シアトルの雨と二人の距離
俺はシアトルに住んでる高校生、リュウ・ヤマモト。
アメリカ人の父と日本人の母のハーフだ。
シアトルの朝は今日も雨。
濡れた路面に街灯が白く反射して、雪のように見える。
親父も爺ちゃんも海兵隊員。
でも、爺ちゃんはもういない。
形見にもらったランサーEX1800GSR ICターボ(ガンメタ・右ハンドル)。
エアクリーナー、マフラー、VVC、ブーストメーター、ダウンサス、LSD、
RSワタナベエイトスポーク。
どれも爺ちゃんと一緒に自宅ガレージDIYで付けたものだ。
「爺ちゃん……今日も行ってくる」
キュルキュルドルン!!エンジンをかけると、 いつもの心地よい音色。
この音が好きだ。
農場の手伝いで乗ってる赤いエンジンのスバルの軽トラも悪くない。
日本じゃ“農道のポルシェ”なんて呼ばれてるらしい。
少し暖機してから1速に入れ、クラッチをゆっくり繫げる。
濡れた路面は楽しい、すこしアクセルを踏むとリアタイヤが滑り出す。
ちょっと遠回りで楽しんだりして遅刻しそうなったこともあった。
ギリギリの時間に駐車場に到着、
学校の駐車場に着くと、
「リュウ、私を待たせるなんてどういうつもり?」
この日の放課後は彼女の大好きなスイーツと紅茶の店でおごることに
今日は寄り道しないで学校に到着
隣には白いエクリプスGSR4(左ハンドル・日本仕様入手)。
そして、いつもの左側に駐車する。
俺のランサーは右ハンドル、左ハンドルのシンシアと至近距離になる。
「おはよ、リュウ」
超絶美人の金髪碧眼、幼馴染のシンシア・ミラーが微笑んでいた。
ふたりで教室に入るといつもの面々にいつものようにひやかされる。
「ようようおふたりさん。仲良く日本車で見せつけてくれちゃってよう」
「うるさいわね!毎日飽きずにご苦労様」
そんなやり取りをしていたとき――
ズドドドドドドドドド……!
爆音が校舎まで響いてきた。 教室にいても聞こえるレベルだ。
駐車場に入ってきたのは、 20プリウス。
しかも、爆音。
しばらくして、 半泣きのベッキーが教室に入ってきた。
「リュウ……どうしよう……」
クラスメイトは事情も知らずに盛り上がる。
「おいおいベッキー、どこのチーム入ったんだよ」 「プリウスでその音は攻めすぎだろ」 「逆に好きだわそのセンス」
ベッキーは涙目で首を振った。
「ち、違うの……触媒、盗まれて……」




