ってきたから捕ってきた!」


「でかした!で?何の鳥じゃ?」


「ココットだったかなぁ?」


「ぶぉっほぉぅ!!!」


ココットという名前を聞いたセルヴは飲んでいたお茶を盛大に吹き出した。


「セルヴおじいちゃん、きたなーい!」


「ミィや、おじいちゃんの気のせいじゃなければココットはSランク魔獣だったはずじゃが......。」


「そうなの?私結構捕って食べた事あるよ?」


「そ......そうか.......。」


魔獣にはランクがEからSSSまであり、ランクが一つ違うだけでも難易度がまるで違う。


またこの世界には冒険者ギルドというのがあり、登録すると実力に応じたランクを貰える。


Sランク魔獣はSランクを持つ冒険者でも苦労する獰猛な魔獣だ。


冒険者ランクもEからSSSまである。

Sランクはこの世界に200人も居ない。居ても何十年と修行を積んだ者ばかりだ。Sランクの魔獣はSランク以上の者しか狩れない。ランクを持たない14歳の少女が狩れる魔獣ではないはず......。


「マスターの弟子なんですからSランクくらい狩れるでしょう?ご自分で鍛えて置いて驚かないでください。あと汚いので自分で拭いてくださいね。」


アルトはため息を吐きながらセルヴに布巾を渡す、いや投げ渡した。


「ぶっ!アルト!わしの扱いがますます酷くなっておらんか?!」


華麗に顔面布巾キャッチしたセルヴは文句を言いながらも吹き出したお茶を拭き取った。


「はい、はい。さぁ冷めないうちに食べましょう。............大地の恵みに感謝を。」



「「大地の恵みに感謝を!」」






「さすがアルト!どれも美味しいよー!」


「ありがとうございますミィ。ほらお肉ばかりじゃなくて野菜もたべなさい。」


「はぁい、ママ!」


「私は雄です!」


「んじゃパパ!」


「......いいでしょう......。」


「いやアルトや、それもどうなんじゃ......。」


ミーナとアルトのやり取りを聞いていたセルヴが呆れながら突っ込む。アルトはミーナを娘のように可愛がっている、いや溺愛だ。


「パパ甘い物も食べたいです!」


「サラダを食べたら美味しいケーキを持ってきてあげますよ。」


「ん!サラダ食べる!」


「餌付けじゃな......。」






食事が終わり、アルトが入れたお茶を飲みながら3人でテーブルを囲む。


「してミィや、今日来たのは食糧じゃろ?」


「うん、セルヴおじいちゃん。野菜のストックが無くなりそうなの!このままだとお肉オンリーなの!」


「じゃから毎年考えて食べなさいと言っとるじゃろぅが。」


「だってー、野菜食べないとアルトがお菓子作ってくれないから頑張って食べないとって!お肉は調達出来るけど野菜は春にならないと無理なんだもん。」


ミーナは頬を膨らませながらセルヴを見る。



「お菓子の為に野菜を食べるんじゃな......(あんなに頬を膨らませて可愛ゆいのぅ)。」



セルヴもアルトの事を言えないくらいにはミーナ馬鹿だ。エルフは基本同族しか心を開かない。フェンリルであるアルトも本来はプライドが高く、マスター以外を慕う事はあり得ないのだが、ミーナの素直さに心を動かされ、今では二人ともミーナを信頼し、深い愛情を持っていた。



「ミィ、野菜はこのぐらいで足りますか?」



話の途中で席を立ったアルトが持ってきたのは、籠一杯に入った色とりどりの野菜。


「野菜だー!アルトありがとう!」


満面の笑みで籠を受け取ったミーナは一旦籠を置いてアルトに抱きついた。


「ふふ、くすぐったいですよミィ。(ミィは本当に可愛いですねぇ。あぁ可愛い......。)」


「ずるいぞアルト!ミィや、わしにもぎゅーじゃ!」


「ぎゅーーーー!」


アルトから離れ、椅子に座っているセルヴの膝の上に行くと、同じように抱きついた。暫くセルヴにくっついていたミーナは満腹で眠くなったのか、セルヴの膝の上で丸くなった。







「んー............。」



「なんじゃミィ、眠いのかの......こらミィ、また熱が出ておるぞ。またちゃんと寝なかったんじゃな。」



「マスター薬持って来るのでそのまま捕まえておいてください。」


「薬やだー。」


薬が苦手なミーナはセルヴの膝の上でジタバタするが、セルヴがしっかり抱き抱えている為動く事は出来ない。


「駄目です。熱が出たら直ぐ此処に来る約束だったでしょう?薬飲まないと治りませんよ、ちゃんと飲めたらホットミルク作ってあげます。」



「......ホットミルク飲む......。」


5年前の事件で両親を亡くしてからのミーナは一人で眠るのが苦手になってしまっていた。寝入る事は出来るが1~3時間程度で目が覚めてしまう。その為、万年寝不足のミーナは体調を崩しやすい。それを知っているセルヴとアルトは、来る度に抱きついてくるミーナを抱き締める振り?をして体調を調べていたのだ。


「むー」


ある意味捕獲されたミーナは、差し出された薬をセルヴの膝の上で飲み干した。



「はい、はい。よく飲めましたね。ミィ今日は泊まっていきなさい。」



「アルト抱っこ......もふもふ......。」


「はいはい。」


セルヴの膝の上で薬とホットミルクを飲み終えたミーナはアルトに手を伸ばした。14歳の少女だというのにミーナは未だ子供っぽさが抜けない。戦い以外の事になると頭が回らなくなるようだ。


「マスター、ミーナを寝かしつけてきます。」


「あぁ、そのまま添い寝してやるのが良いじゃろぅ。」



ミーナを子供抱きにしたアルトは隣にある寝室に入ると、ミーナをベットに寝かせてから一歩下がる。


「アルト、アルト。」


「獣型に戻るので少し待ってください。」


そういうとアルトは目を閉じる。一瞬白く強い光が部屋を包む。光が治まった其処には、全長5mにもなるフェンリルが佇んでいた。


フェンリルはSSSランクの上位精霊獣だ。普通の者なら畏怖すべき上位精霊獣にミーナは躊躇いもなく手を伸ばす。


アルトは伸ばされた手をひと舐めしてからベットへ上がり、ミーナを包むように横になり、尾をミーナのお腹に乗せた。


「アルト...ありがとう。」


《熱が出るまで我慢しないでもっと此処に来なさい。心配するでしょう?》



獣型になったアルトは念話を使う。念話は信頼しあった者同士にしか使えない。そうでない者同士でも使えるには使えるが酷く魔力を消費してしまう。


「ごめんなさい。お仕事の邪魔しちゃいけないと思って...。」



《ミーナは変な所で気を使いすぎです。もっと甘えてくれて良いんですよ。......ほら、寝なさい。》



「..........うん。お休みなさい、アルト。」



《お休み.......ミィ。》



寝入ったミーナをいとおしそうに眺めながらアルトは願う。




《我らが愛しの子に安らかな眠りを...。》








セルヴはアルトがミーナを寝室に連れて行くのを見送り、溜め息をついた。



「ミィはまだ一人で眠れんのか.......。あれから5年......あの子の傷は深すぎる......。エリオット.......サナ嬢.......あんな可愛い子供を置いて逝きおって......。」




セルヴはかつての仲間を思い浮かべながらまた、深い溜め息を吐くのだった。


















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