二日目
砂漠を歩き続けて1時間はたっただろうか。
今だに次のエリアが見つからない。
魔物も出てこない。
「最初みたいに下に扉があるとかじゃないのか?」
「リナが最初に確認していたから違うだろうな」
「無限回廊?」
「ただ広いだけのエリアだ、区画で分かれている様子はない」
「魔物も出てこないしどうなってんだ…」
「ただひたすらに体力を奪う目的なのかもしれない」
「こう言う時こそ観察眼を鍛える時だな」
俺たちは歩き続けた。
砂漠エリアに来てから10時間はたっただろうか、今だに日照りが続き汗が止まらない。
「飲み水が魔法で出せるのが救いだな…」
リオンは水を飲みながら歩く。
「もうあの種はないんですか?」
「一つしか回収出来なかったからな、日陰で休憩は難しいな」
「魔法でも影を作り出すほどの密度で生成するのは大変なので…」
「水に砂漠の土を混ぜて凍らせれば…」
そこまで言いかけてリーシャは足が止まった。
「何か気付いたのか?」
「影が…ない」
ふと足元を見た時に自分たちの影がないことに気が付かされた。
しかし太陽が確かに俺たちを照らしている。
見落としていた。
俺が言うよりも早く、リーシャが巨大な氷の刃を生成し、光の玉に向かって放った。
それに当たるよりも先に別の何かに当たり、今まで映っていた風景がガラスのように砕け散った。
「幻覚だったのか」
一部屋の中央に俺たちは立っていた。
「あれは…」
「宝珠だな」
部屋の先には台座があり、その上に宝珠はあった。
「あれが偽物…なんてことないよな?」
「いい警戒だが宝珠の偽物は見たことがない、ゆっくりと台座から下すんだ」
リオンが宝珠に、ゆっくりと近づいていく。
その時、後ろから俺だけが知っている懐かしい声がした。
「また来たのね」
「…アリシア」
その声の主はlabyrinthに行くと必ず俺の前に姿を現し、声を発する。
「…敵ですか?」
「いや…俺の妹だ」
「こんにちはお嬢さん、アリシア・ヤマトです」
「ヤマト…ヤマトって…御伽話の」
「…俺は勇者の子孫カイト・ヤマトだ」
驚きのあまり誰も声を発することができなかった。
「この瞬間しか表に出てこられないのよ、宝珠の力が弱まっているこの時だけ」
「…理解できないことばかり」
「詳しくは兄さんから聞いて、時間がないから早く宝珠を手に取った方がいいわよ」
「リオン、頼んだ」
「あ、あぁ…」
台座から宝珠を切り離すと足元に魔法陣が現れた。
「必ず迎えに来る」
「無理はしないでね」
魔法陣が光ると一瞬で外に移動した。
「はぁー疲れた…テレパスで馬車を呼んでくれ、俺はもう動きたくない」
今回は最短とも言える二日でlabyrinthを消滅させることができた。
とはいえ疲れはある。
「眠ってもいいんですよ?」
「…眠りたくても眠れないんだ、体が昂っていてな」
「簡単には警戒心が解けないですよね」
そういう意味ではない。
小一時間で馬車が到着し、俺たちは乗り込む。
「…アリシアさんは生きているんですか?」
「どうなんだろうな、本人もよく分かってないらしいから何とかしたいんだけどな」
アリシアは黄昏の瞳のメンバーでありリーダーだった。
俺よりも強く、機転もきき、思慮深く、完璧な妹だった。
S6に上がり、いつものようにlabyrinthを攻略し、アリシアが宝珠を手にした時、アリシアは姿を消した。
それと同時にメンバーの全員からアリシアの記憶が消えていた。
メンバーだけじゃない、ギルマスも、受付の人も、父も、母も、全員が忘れていた。
俺だけが覚えていた。
それからlabyrinthを攻略するたびにアリシアは現れ会うことができた。
俺がlabyrinthに行き続ける理由、アリシアを救うことだ。
「…助かるメドは立っているのか?」
「もう3年経つがさっぱりだ、諦めてはないけどな」
「勇者の血筋は…本物か?」
「一応そうらしい、別の世界から連れてこられて帰る手段もない、王族と結婚させられそうになったから逃げて田舎の町娘と結婚したって聞かされている」
「そりゃ御伽話でも真実は語られないわな」
「王族批判は極刑ですからね」
「バレればな、クソの役にも立たない国だわ」
ギルドに戻り報告に行く。
「おーい終わったぞー」
「早かったな、首尾はどうだ?」
「戻ったんだから無事に決まってんだろ、リオン、あれ頼む」
リオンの右ストレートによりおっさんは綺麗に吹っ飛ぶ。
「イッテェなぁ…ずいぶん仲良くなったじゃねえか」
「カイトさんが凄すぎるんだ」
「さん付けまでして、飼い慣らされたな」
「勝手に言っててくれ」
「後のことは頼んだ、俺は帰って寝る」
「あの!ありがとうございました!」
「次に向けてパーティで話し合うんだな、リーシャ、最後の気づきと判断、良かったぞ」
「…ありがとう」
「あーー!もう帰ってるー!まだダンジョン言ってすらないよ!」
うるさいのがきた。
「もうlabyrinth踏破したの?アリシアには会えた?」
「いつも通りだ」
「じゃあ…いつも通り寝る?」
「あぁ」
「じゃあ私も寝よーっと」
マヤは俺の腕に絡みついてきた。
「お二人は恋人なんですか?」
「違うよ?あれ?聞いてないの?」
「言ってないし言う必要もないだろ」
「女の子たち集合ー!」
マヤはユウカ、リーシャ、リナを集めてコソコソと話をしている。
「俺だけハブかよ」
「聞かない方がいいぞ」
「と言うわけなんだよね!」
「…」
いちいち説明しなくていい、ドン引きしてるだろ。
「私…お手伝いします!」
「…私も…する」
「私はパスだ、感謝はしているがリオンにだけ報告をさせるのは忍びないからな」
「じゃああたしダンジョンいこーっと、2人に任せるね、バイバーイ」
マヤはすごい勢いでギルドを飛び出して行った。
「本気か?」
「上手くできるか分からないけど任せてください!」
「…任せて」
俺が身勝手に動くだけなんだけどな…。
「宿に戻るか…」
2人は俺の後についてきて一緒に宿に入った。




