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銀河防衛軍の戦い1

遅くなりすみません。しばらく休暇を取って帰国していたせいか、さぼり癖がついてしまいました。

あと5話程度で完結する予定ですが、ペースは週1話くらいになると思います。

題名と粗筋が内容とマッチしていませんので変えました。


 直ちに突入にかかったスムズラス級艦2艦、及びその位置に留まったガイア型6艦は、長さ100kmに伸びたイーターの体の超空間をくぐろうとしている両端に集中してゼータ照射砲を撃つ。

 イーターは、ゼータ照射された部分の体が分解するので、嫌がって必然的に中央部に拠ろうとする。しかしそこを目指して、スムズラス級艦2艦がイーター吸引機を全力で稼働しながら突っ込んで来るので、イーターの体が吸引機に吸い込まれて、内部のゼータ照射炉によって分解される。

 

 すなわち、イーターの体はどんどん小さくなっていくのだが、何分、スムズラス級2艦に積んでいる吸引機2基で合計0.4トン/秒であり、90万トン近い体を吸引するためには25日程度を要する。

 後はゼータ照射砲による分解であるが、これに対しては体を変形させて避けているので、あまり効果があるように見えない。しかし、体全体を吸引しなくてもどこかの時点でその機能を失う点があると予想されている。

 イーターは、必死に自分の体を食っているスムズラス級艦を何とかしようとしているのだろうが、彼らが今いる空間には扱える物体がないので物理的な攻撃ができないし、ゼータ線バリヤーに包まれたスムズラス級艦に触れられないので、直接力を及ぼすこともできない。

 

 しかし、イーターには超空間の穴を明ける力があるので、あちこちに超空間の穴が観測されるが、その一つから大きな岩塊が現われ、スムズラス級艦の1艦に投げつけられる。しかし、その岩塊重量はスムズラス級艦の半分程度、すなわち5千万トン程度であるが、さすがに速度は秒速10km/程度であったため、艦の斥力装置により食い止められている。


 艦長が冷や汗をかいたような様子で言う。「司令官閣下、あれは危なかったですね。この艦でもぎりぎりでしたよ。たぶん、超空間に穴を開けてあちこちを探してあの岩塊が見つかったので投げつけてきたのですね」しかし、艦隊隊司令官シムロム・ジガル中将は冷静に返す。


 「いや、結局あれがイーターの限界だろう。もっと大きな物体を投げつければ、速度が落ちるはずだ。運動量の問題だな。あの岩塊で、こちらの余裕は10%程度だから危ないことは危ないな。しかし、あれがイーターに出来る最大の抵抗だろう。吸引は全力で続けてくれ」


 結局、それが事実であり、それ以上の抵抗は出来ず、イーターはどんどん体が小さくなっていき、15日を過ぎて体の質量が35万トンを下回ったとき、ついに全体を繋ぎとめる力を失ったのか分解を始めた。

 ガイア335号艦の観測員が報告する。「艦長!イーターが分裂します。各々が100トン程度のブロックに分かれていますが、各々の運動能力はごく弱いようです」たしかにイーターのシルエットはばらばらに別れ始め、それぞれに波打っているが動きはいったいの時に比べるとごく鈍い。


「旗艦、ジガル中将殿、ガイア335号艦より意見具申、分裂したイーターの一つを包むような形でゼータ照射砲の照射をしたいので、許可願います」皆川艦長が旗艦に呼びかける。

 

 一拍後、旗艦より回答があった。「こちら、司令官、ガイア335号艦へ許可する。撃て!」


 皆川艦長は砲術長に命ずる。「砲術、正面のイーターの分裂した一つを包むように集束を調整してゼータ照射砲を撃て!」

「最初に最大集束で撃ち、集束を甘くしていきます」砲術長が応答し撃ち始める。


 不定形だが長径10km、短径5km程度のイーターに最初は0.5km程度の径の集束で赤黒いゼータ線を撃ちかけるが、その径がどんどん大きくなり、イーター全体を包み込む。

「イーターの輪郭がぼやけていき、ゼータ線で吹き飛ばされていきます」

 ガイア335号艦の観測員が再度報告する。


 ジガル中将は、それを当然見守っておりその結果を見届けすぐに命令する。

「各艦!今の状態を見ていたと思う。全ゼータ照射砲を今のガイア335号艦の射撃と同様に撃つ。ただし、重複を避けるため旗艦のスムズラス256号の頭脳による統制射撃を行う。射撃管制装置のコントロールをスムズラス256号の頭脳に委ねよ!」旗艦からの命令に艦隊の全艦が従う。「了解!」


 今度は旗艦の砲術長が報告する。「今から、全艦のゼータ照射砲の統制射撃を開始する」

 約3000に分裂したイーターを8艦の44基のゼータ照射砲が撃ち、ゼータ線で包み破壊していく。その作業はわずか2時間余で終了し、全体の質量そのものは変わらないものの、生物らしい境界はなく自発的な動きも全くなくなった。やがて旗艦の頭脳が判定する。

「イーターは生物としての機能を失ったと判断します」


 ガイア335号艦内に歓声が響くが、ジガル中将から訓話がある。

「皆、ご苦労であった。これで、イーターを退治した最初の事例を作ることができた。また、それのみならず、もしこの事態をほおっておけば、この周辺の惑星の生命が急速に滅ぼされ、その引き換えにイーターが大量に増えるところであったが、その事態を防ぐことができた。

 今回の戦いの結果、イーターは大体その体の総重量が40万トンを下回ると、全体をまとめる力がなくなって100トン程度の小さな体に分裂することが分かった。その結果生まれた小イーターの運動能力は小さく、ゼータ照射砲を避けることもできないため、ゼータ照射でいわば殺すことも可能だ。

 また、イーターについては最初に生まれたのがこの小イーターで、これが集まってあの強力なイーターになるのだと今では判断できる。それが彼らの進化なのだな。

 従って、イーターを殺すには小イーターもすべて殺す必要があることになる。しかし今回の戦いと以前の調査の結果から、イーターの武器は超空間に潜って移動すること、及び自分の体に包まれた範囲であれば強力な力をふるって、岩のような物体を動かせて相手の破壊を試みることのようだ。

 従って、惑星を取り込んでいるイーターへの攻撃は、こうした物体による反撃に十分注意する必要がある。しかし、いずれにせよイーターは退治することができることが今回わかったが、これだけの戦力を集めて20日余りもかかってようやく可能であることもわかった。

 今回の遠征と戦いによって、イーターを退治する方法として計画していた準備は有効なことが判ったので、デカタル星に帰って最終的な計画を策定してできるだけ早く実行に移そう。ではデカタル星に帰ろう」

 司令官の言葉に艦体の一同は歓声をあげて拍手し、帰還の操作にかかった。


 誠司と恵一は遠征艦隊の送ってきたデータを検討していた。

 無論それぞれのメイドロボットであるメリーとセザンヌも隣に控えており、2人は議論しながらそれぞれのメイドロボットが入れたコーヒーを優雅に飲んでいる。


「大体、イーターについては予想通りだったな。それにしても進めている準備が有効なものということが判って良かったよ」誠司の言葉に恵一が懸念を表明する。


「でも、義兄さん、イーター吸引機を働かせるためには吸引機を設置したスムズラス級艦をイーターの中に入り込ませなくてはならないのですが、ちょっと危険なのではないでしょうか。今回の遠征では幸い、イーターは惑星を取り込んでいなかったから、危ないところでしたが斥力装置が耐えきれましたが、惑星を取り込んだイーターの場合は使える物質はいくらでもあるので、超巨大戦闘艦と言えども突入するのは危ないのではないでしょうか」


「うーん、確かにそうなんだが、吸引機のみを送り込むわけにはいかないものな。すぐに物理攻撃でつぶされるだろう。吸入点のみをイーターに設置することが出来ればいいのだが、そんな都合の良い超空間の使い方は出来ないだろうな」誠司が考えながら言うと、恵一が指摘する。


「イーターの超空間の使い方がまさにそのやり方ではないでしょうか。イーターは普通の超空間ジャンプのように遠距離のジャンプはせずに、自分の体を伸ばして超空間を通って通常空間の遠距離を移動しているのです。しかもその時相当に長い間、超空間の穴を保持できています。

 だから、その仕組みを解明できれば、艦内においた吸引機とゼータ線炉に超空間を通してイーターの体内に設置した吸入部を繋ぐことができるのではないでしょうか」


「うん、なるほどそうだね。まずイーターのやったことを検証からやってみよう。

 メリー、遠征艦隊にイーターが先端を超空間に潜らせようとしたとき及び、あちこちで超空間に潜ろうとしたときのあらゆる観測データを送るように依頼してくれ。

 また、遠征艦隊に加わっているガイア335号艦に前回の調査時にイーターが超空間の穴を作ったときの同様なデータを送るようにも依頼してほしい」誠司はメリーに命じる。


「はい、かしこまりました。誠司さん」メリーは直ちに答え、研究頭脳と交信して誠司の要求を実行する。本当にメリーとセザンヌは、その柔らかそうな白い皮膚と、生き生きした顔を見る限りロボットとは思えない。やはりシーラムム帝国の技術はレベルが違うが、どうもメリーとセザンヌをアレンジした研究者のミックレ・セザムラの意図的なものも感じられる。


『これで、ミニスカートでも履かれたら、気が散るだろうな』誠司は思う。

 一方で、恵一は妻の居る誠司に比べ免疫がないため、いつも隣にいるセザンヌの動作やしぐさにドキッとすることもしばしばであり、ゆかりから気遣われていた。


「誠司さん、あのメイドロボットはちょっとどうかと思うわよ。恵一さんはまだほとんど女の子とは付き合いが無いところに、あんなに美人で人間より生き生きしたメイドロボットがいたら、実際の女の子に興味をなくすのじゃないかしら」そう言うゆかりに誠司は言う。


「うーん、確かにあれはちょっと気が散るよね。でも、一旦使い始めるというか一緒に仕事をすると絶対に必要なんだよ。なにより、研究頭脳と繋がっているのが大きいものね。まあ、恵一の年頃だと一番性欲が強い時期だから、ちゃんと女の子とも付き合うようになるさ」しかしその言葉にゆかりが眉をしかめる。


「なによ、性欲って。誠司さんも私と出会った時、ああいう風になったのは性欲だけだったの?」誠司は少し慌てる。

「い、いや。でも考えても見てよ。ゆかりに出会った時、俺なんか年齢イコール彼女いない歴だったんだよ。そこにゆかりみたいな魅力的女性が現れたらふらふらッてなるよ。まあそこには性欲も無論混じっていたことは否定しないけどね」その言葉にゆかりは含み笑う。


「ふふふ、うん、確かに若い男の子の性欲はカップルが出来るための必須条件だわね。まあ、メイドロボットは性的な機能は無いようだから、恵一さんは大丈夫でしょう」などという誠司・ゆかりの夫婦の会話があったのだ。


 誠司と恵一及びその研究チームの前に、イーターが超空間を操る事象を捕らえたデータが揃い皆で検討して研究に着手する。

「まず、このデータからイーターの超空間転移の理論確立をやっておこう。これは、超空間探知装置を開発した時に下敷きにした理論がそのまま使えるよね。

 それから、同じ理論の応用で通常空間のある一点から別の一点を超空間でつなぐ手法の開発だ。さて、そのためには…………」

 との誠司のリードの元で、まず彼の言葉の通り、マドンナを駆使してイーターの超空間転移の理論がすぐに確立され、通常空間の2点を超空間でつなぐ手法の理論確立、さらにその超空間接続装置の計画・設計が行われた。

 超空間接続装置はイーター退治を行った遠征艦隊が帰り、その成果について検討されている間にもそのプロトタイプが完成し、最終試験の結果も問題なく量産が開始された。


 さて、最終的な銀河防衛機構の作戦会議が行われた。研究はほぼ完了したので、今後は防衛軍の出番であるため、シーラムム帝国防衛機構司令官から横滑りした、銀河防衛軍のピラクスラ・マサーラ・シーラムム司令官が仕切っている。

「さて、研究部門の努力の結果、イーターの退治法が確立されたので我が防衛軍の作戦も策定し、さらにその作戦は防衛軍頭脳の検証の結果有効なことが確かめられた。

 なによりの朗報は、先日の遠征艦隊による転移点のイーター退治の結果、現在進めている防衛軍の装備の建設が基本的に有効であることが確かめられたことだ。

 現状までの調査の結果、イーターの発生区域、区域Aとすると、この区域におけるイーターによる汚染された惑星数が13,225であり、これ以上の拡大は空間的な距離が大きいためないと考えられている。さらに転移した区域をそれぞれ古い順にB,C,Dとすると、Bについては汚染された惑星は10日前の時点で5,115、Cが同じ時点で3,564、Dが3,242であり、それぞれ年間数百のペースで拡大中である。これらについての具体的な作戦をこれから述べる」


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