自衛隊の兵器改革
昨日は更新できませんでしたが、初めから校正しました。結構、誤字・脱字、名前の間違いなどを見つけて訂正しました。
東アジアの政治情勢は混沌としてきている。
韓国が、昨年度末3月の多額の配当金支払いに伴うドル資金ショートにより、中国の支配下に入ったのが3月始め、その時点で中国の命令で、慰安婦に係る日韓合意の一方破棄、THAADミサイルの導入は棚上げ、さらに日韓(実質は日米韓)の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄が左派の新大統領 キムによって宣言された。
その翌日、米国は9月までの中韓米軍の引き上げを韓国に対し通告し実際に撤退した。
この時点で、公式にはまだ北朝鮮との戦争状態にある韓国は米軍と言う歯止めを失って、完全に核ミサイルを戦力化した相手と向かい合うことになった訳である。この事態に対して北朝鮮に融和的な現韓国政府は、“一体化”と言うスローガンを捻りだして北朝鮮への食糧援助を始め、企業への北への投資を特に労働集約的な工業について呼び掛けている。
実際に、北朝鮮は労働者の賃金としては世界最低であることから、この労働力の活用は韓国製品の世界市場におけるコスト的な優位性を確立するものと考えられた。
無論、こうした動きには韓国内にそれなりの数がいる保守派の反発を呼んだが、左派マスコミは韓国と北朝鮮が共同で核ミサイルを持つことの日本に対する意味、絶対的なアドバンテージを述べたてた。
その結果、反日と言う点については既に国教化している韓国において、一般民衆が熱狂的に支持し、結果保守派が反日と同様にその声すら出せない状態に持ち込んでいる。
実際、すでにインターネットでは、対馬奪還、さらには九州占領と言う声すら出始めて、核ミサイルを撃ち込むという威嚇をすれば、容易に達成できるという、例によって自分の都合しか考えていない議論が起こっている。
これは、日本語に翻訳されてインターネットに出回り日本人の憤激と反感を呼ぶのだが、結果としてこれは日本人全般の韓国人への警戒心を呼んで、日本からの技術移転は全く途絶え、さらに韓国への工業機材輸出契約の更新がされなくなるなど、韓国の輸出立国の基盤が揺らぎ始めてきていた。
この状態において、韓国への投資は日本からは殆どゼロになり、欧米諸国からもあまりに身勝手な論理でわざわざ日本を敵に回す愚かさをあきれられて大幅な減少に見舞われている。海外から投資が殆ど引き上げられたのは株式市場も同じであり、半分以上が海外からの投資に支えられてきた株価は暴落に暴落を重ね、結局大統領就任の時の価格の1/3で落ち着いた。
さらに、悪いことは重なるもので、従来からバブルと言われていた住宅価格が、最後の砦とばかりの政権のさまざまな政策もむなしく崩壊を始めた。それに対して政府がとった手が不動産取引の時限停止であったが、これも悪手で確かにその間の取引価格は下がらないが、売買するものの心理はどんどん悪化しており、時限である以上再度取引を再開したときはより下がるということでたちまちピーク時の半分になってしまった。
これは、韓国の一般人にとって甚だ深刻な事態であった。それと言うのも、韓国人の資産は不動産が大部分と言って差し支えなく、その財産が平均で半分になりまだ下がりそうな情勢なわけであるので、これは非難が政府に向くのは当然というものである。
それに対し、政府が取った手段は、いつもと同じ“日本が悪い!”である。そもそも、日本が通過スワップを始めとする経済支援をいつもの様に続けていれば、こういう事態にも追い込まれていない。そのうえに、韓国が必要とする情報をシャットダウンして、かつ生産を保つため必要な資器材の供給も絶ってしまって尚更の苦境に追い込んだ。いまの苦境は全て日本のせいであると。そもそも、自ら慰安婦などと言う茶番でアメリカ等の諸外国を巻き込んで、散々日本に嫌がらせをしてきたのがこの結果を招いたのを忘れて、いつものような都合のいい論理である。
そして、さらに悪化した日本に対する国民感情を利用して、起死回生を目指して対馬侵攻を決心した。いつも無能な政権が取る最悪の手段であるが、日本に平和憲法がある限り有効な手は打てないというのは、それなりに理のある話であった。さらに彼らは北朝鮮と話を付けて、すでに実戦配備についている固形ロケットによる核ミサイルを脅しに使えば、反撃の動きを封じられると考えていた。
一方、すでに多数の監視の人員を韓国に送り込んでいる中国はこの動きを掴んでいた。
実際のところ中国も多額のドルを使って韓国を救済したものの、すでに外貨不足に見舞われていた中国自身にとってこれは大きな痛手になった。
4兆ドルに迫っていた外貨準備高は、すでに2兆ドル台に落ちているがその中身も韓国と同じで実際に使える金はわずかであるというのが実態であった。さらに、強引な土地の収奪、止まらないインフレ、切りの無い賃上げに伴う外国企業の閉鎖、すでに破綻状態にある大部分の国営企業がついに従業員整理を始めるなどによる暴動が手を付けられなくなってきていた。そこで、韓国の決心を知った主席の劉は中国もその動きに乗ることにして、軍に準備を命令した。
日本においても、韓国の動きは掴んでおり、それに北朝鮮の核ミサイルにからめた作戦になることは確実と思われた。海と空については韓国軍は敵ではないが、核ミサイルについては今だレールガンの実戦配備についていない状態では撃ち落とせるとは限らない。
まして、中国が同調して動く様子を見せており、この場合は少し分の悪い戦いになる。そのX-dayを1ヵ月半後と掴んだ政府は、自衛隊に対して今進んでいる急速な技術開発を有効に利用して、反撃手段を策定するように命じた。
防衛研究所において、政府の要請を受けて、防衛大臣佐川が出席して、陸・海・空の各技術責任者に防衛研究所の佐治所長に加えて、水谷ゆかりに牧村誠司も出席して、政府の要請にどう答えるかの会議が開かれている。
ゆかりは、レールガン及び重力エンジンの開発を成功させた技術者であり、現在F4ファントムへの重力エンジンのアセンブルにほぼ成功しつつあることから出席を要請され、誠司はゆかりが是非にということで、佐治所長も積極的に賛成して出席が決まった。
最初に、佐治所長が誠司の出席について説明すると大臣の佐川が喜んで言う。
「おお、きみが牧村君か、話は聞いているよ。佐治所長、よく牧村君の出席を要請してくれた。みなも近く知ることになるだろうが、彼、牧村誠司君こそが、今後の我が国の科学立国を支えてくれる人物だ。
今日は彼が事態を打開するアイデアを出してくれることを期待するよ」
その言葉に、誠司を知らない皆が驚いて見ている。
「この際だから、皆に言っておきましょう。みな、当然画期的な性能の電磁砲、レールガンそれに重力エンジンが開発されたのは知っているはずだが、あれらの発明はこの牧村君の手によるものだ。それだけではない。すでに、マスコミにも出始めているが、核融合発電機、あの開発も彼の手になるものだ」大臣が合わせて言う。
そういう紹介で明るい雰囲気で始まった会議は、重苦しい話題にたちまち暗くなった。
対馬への侵攻にしても、おそらく相手は艦隊でくるから、こちらもそれに応じて艦隊で迎えるがその艦隊戦には、最初の一発は、憲法解釈から専守防衛ということになっているため相手に撃たせるしかないため犠牲はでるであろうが、戦力的には問題なく勝てる。
しかし、間違いなく核ミサイルで脅してくるだろう。たぶん、福岡とかどこかの大都市に反撃したら撃ち込むという脅迫になるであろう。
しかし、実際にやったら国として終わりなので脅しではあろうが、万が一のことを考えれば無視はできない。それに悪いニュースがある、日本で開発していたステルス・ペイントの技術が韓国に漏れているという話がある。このペイントは効果としては完ぺきではないが、パトリオットミサイルによる迎撃はかなり怪しくなる。
また、中国が歩調を合わせてきた場合、尖閣列島辺りになるだろうが、この場合対馬に出せる戦力も限られてくる。いずれにしても、相当な犠牲を覚悟しなくてはならない。
問題は米軍であるが、国内でもあまり評判の良く無いアメリカ大統領は日本に対し敵対的であり、現状では尖閣列島は日米安保の範囲と言う声明を出していない。日本びいきの米軍担当者との接触では、戦力を出せるとしてもある程度戦闘が決着してから、つまり日本に被害が相当に出てからにしろと言うことで相手の担当者も憤慨していたそうだ。
それに対し、我が国は新開発の画期的なレールガンがあるが、大きな電源が必要でまだ使えない。またF4ファントムに重力エンジン搭載は2週間もすれば1号機が、1カ月で20機くらいは揃うだろうからX-dayの45日後には戦力化出来るだろう。
しかし、まだその性能は計算値のみで実際は未知数である。
「あの、いいですか」誠司が手を挙げて発言を求める。
「もちろん、いいよ」議長役をしている佐治所長が発言を認める。
「ええ、レールガンですが、すでに作ってはいるのですよね」
「ああ、すでに5基分の本体は出来ている。1基は電力網から電力を供給して出力を落として試射もしている」誠司の質問に佐治が答える。
「ええと、それなら、あの発射には連続した電力として8万kWが必要ですが、消費電力としては100kWh位なのですよ。今既にできているSAバッテリーを少し改造すれば、発射に使えますよ。発射速度10km/secの径100mmの砲弾て結構すごいと思いませんか?
相手が飛行機ではすこしもったいないですが、船でも相手の位置をちゃんと把握できていれば、200km先でも当てられますよ。まだ、速度は十分残っているので、結構な威力だと思います」
「な、ななに、バッテリーで使えるのか?」海上自衛隊の技術監の三輪と言う人が興奮して言う。
「ええ、もうSAバッテリーの充電装置は出来ていますから、バッテリーそのものは1000kWのものは1000基でも2000基でも大丈夫ですよ。でも持って帰らないと再充電できませんけど。改造は出力部にアダプターを付ければ大丈夫ですよ」
誠司の答えに三輪技術監は「レールガンは今5基と言うことだが、増やせないか?」
と聞くが、これにはゆかりが答える。
「最初の5基は発注から組み立てで3カ月かかっていますが、今からでしたら急がせれば1カ月で、そう費用を惜しまなければ10基はできます」
「この際費用などは惜しんでおれない。必要な予算は分捕って来るから、費用は気にせず進めてほしい」 大臣が請け負った上で聞く。
「それで、艦船に載せる方は大丈夫として、ミサイル迎撃の方はどうだろう?」
「これは、レーダーと管制機器は護衛艦に載せるものを使えるから大丈夫でしょう。相手が完全なステルスだと無理ですが、今技術流出が言われている程度のものなら、1秒間に1発撃てる開発したレールガンを使えば数打てば迎撃できます」その管制機器を開発した佐治所長の答えだ。
「それから、F4ファントムに載せる重力エンジンですが、たぶんSAバッテリーの1万kWh級のものは間に合わないと思いますが、1000kWhのものを3台積んで4時間の戦闘時間と言うことですね。
それから、機は重力操作のための場に包まれますので、中では重力は1Gに調整できます。さらに、包まれる場の影響で空気抵抗が軽減されますので、最大速度はマッハ4程度までは楽に出せますし、短時間であれば6を超すことが可能です。
つまり、北朝鮮から飛んでくるとみられる弾道ミサイルはいわゆるSRBM(短距離弾道ミサイル)ですから終末速度はせいぜいマッハ6弱です。従って、改F4ファントムはミサイルと同じ速度が出せますから、途中でインターセプトすれば速度はもっと低いので迎撃はそんなに難しくはないでしょう」
さらにゆかりが追加して説明する。
「うん、有難い。ほぼ確実な迎撃手段が2つあれば安心して相手の脅しを跳ね付けられる」
大臣が喜んで言うが、それに合わせて航空自衛隊の技監の福田が喜んで聞く。
「いや、改F4ファントムがGの変化なしでそれほどの速度が出せるなら、当然相当な機動が出来るのではないかな?」
「そう、急加速、急減速、3次元の急旋回はお手のものです」ゆかりが答えると、
「であれば、韓国軍、中国軍に対して圧倒的に有利な戦が出来る。しかも、4時間の戦闘が出来るというのは有難い。これは、ひゅうがの活用などいろんなバリエーションがあるな」という福田の話である。
こうしてこの会議によって、X-dayまでの45日、レールガンを全15基生産し、2基を地上設置、13基はイージス艦6隻と最新の護衛艦7隻に1基ずつ設置することにする。
改F4ファントムは全部で25機を完成し、これらのうち15機はひゅうがに積む話になっているが、出来るだけ改修を急いで乗員に訓練をすることになっている。この点でこの機が有利な点は乗員が2名であることで、多少訓練が不十分でも大きな問題は出ないだろうと思われる。さらに、SAバッテリーの生産もこれら計画の胆なので、これについては防衛省からも正式な依頼を出すが、誠司の方からも確認することになった。
会議が終わる頃は最初の重苦しい空気はぬぐわれて、皆明るい顔で去って行った。
6月25日、航空自衛隊小松基地、改F4ファントム1号機に搭乗した、操縦士赤松二佐と管制士二村一尉は操縦席で座学で見せられた映像とまったく一緒だなと思って操縦席を見回している。
散々叩き込まれた手順を思い出して、まず計器をチェックするがこれはわざと日本語で作っている。
主要な内容は主電源:入・切、重力発生操縦器:入・切、重力発生量:0-11、機内重力:0.9-1.1、推力方向:3次元ジャイロで示される、速度計:0-10km/sec、電力残量:100-0、位置計:緯度・経度・高度等である。
操縦はできるだけF4ファントム似せて、推力としての重力発生量はペダルで調整し、推力方向は棒状スティックでコントロールする。
赤松はメインスイッチを入れ、さらに重力発生操縦器を入れ、しばらく緑のランプがついて装置が定常状態になるのを待つ。最初の手続きとしてスティックを最上段中央に固定して、垂直上昇することになっている。この結果、滑走の必要がなく、それこそそこらのグラウンドからでも離陸が可能である。
緑ランプが点き、重力発生操縦器の唸りを感じながら、スティックの位置を確認の後アクセルをそっと踏むと、まだ全く機体は動かないが重力発生量が1を上回ると機体が動くのを感じる。
重力発生量が2になると機体は滑らかにすーと言う感じで上昇する。上昇速度は10m/秒位か。その発生量でしばらく上昇して、遠くなっていく地上を見ると基地内で大勢が見上げているのが見える。
地上1000m程度に達したあと、スティックを操縦して斜め前方に進み始める。発生量は2Gに固定したままだが、加速度に従って増速していくものの緩やかだ。やがて発生量を3,4,5,6,7,8,と上げて行くと、速度の上昇は著しいが、機内には全く影響がない。
「赤松さん、これ全然戦闘機を飛ばしているという感じがしませんね、勝手に地上が動いている感じで」二村一尉が話しかける。
「ああ、その通りだ。しかし、操縦しやすいというか、これは自動車免許を持っている人なら誰でも操縦できるな。この3次元運動を飲み込めればな」赤松二佐が応じる。
その後2人は1時間ほど様々な速度、加速、減速、機動を試して所定の運動試験を終えて基地に着陸した。その際には、最後の試験として地上に描かれた円内に降ろすべく試み、ちょうどど真ん中に降り立った。
降りた後の赤松二佐の感想は以下のようなもので、運用に問題はないことが確かめられた。
「これは操縦しやすい機ですね。何より加速度と戦う必要がないのが最大のメリットです。普通の乗員でも1週間も訓練すれば十分でしょう。
空母?動いている空母でも、経験がない私でも難しくはないでしょう。何しろ安定していますし、落っこちるということがないので失敗すればやり直せばいいのですから」
沢山の人に読んでもらえて嬉しいです。




