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すみっこの僕

作者: 灰原仄火

 ふと、“あの子”のことを思い出した。

 “あの子”というのは、昔住んでいた家の同居人のことだ。同居人、とはいえ、僕は“あの子”の名前を知らなければ、僕や両親とどういう関係なのかも知らない。見た目から察するに、僕と同い年くらいの男の子ということしかわからず、喋ったことも遊んだこともない。ただ同じ部屋にいたというだけで、一緒に住んでいたという感覚はなかった。

 “あの子”はいつも部屋のすみっこにいた。両膝を抱えてうずくまり、僕が父親から叩かれたり殴られたり、蹴られたり、踏まれたりする様子を、助けるわけでもなく、怯えるわけでもなく、黙ってじっと見ていた。

 “あの子”の姿を見なくなったのは、僕が中学生のとき。両親が離婚し、母と逃げるように家を出て行ってからだ。それから十年以上が経ち、とっくに成人した僕は、当時、あの部屋で行われていたこと、思い出す度に苦痛が伴う過去に、少しずつ向き合えるようになっていた。

 “あの子”は、あれからどうしているのだろう。気になり、僕は母に訊いてみた。昔、同じ家に住み、いつも部屋のすみっこにいた“あの子”のことを。

 すると母は、

「えっ、何言っているのよ。そんな子、いなかったわよ」

 母の反応に、僕は驚いた。そんなはずはない。確かに“あの子”はいつも部屋のすみっこにいて、僕を見ていた。母だって見たことあるはずだ。なにせ、一緒に住んでいたのだから。

 十年以上経った今でも鮮明に残る記憶。それを頼りに、僕は当時の写真の中から“あの子”の姿を探した。すると、意外にもすぐに見つかった。

「ほら、見て、母さん。この子だよ」

「また、あんたは変なこと言って」

 母は呆れた表情で溜息をつき、そして言った。

「それは、あんたでしょう」




 十年以上前。部屋のすみっこで、両膝を抱えてうずくまり、黙ってじっと僕を見ていた“あの子”。

 僕が見ていた“あの子”は、僕自身だった。

「すみっこ」をテーマに書いた作品です。

一年ほど前に書いたものなので、やはり文章が稚拙ですね(^^;)

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