スピンターン
「……んっ、はっ、やべっ寝坊した!!」
リュウはいつもより起きるのが遅かった。
急いでシャワーを浴びるが、手指に残ったしつこい汚れはなるべく落としたい。
あわてて、バスタオル姿でバスルームを出る。
「ちょっと、リュウ遅刻……」
と声をかけてきたシンシアと、目が合った。
一瞬、時が止まる。
「……っ!!」
シンシアの目が見開かれ、頬が一気に真っ赤になる。
「な、ななな、なにやってんのよあんたっ!!」
「えっ!?うわっ、なんでいるんだよシンシア!!」
「こっちのセリフよっ!なんでバスタオル一枚で出てくるのよっ!」
「いや、遅刻かと思って急いで……って、ちょ、待って、ドア閉め――」
バタン!!
「……もう、下で待ってるわよ!!」
ドアの向こうから聞こえる。
そのあと、階段を駆け下りる足音と、玄関のドアがバタンと閉まる音。
リュウは頭を抱えながら、ため息をついた。
「……朝から……はっ!急がなきゃ」
速攻、着替えてシンシアの白いエクリプスGSR-4に乗り込む。
「わるい、待たせた。」
「……もう、少し急ぐわよ!!」
キャッ!!、タイヤが鳴く、シンシアがいつもと違う雰囲気で運転開始。
ちょっときついカーブに差し掛かる。
フオン、キッ、フォーン鮮やかにクリア。
前から思ってはいたがシンシア、運転うまいのでは。
そして、下りのヘアピンが近づく、シンシアは、何食わぬ顔でサイドを引いた。
フオーン、キッキーーー、エクリプスのリアが滑り出す。
「うおっ……!」
リュウの体がわずかに浮き、視界がぐるりと回る。
キーーキュ 、フォーン、滑らせ過ぎずスマートにヘアピンを抜けた。
「えっ、えー!? うますぎんだろ……」 思わず声が漏れた。
シンシアは、何事もなかったかのように前を見据えたまま、
「なに?」とだけ、涼しい声で返した。
シンシアのドラテクでいつも通りの時間に学校に到着。
いつもの面々は今日も冷やかす。
「ようよう、お二人さーん、今日も見せつけてくれちゃてよー」
「ハイハイ、お疲れ様―」
シンシア、雑な返し。
教室に入るとベッキーが笑顔で
「おはよー、リュウ、シンシア」
「おはよう」
「お、おはよう」
シンシアはいつも通りの声で席についた。
リュウはまだ、さっきのスピンターンの余韻が抜けず、 机に突っ伏した。




