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地球防衛・宇宙進出方針会議

計算間違いを訂正しました。

1.5京ドルで520億の人口だと大体30万ドル/人になります。

従ってその評価の言葉も変わってきます。

『せいうん』帰還半月後、地球防衛軍が主催して、G7+1の諸国の政策決定者を招いた防衛戦の反省会と、今後ラザニアム帝国を含めた宇宙の諸世界とどう向き合うのかという会議が銀河宇宙港で開かれた。

 この会議が開かれる3日前には、『せいうん』が入手してきたラザニアム帝国の概要についての資料が各国政府には配布されている。逆に言えば、この資料は防衛軍の最高幹部、G7+1政府関係者以外には今のところ知られていないのだ。ラザニアム帝国の撃破した艦から読み取った帝国についてのデータは以下の通りである。

 -ラザニアム人のみが住む酸素・水がある惑星:85、内55惑星は他の種族を滅ぼして奪ったもの

 -ラザニアム人のみが住む人工環境が必要な資源採取のための惑星:12

 -ラザニアム人の人口、GDP:520億人でGDPは推定1.5京ドル

 -ラザニアム帝国の設立は2500年前であるが、ラザニアム人が宇宙に進出したのは2万年前

 -版図;長径550光年短径280光年のラグビーボール状

 -最大人口惑星:帝都惑星 25億

 -宇宙艦隊:3大艦隊で1大艦隊は地球に攻めてきて全滅し、残り2大艦隊が残っている

 -支配下の惑星:35で平均人口は15億人

 -支配体制:支配惑星の軌道上に駐留基地兼物資ターミナルがあり、支配種族の救出ノルマの物資が積みだされる。さらに、地上にも大体5か所くらいの駐留地があって、反抗の有無をチェックしている。被支配種族はエネルギーをラザニアム人が提供する核融合炉の電力に頼っており、ノルマに達しないとエネルギーが制限されると共に都市が攻撃されて死者負傷者がでる。

 -平和協定相手:3恒星系を支配するアサカラ王国とは平和協定を結んで相互不可侵を約束している


 このデータに関する誠司とゆかりの会話である。「居住惑星の数の割に人口は少ないんだよね。また、GDPは地球の大体80兆ドルにたいして約200倍の15京ドルで一人当たり30万ドルクラスだから桁が違うよね。自分たちの人口以上の奴隷をもっているためもあるだろうね」


「でも地球の200倍のGDPと言えばとんでもない大きさだわ。普通で言えば、敵うわけはないわ。それにしても55の世界の住民を滅ぼしてその惑星を奪ったというのは質が悪すぎるわ」


「うーん、質がわるいねえ。いっそそうやって滅ぼされた種族からすると、滅ぼしてもいいくらいだよね。しかし、国力と版図の規模の割に艦隊の規模が小さすぎるよね。主要艦艇は残りが地球に攻めてきた2倍だろう。

その気になれば『せいうん』で滅ぼしてしまえる程度だ。まあ、要は深刻になる敵がいなかったということだと思う。もし、太陽系での結果が知られて、彼らが本気になって造船を始めたら、1年くらいで数万の艦艇を作るのは出来ると思うよ。実際もう知られていると思うし」


「じゃあ、滅ぼされる前に滅ぼせ、か。時間は我に不利な要素ね。植民してしまっている惑星の取り扱いは後で決めるとして、残り2艦隊は可及的速やかに滅ぼすというのが正しい戦略のような気がするわね」


「うん、超空間攻撃システムもいつまでも万能ではないと思うからね。それしかないだろうけど、あまり気持ちのいいものではないんだよね。そしてその後は建艦を禁止してその能力を取り去る必要があるな。

それもいつまでも通用しないから、現在支配を受けている種族も人口は合計では帝国に匹敵するので、彼らを援助して経済成長を促すだね。しかしその前にというか並行して地球人類80億のDGPを一人3万ドル程度に持っていけば、現在の80兆ドルが240兆で3倍になるね」

かれらの会話が結局地球としての方針になるのだが、それはまた後の話である。


 ちなみに、誠司とゆかりの家は、銀河宇宙港の構内の高度セキュリティゾーン内に作られて完成した。かれら夫婦と息子の星太(に加えマドンナ)は、おそらく当分の間は政府からすれば、首相より厳重なセキュリティに囲まれて生活することにならざるを得ない。

 その意味で、ある程度星太が出歩くスペースが欲しいということでの立地である。宇宙港内の端を誠司が買って自費で建てている。誠司はいまや年収5億円に達している富豪であるから、この程度は何ということはないのだが、税等を控除された実際の収入はこの4割程度である。


「地球防衛・宇宙進出方針会議」と銘打った宇宙軍と日本政府が主催した会議が開かれた。

 初日は秘密会としてG7各国及びロシア首脳の軍のトップのみが出席して軍事関係の会議が開かれ、2日目以降からは上記首脳に加えオブザーバーとしてそれ以外の国の政府関係者合計520名が、銀河宇宙港の大会議場に集まった。報道陣まで加えると1000人に近い人が集まったことになる。

 構内には民間ホテルもすでに3つできており、このことを見越した宇宙技術学校関連の寄宿舎もある程度完成しているので、収容人数は十分である。世界のあらゆる国は、(日本への留学生が代表である場合もあるが)最大3人の枠に少なくとも1人はオブザーバーを送ってきている。


 この会議を開くとの発表に対して、国連は事務総長名で非難声明を出している。

「実態が明らかでない地球防衛軍と日本が、国連へ事前通告のみでこうした世界全体の今後を決めるような会議を開くことは許しがたい。本来そうした会議は、国連の旗の元に開くべきだ」

 要旨はこのようなものだったが、地球防衛軍司令官名で次のような趣旨の反論をされて、世界の笑いものになっている。


「今回の地球防衛戦において、国連はオブザーバーや国連軍を送るなど、かかわろうとすれば係れたが、彼らは一貫して指揮権を要求するのみで何もしなかった。

 そして、万が一彼らに指揮権を渡したら、地球防衛に失敗したことは明らかである。現時点で国連は間違いなく宇宙に対して当事者能力がなく、その人材もいない。現状は、そのような国連が当事者能力を付けるための時間的余裕はない。オブザーバーは受け入れるが、議論、議決に係る権利はない」


 中国、韓国を中心に、国連と同様に非難声明を出した国がいたが、無視されそれでも結局オブザーバーを送ってきている。なお、オブザーバーが発言することは許されるが、あくまで参考意見であって、会議としての正式なコメントが残せないし、議決には加われない。


 1日目の会議は各国に配布されたラザニアム帝国のデータを元に行われることが周知されており、防衛軍司令官のシップ上級大将(防衛軍の階級になった)がまず登場する。

「皆さんが、ラザニアム帝国の国力を知って彼我の差に意気消沈するのはよくわかります。

 戦いは確かに国力の差で決まる場合が殆どです。しかしながら、奇襲で10倍程度の敵兵力を蹴散らす程度の話は歴史上いくらもありますし、画期的な新兵器により数の優位を覆すこともまた多くあります。

 この度の我が防衛戦においても、敵は620の大型艦により攻め寄せてきましたが、それにかろうじて匹敵する艦は我が方はわずか4艦、有人艦は恒星間ジャンプすら出来ないものが無人攻撃機の母艦を入れても80艦、無人攻撃機は数こそ2500機を数えましたが、内容で大幅に劣る上に戦いに投入した総トン数で比較すると敵が6200万トンに対して100万トン以下です。人員でいっても、敵は約16万人に対して、味方は宇宙に出ていた要員は4千人弱です。この差があって、なぜ勝てたか?これこそが、画期的な新兵器のアドバンテージによるものです。


 無人攻撃機2500機とその母艦25艦は良く戦いました。敵の電磁波攻撃の前に電子脳の機能をダウンさせられたものが多かったものの各10万トンの敵艦、102艦を葬ったのですから。しかし、残念ながら、まだ敵には500以上の艦が残っていました。攻撃手段がこの無人攻撃機と、残った有人艦のみであったとするとあと50程度の敵艦は葬れたでしょうが、結局今頃は私どものあの世に行っています。

 それを救ったのは、超空間攻撃システムです。このシステムの詳しいことは発表していませんし、ここでも述べません。地球にラザニアム帝国の諜報システムがないという保証がないからです。

 しかし、このシステムのおかげで地球は助かったのですが、このシステムはかの侵攻があった僅か3ヵ月前に発想されて開発が始まり、最短の侵攻日とされたX-dayの2日前に完成されたのです。クリスチャンの私はこのことに神の御業を考えざるを得ません。

 しかしながら、私たちはこのシステムが何時までも無敵あるとは考えてはいけないと思っております。基本的な戦略については西野大将(防衛軍の階級)より発表します」

 シップ上級大将が降段し、西野大将が登場した。


「先に説明のあったとおり、ラザニアム帝国の国力は我が地球を100倍以上上回ることは明らかです。また、現在の敵の艦艇数は今回侵攻した大型艦のみを考えても1大艦隊を殲滅しましたが、まだ2大艦隊が残っています。

 わが方は、撃破した敵艦をサルベージして自分の艦隊に配備しようといていますが、現在地球に軌道に集めている艦の修復が終わるであろう半年後の状況として300艦の恒星間ジャンプ船を配備できるのみです。一方敵は現時点で残り大艦隊に合計1300艦程度のジャンプ船を配備していますので、正面戦力ではわが方は大幅に劣っているわけです。


 しかし、わが方の絶対的なアドバンテージは『せいうん』に配備している超空間攻撃システムであり、これが絶対的なアドバンテージであるうちに相手の打撃力を殲滅して、以降はその国力を使っての宇宙軍を再建できないようにするしかないというのが宇宙軍としての見解であります。

 

 しかしながら、現在このシステムは1セットしかなく、その絶対性に鑑みて軍事的には極めて脆弱と言わざるを得ません。つまり、ラザニアム帝国への積極攻撃は少なくとももう1セットのシステムが完成するのを待つべきであると考えています。これの完成は今のところ半年後と考えており、その時点では300艦以上の防衛軍のジャンプ船が揃っておりますので、地球は超空間攻撃システム無しでもそれなりの防御力を持っていることになります」


 こうした防衛軍の方針は全て受け入れられ、宇宙軍への大幅な動員が決定された。ラザニアム帝国の艦艇をサルベージした艦のみでも約7万5千人の乗り組み員が必要になり、これらの整備員まで含めると少なくとも現状の4万人に加え、15万人の増員が必要になる。

 基地も岩木基地のみでは手狭になるので、海軍工廠があるアメリカのノーフォーク海軍基地にも国防軍基地を設けた。将兵はG7及びロシアからの航空、海軍または陸軍の機関兵等で英語能力を加味して選ばれるが、その他の国からも現役将兵を優先して募集している。

 これに対しては、中国・韓国も現役将校を中心に国が後押しして応募させているが、こうした将兵は一定の教育レベル診断、能力・性格診断が課せられており、中国・韓国将校はこの主として性格診断で殆どはねられてしまった。

 アメリカ軍は、移民の国だけあり内部での様々なトラブルの経験から、性格診断に高いノウハウがあり、とりわけ儒教圏である中国・韓国的な価値観がトラブルを招きやすいことを知っていた。

 

 特に問題であるのは、自分及び一族のことしか考えないこと、一定の集団を見下す、大言壮語の割に危機には真っ先に逃げ出すこと、腐敗しやすいこと等であり、特に後者2点の傾向が少しでも見られたものは少なくとも将校としては使えないということで、結果殆ど合格者は出ていない。


 宇宙軍の予算も当然協議されて、ラザニアム帝国対策防衛費として当初設定された予算である5千億ドルについては、まだ消化残があるが、300艦の正規ジャンプ艦が揃う半年後には使い切る予定であり、次年度予算も艦艇整備費が大きく5千億ドルとなった。

 そのうち2千億ドルをアメリカが担い、日本は8百億ドルの拠出となったが、GDPが年間10%を超えて伸び税収が大幅に伸びている日本としてはそれほど大きな負担ではない。1千億ドルについてはG7以外の国から集めることにしている。


 この会議の中で、今回の防衛戦及びそれ以前からの誠司とマドンナの果たした役割がG7+1の首脳の前で初めて明かされた。

 これについては日本の阿賀首相が、すでに各国は気づいているし何時までも隠せないないと誠司に強く説得して、誠司も渋々頷いて発表になったものだ。


「このように、今回地球が救われたのは、牧村誠司君という若者が、マドンナという彼のコンピュータに宿った、まあ妖精の力を借りて様々な活動をしてくれたおかげです。

 彼とマドンナは、世界全体に産業革命を起こし、宇宙に飛び出してラザニアム帝国という地球に迫る危機を発見して地球防衛軍の設立を促し、かつ地球を滅ぼすための敵侵攻の最後の瞬間に超空間攻撃システムという新たな兵器を開発して頂いたおかげで我々がこうして生きて行けるわけです。

 今後もかれとマドンナがどんな世界を見せてくれるのか、私たちは彼とマドンナのおかげで、本当に今後の世界に希望を持って立ち向かえると思うのです」首相の演説は共感を持って迎えられた。


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