新居
blueが解散して翌日、ギルドに新メンバーの報告に行った。
宿に7人パーティはさすがに申し訳ない。
「はぁ!?解散!?」
「簡単に言いますとパーティ内で痴情のもつれがありまして」
「おい勘弁してくれよ…」
「ユウカとリオンは脱退、私とリーシャだけじゃ立ち行かないので事実上の解散になります」
「くそ…俺の給料が…で、なんでお前がいるんだよ」
以前Sパーティが解散するごとにおっさんの給料が減り、labyrinthが一つ攻略されると特別報酬が出ると聞いたことがある。
泣きそうなおっさんの顔は見たくない。
ここは俺が人肌脱ぐしかない…。
「パーティメンバーの追加だ、リナとリーシャをうちのパーティに入れるぞ」
「まてまて、反対だ」
「理由は?」
「嬢ちゃん達は回数は少ないがlabyrinthを経験している、新しく人を入れてS1を維持するべきだ」
「そのメリットは?」
「俺の給…いや、labyrinthの攻略は世界のためだ!」
「ギルマス、命をかけている方々に失礼ですよ」
受付のお姉さんにも冷ややかな目で見られるおっさん、可哀想に。
「まて、もうひとつある」
「なんだ?」
「7人パーティなんて聞いたことがないぞ、まともに連携を取れるわけがないだろう」
「もともと連携のなかったパーティに無理やり連携を持たせたんだ、2人増えたところで俺の仕事は変わらないから問題ない」
「まてまてまて、経験の浅さから大事に至ってそこからパーティが瓦解することもあるかも知れないだろ」
「確かにそうだな」
「わかってくれたか!」
「じゃあ2人を鍛えることにしよう、2ヶ月間黄昏の瞳はlabyrinthに参加しない、他の奴らに任せろ」
「くそーーー!!!」
いい加減に諦めろ、主導権はあくまでも俺たちにあるんだ。
「一つだけ条件がある」
「なんだ?」
「6人以上のパーティは国から監視の対象になる、S6のお前ら5人ですら監視をつけろとお上はうるさいんだ」
「初耳だな」
「お前らの戦力が軍を超えて国をひっくり返すんじゃ無いかって怖えのさ」
まぁ筋は通ってる。
監視がつくぐらいはいいか。
「軍には閃光がいるだろう、有事があっても少しは持つんじゃ無いか?」
「お前らに負けてパーティを解散した何人かだけだ、前線を退いたやつが勝てるわけないだろ」
「勝てるわけないだろ少し持つと言ったんだ」
「だー!うるさい!監視がつく!文句ねえな!?」
「別にいいさ」
おっさんは一枚の封筒を俺に渡した。
「宿を引き払ってここに行け、監視は拠点の中だけだ」
「拠点を提供してくれるのか」
「前々からここに住まわせろって言われてんだよ、俺だってお前らが監視は嫌だろうと思ってだな…」
「おっさん」
俺はおっさんにつけている指輪を外し手渡した。
「なんだよこれ」
「鑑定してもらえ、国宝級の指輪だ、売るなり焼くなり煮るなり奥さんにプレゼントするなり好きにしろ」
「ギルマス!私にください!先日離婚したばかりじゃ無いですか!」
「ガキにやるもんはねえわ!これは俺の給料だ!」
カウンターで大声を張り上げてやり取りが始まったのでそそくさとその場を離れた。
「良かったんですか?」
「あれぐらいなら作れるからな、宝石は模造品だし国宝級なのは付与効果だからな」
「付与は苦手です…」
「アシュルに教えてもらうといい、俺はあいつより優れた付与魔法を使えるやつを見たことがない」
帰路に着いた俺たちを待っていた他のメンバーと合流した。
「許可はもらって来たけど宿引き払って監視つきの家に住めだとよ、これが招待状」
「うえー、監視ー?」
「カクカクシカジカでだな」
「説明めんどくさがってるでしょ」
「恐らくS級が7人も集まることを恐れているのでしょうね」
言わなくても分かる奴もいるもんだ。
「私たちがすいません…」
「…謝罪する」
「マヤは全然オッケーだよ、誘ったのあたしだし」
「私も問題ありません」
「俺もだ、気にすることはない」
「遅かれ早かれだろうしね」
「監視…綺麗なお姉さんがいれば良い…」
「誰も気にしちゃいねえよ、行こうぜ」
「っはい!」
俺たちは荷物をまとめて封筒に入っていた紙を頼りに向かう。
「ここだよな…」
「でっか…お屋敷?」
門を開けようとするが鍵がかかっている。
呼び鈴があるから鳴らしてみるか。
「どちら様ですかな?」
出て来たのは執事服を着たお爺さんだった。
この人が監視役か?紳士な対応が板に付いているな。
「ギルドに籍を置いている黄昏の瞳というパーティだ、ギルドマスターにこの紙を渡されてやって来た」
「むっ…カトラス様、マヤ様、ミヤ様、アシュル様、そしてリーダーのカイト様ですね」
「知っているのか?」
「知らない人はいないでしょうが私はS級の大ファンでして、よく存じ上げております。後ろのお二人はblueのメンバーでリナ様とリーシャ様では?」
「私たちのことまで」
「二、三ヶ月しか経ってないけど、詳しい」
「ワシは詳しいですぞ?みなさんの好みの食事から身長、体重、足のサイズ、なんなら胸のサイズまで知ってグボァっ!」
可憐なメイド服の少女がセクハラ執事ぃに踵落としを喰らわせた。
じじい、生きてるか?
「おじいちゃん、セクハラです」
「お嬢さん、素敵な踵落としですね、俺と付き合ってください」
「恋人ですか?良いですよ?」
「「なにぃー!」」
俺とマヤは驚きのあまり声を荒げてしまった。
「私より強い男性が好きなので喜んでお付き合いします、趣味は稽古です」
「328人目で成功か!?」
「同じ人も合わせたら828、829回目だったかも」
「1000手前じゃなかったっけ」
「352人目994回目だ!」
カウントしてんのかい。
「ついに俺にも春が…そうだ!こいつ!この男には近づかないでください!」
指を刺すな指を。
「?何故ですか?」
「この男はクソ野郎です!俺の妹達を孕ませ、義妹まで孕ませ!そして次は新メンバーの2人にまで食指が動き先日2人同グボォ!」
「セクハラです」
「あんたの方が強いんじゃないか?」
「流石に勝てませんよ、とりあえず中へどうぞ」
門の前にセクハラ組を放置して中に入る。
「「「お帰りなさいませ、ご主人様」」」
たくさんのメイドに出迎えられる。
「うわぁ…」
「カイト、あたし達以外はダメだからね、手を出したら殺す」
「肝に銘じておく」
「こちらはどうぞ」
案内されたのは食事をとるフロアか?
長机と椅子が並んでいる。
「お座りください」
てんでんに座る。
2人足りない気がするが。
「メイド長のメルです、さっきのセクハラおじいちゃんが上司の執事長セル、私の祖父です。」
「自己紹介は必要か?」
「存じ上げてるから気にしないで」
口調めちゃくちゃだな、畏れても疲れるしこのぐらいがあってる。
「一応私と祖父が監視役、メイド達は貴族の娘だったり養子にした娘だったりね」
「話して良いのか?」
「隠し通せると思ってないもの、監視っていって勝てない相手を監視ってバカよね」
「それはそう」
「部屋もたくさんあるから自由に使って、大部屋を使うのもご自由に、用があればメイドに言いつければ良いわよ」
「そんなんで良いのか?」
「食事も掃除も全員ができるし、お風呂だって5分もかからずに準備できるわ、不自由させずに言動を監視が任務よ」
「じゃあ早速だけど部屋を見せてもらおうかな〜」
「私も楽しみです」
「女の子組はっしーん!」
近くにいたメイドに声をかけて屋敷を回るみたいだ。
こうしてみると普通の女の子だな。
「あなたは行かないのですか?」
「せっかくの女の子の交流の邪魔しちゃ悪いだろ」
「それもそうかもしれませんね」
メルは高速移動で俺の背後に回った。
縮地、アサシンだな。
踵落としが落ち切る前、上段で止める。
「武闘派かと思ったがアサシンか」
「避けると思いましたが、受け止めますか」
「パンツ見えてるぞ」
「見せてるんです」
「獲物はこのナイフか」
綺麗なおみ足に装着されたナイフポケットから奪い取っておいた。
足を触ったら何をされるかわからん、マヤミヤに。
「…気がつきませんでした、噂は本当でしたね」
「噂?」
「あなたが本当は無能ではないという噂です」
「普段はダラダラしているからな」
「…失礼しました、ナイフをお返し頂けますか?」
俺はナイフを手渡した。
「相手は選べよ、マヤかミヤにやってたら最悪死んでたぞ」
「選んでますよ、死にたくないので彼女達に近接戦闘を仕掛けません他の方は別ですが」
リナ、リーシャ、アシュルか。
確かに後衛には有効かもしれないが。そう簡単には行かない。
「3人とも保護リングをしているから効かないぞ、やめとけやめとけ」
「仕方ない、カトラスさんと結婚して子供を作って最強に育てるかぁ」
「本気か?」
「もちろん、強い人がタイプなので」
俺に擦り寄ってこないだけで好感は持てる。
ちゃんと相手を選ぶというのは本当らしい。
「メルは容赦ないですからなぁ…」
「じいさんの孫か…良い蹴り持ってるな」
「ワシが直接鍛えましたからな」
「お孫さん、俺がもらいま!?」
「ん?」
「カイト!俺の嫁に近づくな!」
「何もしてねえし何もしねえよ。籍も入れてねぇだろ。マヤミヤに殺されちまうよ」
「パンツ見られました」
は?こいつ?
「パンツ見られました、足触られました」
「いや足は触ってないだろ」
「見てんじゃねえかよおおお!!!!」
すごい剣幕で突進してくる。
今までに見たことがない形相だ、さすがにやばいかもしれん。
「まてカトラス!誤解だ!」
「誤解…?見てないのか?」
「見たけど不可抗力だ、彼女はアサシンで腕試しで俺は襲われた、その時に…」
かかと落としをされて…防ぐのに腕で…
「触ったわ」
「触ってんじゃねえかよおおお!来いっ!カリバーンっ!」
「お前こんなところで聖剣だすな!あとアサシンだとか俺が襲われたことをスルーするな!」
「身のこなしからアサシンだとは思ってた!お前は少し痛い目を見た方がいいから襲われた方がいい、問題は見て触ったことだ!」
不条理すぎる。
「うるさいなぁ、何?」
「カイトがメルのパンツを見て足に触ったらしい」
伝えるのはそこじゃねえ!
「…カイト?言ったよね?」
「姉さん、お仕置きしないと」
やばい3体1だ、部が悪すぎる。
ってかマヤのあの目なんだよ、今から殺戮しますって目じゃねえか。
「アシュル、ヘルプ!」
「義兄さんは少し痛い目を見た方がいいからお仕置きされた方がいい」
「お前全部聞こえてただろ!?」
「リナ、リーシャ、こいつらを止めてくれ!」
「流石に…ね」
「うん、無理」
3体1じゃ反撃の隙が無い。避けるので精一杯だ。
クソッタレ!!
「おじいちゃん」
「どうした?」
「カイトさんって何者?」
「さぁ…分かるのは化け物ってことじゃな、ワシが全盛期でもあの中の誰1人にも勝てん、その内3人の攻撃を全て交わしておる、化け物以外に例えようが無いわい」
「そうだよね…」
「カトラス様と結婚するのか?」
「向こうが本気ならね」
「カイト様じゃなくて良いのか?野望があるんじゃろ?」
「こんな私に求愛してくれた初めての人だから、カトラスさんと結婚する」
「そうか、それでええ」
アシュルは1人、目を閉じて微笑んでいた。




