私の転生先はテンプレだ
こんにちは……真っ暗です。ココは何処かな?
とは言いつつも、大体此処がどんなところかは分かる。死んだし、死後の世界だろうね。
あっけない最後だったよ。ヤバイな、みたいな本能的な感覚なんて、初めてだったや。気が付けばこんなとこにいたしね。
私は菜蕾 里花だった。殆どの人にどう読むの?と尋ねられる。だから、平仮名で書いても問題無い場合は からい りか と、平仮名で書いていた。
自分ではよくわからないけど、私は『天才=変人が成り立つ』らしい。……馴染むよう努力したのに。でも、友達は沢山いるし、親友ーー悪友に近いがーーと呼べる人もいた。
……だから。自分と全く違う『異端』な存在を敵視する人もいた。そういう人に私は……殺された。階段から自然を装って、落とされた。
……そんな阿呆な事して何があるんだろうねぇ?私は『天才』なんだよ?証拠も残さず死ぬと思うなよ。ばっちり、防犯カメラに映ってます!
こんな殺伐とした高校生活、やだねぇ……。しかも、入学から9ヶ月しか経ってねぇんだけど。華の女子高生生活がっ!
冗談ですが。そこまで、悲しくない。ただ、家族が心配だ。特に弟。泣いてそうだな……。
……ふぅ。そろそろ進展、欲しいなぁ。こんなとこ、いても楽しくない。
「……そんなにお気に召さなかったかい?黒が好きだと思ってたんだけど」
高い男性?の声が聞こえてくる。まぁ、声を掛けられたからには返すけど。
「黒が好きでもさ、これは嫌だよ?真っ暗とか」
流石に……ねぇ?やり過ぎだもの。
「……ごめん。自己紹介、まだだったね。僕はヴィー」
「私は里花」
「知ってるけど、ありがとう。……で、此処が何処かという君の考察、ほぼ正解。ただ、此処は次の人生の待機場所になるけど」
転生か……?それなら、次は長生きしたいね。
「へぇ……、じゃあ記憶、消されるの?」
「いや。今回は記憶消さないよ。してもらいたい事があるから……」
「して欲しいことって?内容によっては、記憶消されてもいいから断るよ」
面倒事は嫌だよ……?
「それはいつか、分かるよ。簡単な事だし。とはいえ、君はしたい事をしていればいいから」
「ん〜……内容が分からないのは怖いけど、引き受けるよ。自由に生きても良いみたいだしね」
もし、簡単じゃなくても、それを楽しめば問題無いしね!
「ん、そろそろ自我が目覚める頃かな。次の身体は今、1歳の誕生日を過ぎた直後だよ。もうすぐ、君はその身体にいくから」
「……その子の自我はどうなるの?」
「大丈夫。まだ、目覚めてないから別の身体へ魂を移せるから」
良かったぁ、転生するかと思ったら人殺しになるところだったよ……。
「君にはいろいろとプレゼントするよ。後で分かることは今、言わないけど、とりあえず2つ教えておくよ。
1つは、今から行く国の言語。字は読めるけど、書けないからね。
もう1つは、僕とのパス。神殿に行ったり、寝ている時のみ、会話が出来るから」
困った事が有れば聞けってことか?……ってか、
「神殿って、何故。神ってことか?」
「まあ……そうだね。これでも、自然を司る神をしてるよ。君が今から行く世界で、ね」
「……時間だね。これからの人生、楽しんでね。そして、頑張って」
「じゃ、また今度?かな」
「今度は姉上も紹介するよ」
白い光が近づいてくる。今度こそ、長生きできますように。
……意識が暗転する。もうすぐ、次の人生だ。
次の世界で私は、自由に生きる。
*
side:ヴィー
無事にあの子を送れて良かった。
……けども。
「彼女で良かったのですか、姉上」
「問題無し!私が気に入った子だし、精神力に関しては……ヴィーより上だし。だから、大丈夫さ!」
姉上は、良く言えば心が広い。でも実際は少し……楽観視し過ぎだ。とはいえ、彼女がしたことは全て、いい方向に向かうから誰も気にしないけど。
姉上は僕と同じ、神ーー正しくは女神だがーーだ。精神を司る女神で、僕とは違い2つしか神殿がない。ただし、1つは僕の神殿でもある、2つで1つの神殿『双子神殿』だが。
「彼女は……出来るのでしょうか。私達、2人がかりでも出来なかったことを」
神が2人いても出来ないことなのだ。……とは言っても、人によっては簡単な仕事だが。
「彼女は選ばれた人間だよ?きっと、私達が思い付くことが出来ないことで、解決するよ」
……その思い付かない内容が分からないのから、心配なのだが。
「でも……」
「大丈夫だって!もし、出来なくてもなんとかなるさ!」
「……そうですか」
そんなに簡単なんだろうか……?1回、諦めているのに。
彼女はどんなことをするのだろうか。そもそも、どんな考え方をしているのだろうか。
……楽しみだ。
*
……白い光が近づいてきたと思ったら。
一瞬、真っ暗になって、薄桃色の空間に落ちました。ここに来てやっと、私の姿を確認できました。
水色に光る球体のガラスみたいなものでした。……これって、魂?
で。薄桃色の空間にこの色は、ミスマッチだった。うん、なんか毒々しい訳じゃないのに、嫌な組み合わせだね。
ついでに言えば、周りに漂う霧らしきものも合わせて気持ち悪い。
で、その霧は記憶っぽいんだよね。なんか、いろいろ知らない筈のことが入ってくるし……。
この記憶は、この身体のものだ。多分。
これを見て分かったことは、私はマクティ王国の第一王女、フルーリア・マクティ・エミス(愛称はフルー)で、兄は3人。内1人は双子の兄だ。
……なんでこんなにわかるかって?生まれて間もない赤ん坊に、自己紹介なんかをしまくってましたよ。そんなに自分を覚えて欲しいのかい?
多分、違うけど。推測としては、早い内に自分達を信頼させる為。理由としては、私を利用したいと思う人達の傀儡にさせない為。そういう人に王族ーーしかも、第一王女ーーがついたらいろいろヤバいしね。
でも、そのおかげで助かったよ。身体が覚えた記憶はなかなか消えない筈だし。ほら、自転車に殆ど乗らないけど、前に乗れたことのある人は乗れるじゃん?それと同じだと思う。
だから、名前を1回聞いただけでーーしかも、赤ん坊ーー覚えきったら変だけど、何回も言ってるし、刷り込み効果で覚えたことになるし、問題ない筈。多分。
父はエリカス、母はリエラ。第一王子の兄はリアン、第二王子の兄はサイカ、第三王子で双子の兄はウル。
両親は国を守れるようにという建前のもと、お母様は神殿の大司祭をも凌ぐ治癒師で、お父様は近衛騎士団団長を凌ぐ魔法剣士だ。ちょ、お父様団長さんより強いとかさ。護衛対象より弱いのって辛くね?
で。リアン兄様は頭脳特化で、サイカ兄様は敏捷特化でした。ウルはよく分からん。
……それで。この一家、全員美形。多分、私もウルもそうなるだろう。
そしてさあ……私とウルも何かに突出した才能を見出すだろうと期待されてるっぽいんですね。私は前世の自分の特徴を知ってるから問題ないけど。ウルは……もし無い場合、私と比較される筈。そうなるとウルは傀儡として王族が欲しい奴らには、結構の獲物になる可能性があるんだよねー……。まっ、そんな事させないけど!
ということで、記憶の整理などをしてました。それに、そろそろ私は起きる時間。……そう、今は夜なのだ。記憶を確かめる時間をヴィーさんはくれたんだろうね。本当、助かります、ありがとう。
では、そろそろ起きますか……。
さあ!本格的に頑張りましょっ!