加山家
残り3日
昨日から憂鬱だった。
何年も兄と両親には連絡一つとってなかった!
向こうも私になど関心がなかった。
兄は子供の頃から頭が良く今では一流企業で働く商社マン!比べて私は中小企業の下の下の課長クラス。そんな兄は私を常にバカにし続けていた。そして父は昔から私と兄を比べ私は落ちこぼれ扱いされていた。
兄に電話をし5回程コール音がなり兄が出た。
『もしもし、俺だけど...』
兄『あぁ!昭雄か⁉︎で?どうした?』
昭雄『悪いんだけど金貸してくれないかな?』
兄は不機嫌になった。
兄『はぁー?なんで?』
私は言葉に詰まりながらもなんとか発した。
昭雄『友達の借金の連帯保証人になってしまって本人は夜逃げして明日には返さないとまずい事になる。家族の元へ請求しに行くかも知れない』私は色んな嘘がよく思い浮かぶなと自分に感心した!
兄は怒り出した!
兄『お前、バカじゃねえの⁉︎お前、こっちにまで迷惑掛けんじゃねえよ!』
昭雄『ごめん!本当に悪いと思ってる。少しでいいからお金を貸してくれないかな?』
兄『で?いくら必要なんだよ?』
昭雄『500万ほど...』
兄『お前、バカだろ!500万も貸せるわけないだろ!』
昭雄『頼む!絶対に返すから』
兄『絶対、お前バカだよ!少し考えさせてもらうわ!後で電話する』
昭雄『出来るだけ早くして欲しいんだ』
兄『なるべく早く連絡いれるから少し考えさせろ!じゃあな‼︎』っと電話を切られた!
昨日からストレスがかなり溜まってる!ムカついて誰でもいいから殴りたくなってる!犯人を殺したくて仕方がない!愛菜さえ取り戻せばこのストレスから解放される。愛菜が取り戻せるまでの辛抱だ!と自分に言い聞かせた。
愛菜の部屋にいる妻に実家に行く事を告げるとすぐに実家に向かった。
実家は電車で乗り継いで1時間以上かかるがたいして離れてはいない距離にある。
実家の最寄駅に着き駅を出ると私が住んでいた頃とは風景が様変わりしてる事に驚いたがまだ昔からある店がいくつか残っていたので新しさと懐かしさが入り混じった不思議な気分になった。
実家に着き呼鈴を鳴らすと母が出迎えてくれた。
少しホッとした!
母は久しぶりに帰ってきた私を見て嬉しそうだった!
母『あら昭雄久しぶりね。元気だった?』
昭雄『うん!大丈夫!父さんいるかな?』
母は少し驚いた!
母『お父さん?いるわよ。お父さんに用なの?珍しいわね⁉︎早く入って来なさい』
家に入ると昔からほとんど変わってない実家に懐かしさを感じたが父に久しぶりに会う事に恐怖と嫌悪感で息苦しく逃げ出したい気分になった。
父は数年前に定年退職を迎え趣味もなく友達もいないのでほとんど家にいる事は知っていた。
だが頑固さと厳しさは未だに変わってないだろう⁉︎
父の顔は二度と見たくなかったのだが仕方がなかった。
ダイニングに着くと隣の居間で父はソファで横になりながらテレビを見ていた。
母が私が帰ってきたと父に告げたが父は一言も発しなかった。
母は私をダイニングの椅子に座らせ飲み物を出してくれた。
母は真向かいの椅子に座った。
母『元気そうね。良かった。なんでもっと早く帰って来なかったの?ここはあなたの家でもあるのよ。いつでも帰って来ていいんだからね。お母さんあなたが顔を見せにきて嬉しいわ!お父さんに話があるんだっけ⁉︎』
お父さんに向かい母が私が用事があると告げると父に無視された。
私は父の前に行き『久しぶり!』と挨拶すると父は全く感情を出さずに『なんだ?』っと一言。
私は大事な話があると告げると父は乱暴に『だからなんだ?』と横になっていた姿勢を座る姿勢になおした。
私は父の前の床に正座して父の目をみて『お金を貸して欲しい』と言った瞬間!
左頬をぶん殴られた。
父『お前は久しぶりに帰って来たと思ったら金の話か⁉︎ふざけるのもいい加減にしろ!お前が帰って来るなんてロクでもない事だと思ったよ』
顔を上げると父は鬼の形相をしていた。
逃げ出したくなったが此処で引くわけには行かない。
私は土下座をして頼んだ。
『お願いします!少しでもいいからお金を貸して下さい』
父はまだ言うかとまた殴ろうとするが母が私の前に立ち止めてくれた『お父さん!落ち着いて話を聞いてあげて下さい!お父さんにこの子が頼みごとなんてよっぽどの事なんだと思うの!』
父は少し落ち着き握り拳をしたまま『何の為に必要なんだ?』と少しは話を聞いてくれる姿勢になってくれた。
私は左頬の痛みを我慢して『友達の借金の連帯保証人になって友達に逃げられた』と説明した直後に父は母を払いのけ殴りかかってきた。
『お前はバカか!なに、保証人になんかなったりしたんだ!だいたいお前の普段の行いが悪いから友達にすら逃げられるんだ!』4〜5発殴られた時、また母が私と父の間に入って止めてくれた。
母は心配そうに私の顔を見た。
『大丈夫?いくら必要なの?』
昭雄『500万!』
母は父に向かって言った。
『私に500万円貸して下さい!お願いします』母は私の為にたのんでくれた。
母の優しさと殴られた痛みで涙しそうになった。
『勝手にしろ!ただし昭雄とはこれで親子の縁を切る。それでいいな!』と言い父は拳を握り締めたまま奥の部屋に入っていった。どうやら借りる事が出来たらしい。
昭雄『母さん、ありがとう』
母『後で私がちゃんと振り込んどくから安心して!』
そして私は実家を離れる事にした。
去り際、母に小声で『また顔見せに帰って来なさい』と言われるがもう二度と帰ることはないだろう。
実家からの帰り道、兄貴から電話が掛かってきた。
兄貴から200万なら貸してくれるとの事だったので礼を言いマンションに帰った。
妻は私の顔を見るなり驚き慌ててタオルを氷で冷やして持ってきてくれた。
どうやら親父に殴られたところが腫れてたらしい。
加代『大丈夫?何があったの?』
大丈夫だよと強がりをしてみたが今頃になってカナリ痛みを感じていた。
昭雄『とりあえず700万借りられた!』
加代は驚き『大変だったわね!ありがとうございます』
私達は頭を切り替えて今集まってるお金をおおよそで計算した。
昭雄『俺の貯金が400万ぐらいで同僚が20万、兄が200万で親父が500万!1120万ってところか⁉︎』
加代『私が115万ぐらいだから全部合わせて約1220万!ごめんなさい私が足を引っ張ってるね!』
昭雄『いや!大丈夫だ!後は消費者金融を回れば500万ぐらいは借りられるはず加代も回れば100万ぐらいは借りられると思う』
加代『ありがとう!でもあと100万以上必要になるけどどうしたらいいの?』
昭雄『後のことは後で考えるとしよう!とりあえず今日中に借りられそうな所を当たろう』
加代『分かった!すぐに支度するね!』
妻が支度してる間にまた非通知の電話がかかってきた。急いで電話に出るとやはり犯人からだった。
犯人『金の方は順調か?』
昭雄『絶対になんとかしますのでもう少し待って下さい!ですからせめて愛菜の声だけでも聞かせて下さい』
犯人はいいだろうと少し待ち愛菜の声が聞こえた。大声で加代を呼び携帯をスピーカーに切り替えた。
『パパ、怖いよー!早くお家に帰りたい!いつ帰れるの?』愛菜は震えた声をしていた!
昭雄『大丈夫!パパがもうすぐ迎えに行くから...だから心配しなくて大丈夫だからね。怪我はしてないか?ご飯はちゃんと食べてるか?』
愛菜『うん!大丈夫!』
加代『本当に本当に大丈夫なのね?』
愛菜『ママ!早く迎えに来て!』
加代『うん!すぐに迎えに行くからもう少し待っててね。お母さんも早く愛菜に会いたい!会いたい』
犯人『もしお金が用意できなければこの子がどうなるか分かってるな⁉︎金の受け渡しだが◯◯駅の表の出口のロッカー◯◯番に入れろ時間はあとで連絡する⁉︎』
そこで電話を切られた。
久しぶりに愛菜の声を聞き少しばかり希望が見えた!私達はすぐに家を出て別々に消費者金融を回ったがやはり600万しか集められなかった。希望が見えたのも束の間だった!
残り100万以上必要か⁉︎明日までになんとか2人で考えるしかない!どうする⁉︎どうしたらいいんだ⁉︎頭の中がパニックになり最悪の事しか考えられなくなってきていた。




