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藍微塵  作者: 依流かえる
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ある時代の日本は政治家の考えが対立したことによって二つに分かれていた。科学技術がどんどん発達していく中でそれを推進するのが主流であった。

そんなときに一部の政治家の間でこのまま科学技術だけを発達させて行ってはいけない、古きよき時代の日本に戻し自然とともに暮らすべきだという考えが生まれ、議会が二分された。その結果として二つの政治の中心が生まれた。一つは東京を中心として技術が発達した近未来都市『新都(しんと)』。もう一つは京都を中心とした古きよき時代の日本の再来『古都(こと)』。

古都は昔の一時代だけでなく、平安時代から江戸時代まで、様々な時代のいいところも悪いところも取り入れた。新都では欧米やアジアの様々な国とこれまで以上に活発に貿易をしている。

主に関東圏は新都であり、そのほかに愛知県や福岡県、東北の何県かなども新都である。

古都は近畿地方を中心として、古来から日本に居たといわれる妖怪や八百万の神とともに暮らしていた。


古都、中心部より離れた山のふもと。日が昇って僅かしかたっていない、まだ空気が冷えている時間。

「ちょっと、宴のために用意してた皿が足りないんだけど」

「昨日はそこにあったでしょ?」

「日の出前、旦那様が一枚持っていってたよ」

「えー、なんでよ。旦那様何に使うの」

ある屋敷が普段よりいささか騒がしい朝を迎えていた。今日はこの屋敷で人を招いた宴があるらしい。

この屋敷の主は早瀬穂高(はやせほだか)といい最近中年太りが気になる絵に描いたように普通の男だが、この時代の貴族の中では特異な地位に居た。しかし、決して特別に身分が高いわけではない。屋敷もそれに相応し、一般の貴族よりこじんまりとしている。

「そろそろ奥様が起きる時間じゃない?」

誰かがそうつぶやくと女たちはいっそう騒がしくなった。

「早くしないと!」

この言葉をきっかけにこれまで以上にせわしなく動き始めた。女たちがあわてているのは奥様が厳しいから、というわけではない。

ましてやその逆である。早瀬穂高の妻、つまりここの『奥様』である早瀬雪乃(はやせゆきの)は優しすぎるのである。朝早くから働いている女たちを見つけたときには「手伝いをする」と言い出し、仕事を全て終わらせてしまう。女たちはそれを迷惑に思っている訳ではく、ありがたいと思っているのだが、仕えている主人の妻に雑用をさせるなど気が引ける、と一様に思っている。だから、『奥様』が起きてくる前に出来る仕事は全て終わらせてしまうのだ。

それから少しして奥様は現れた。

「おはようございます。朝早くからご苦労様です」

「奥様!おはようございます!」

女たちは全ての仕事をやり終えて、口をそろえて笑顔で奥様に返事をした。

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