フラッシュバック
「……岸辺くん」
唇の端が上がったまま固まる。
橋の下に……俺が死んだ場所に掛上が膝を抱えて座っていた。
驚いてはいない。
むしろ、分かっていたのかもしれない。
でも、俺は一時停止を押された機械みたいに少しも動けなくなってしまった。
「岸辺くん?」
俺の様子がおかしいと思ったらしく、掛上が立ち上がってこちらに歩いてくる。
掛上は俺のジャージを腰に巻いたままだった。
白い靴下もまだらに黄ばんで、顔の鼻辺りも血が染み込んでいる。
「………」
何か、なんかしゃべらないと……
でも、言葉が浮かばない。
掛上から視線が外せない。
「岸辺くん」
掛上が一メートルほど手前で止まる。
大きな風が橋の下を吹き抜けた。
「……っ」
頭に強い衝撃が走った。
灰色のいびつに膨らんだ雲が空を覆いつくし稲光が瞬いて、闇より黒い人影が現れる。
雷鳴が俺を追い詰めるように聞いたこともないでかい音を地上に落とした。
「岸辺くん!」
目を開けると掛上が俺の肩をつかんで揺さぶっていた。
「岸辺くん!」
「あ………」
気がつくと冷や汗がこめかみから流れ、足が震えて立っているのがやっとだった。
よろめいてしまい、掛上が支えて俺は彼女の肩に頭を預ける格好になってしまう。
「岸辺くん。大丈夫だから。大丈夫だからね」
掛上が俺の背中を何度もさすったり、優しく叩いたりしてなだめる。
俺はすっかり掛上に抱きしめられて、まだ小刻みに震えていた。
掛上の頭越しに空を恐る恐る見上げる。
悲しいくらいの青空だ。
「大丈夫だよ……大丈夫。ここにいる……ここにいるからね」




