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馬車に乗りながらlabyrinthに向かう。
「ほら、自己紹介だ」
「えっと…リナです。支援魔法が得意です」
「ユウカだ、リオンと一緒に前衛を務めている」
「…リオンだ」
リオンって名前なのか、感覚だけで戦ってきたタイプだったな。
いわゆる天才、ああヤダヤダ。
まぁ教えることもないし別いいか。
「リーシャ、攻撃魔法が得意。」
ハーレムパーティじゃねえか。
「俺が指示を出すのは全員に対してだ、前衛組は普段通りで構わない」
「承知した」
「少し時間をもらうぞ、リナとリーシャは使える魔法を全部教えてくれ」
「ぜ、全部ですか?2人合わせて100は超えますよ?」
「問題ない、全部だ」
「わかった」
順番に説明をしてもらい、準備は全て整った。
マヤ達より少し劣るくらい、いい後衛達だ。
エンハンスやエンチャントでは間違いなく劣っているとは思うが問題ないだろう。
「labyrinthでは俺の指示に従ってもらう、依存ないな?」
「わかりました!」
「待ってくれよ」
リオンが俺を睨みつけて吐き捨てる。
「確かに俺は負けた、だけどあんたは俺たちの連携を見ていない、問題があればその都度口を挟んでもらう、それじゃダメなのか?」
まぁもっともな意見っぽくはある。
そう思うなら模擬戦なんか挑まずにそう言えば良かったんだ。
「プライドを立てるつもりはない、俺の指示で動いてもらう」
「っ、わかったよ」
舌打ちだろうが、文句だろうが好きに言え。
俺は早く帰りたいし1週間以上も起き続けるのは嫌なんだ。
「着きました」
馬車を降りてゲートの前に立つ。
ゲートの先はlabyrinth、入れば最奥の宝珠を台座から離す以外に出る方法はない。
「先に言っておくがlabyrinthの中の俺はメチャクチャ口が悪い、生きるために必死だと思ってあまり不快には思わないでくれ」
「っは、あんたも言い訳ってやつをするんだな」
「先に言ったけば、そんな言い方しなくてもいいだろって無駄な会話が減るからな」
「っけ!」
まぁこいつらがlabyrinthの過酷さを知れば大人しくなるだろ。
「行くぞ」
俺たちはlabyrinthの中に入った。
ーーーーlabyrinthーーーー
荒れ狂う吹雪、吹雪、吹雪。
まともに目を開けて前を見ることもできない豪雪。
「なんだこの天候は!前が見えねえ!」
labyrinthの洗礼とも言える環境による抵抗。
こいつらが、経験したのはただ戦闘をするだけのlabyrinth、初級の初級だ。
全員が立っているのがやっとの状況でリナは目の前に炎の壁を生成する。
が、風雪の勢いに負けてすぐに消える。
「氷の壁だ、早くしろ」
「は、はい」
再度リナが魔法を使い氷の壁を生成する。
壁は風を雪を完全にシャットアウトし、しばらくは待ちそうな感じだ。
「なんだよこれ…こんなの聞いてねえぞ!」
「事前に教えてくれるlabyrinthも無かろう」
「分かってるよ…んで、どっちに進めばいいんだ?360°何も見えねえ、とりあえず前に進むか?」
「それに従ってたら全員死ぬな、下だ」
全員が下を見る、ただ雪が積もっているようにしか見えないだろう。
「リナ、鍵を開けろ」
「フォーカスキーですか?」
俺が頷くと鍵を開ける魔法を使用する、床が光ると同時に別のエリアに飛ばされた。
ふむ、この手のlabyrinthか。
三日もあれば行けそうだな。
「な、なんだよこれ」
「ここなら…少しだけ時間をとってやれる、お前らが経験したlabyrinthは最奥にドラゴンがいる、要は戦闘能力が求められるlabyrinthだった。今回は違うかもな、知恵や経験、環境に適応する必要があるってことだ」
「そんなの聞いてねえよ!」
「お前らS1だろ?labyrinthをダンジョンレベルで考えてんのか?甘えんな馬鹿が」
「なんだと!?」
「俺たちがlabyrinthを攻略しなければ世界中の人たちが被害に遭う!お前は何のためにここまで上り詰めた!金か!?名誉か!?名声か!?富か!?」
「違う!俺たちは」
胸ぐらを掴み言葉を遮る。
「だとしたら今自分たちが何をするべきか考えろ!」
沈黙が続き…リオンはボソッと呟いた。
「指示を…出してくれ」
馬鹿でも理解したか。
「行くぞ、後ろだ」
前方の道ではなく、後方の道をユウカとリオンを先頭に歩く。
「どうして道がわかるんですか?」
「無限回廊くらいわかるだろ」
「理屈は…知っているつもりです」
「ここは無限回廊だ」
「…どうして無限回廊だってわかるの?」
「俺たちが降りてきた時の前方の壁と後方の壁が全く同じ、その時点で気づく」
「観察眼とやらが優れているんだな」
「お前らが咄嗟に行動を起こせるようにしている、道がわかるのはさっき大声を出した時に音の通りが僅かにブレた、その先が正しい道だ」
「道が…」
「左だ」
俺たちは先に進み続けた。
床に魔法陣が見える。
「次のエリアだな!」
「リナ、後ろに氷の壁3枚だ」
「え?」
突如後ろから大量の弓矢が飛んでくる。
リナの魔法は間に合わない、俺でも捌き切れないだろうな。
俺は前に出て飛んでくる弓矢の嵐を叩き落としていく。
1000本近く叩き落とした後に俺の後ろに氷の壁が張られる。
…正気か?
全ての弓矢を叩き落とした時、俺の体には10本近くの矢が刺さっていた。
流石に回避しきれなかった。
「大丈夫ですか!」
リナが駆け寄って来る。
「ヒール」
完治までに話でもするか。
「なぜすぐに氷の壁を作らなかった」
「ご、ごめんなさい」
「気が抜けている、呆けている、お前ら全員戻ったらS1をやめろ」
誰も言い返そうとはしなかった。
「ユウカ、リオン、お前らは何で先頭を歩いているんだ?」
「敵に対処するためだ」
「それは過程だ馬鹿が、目的を言え」
「…後衛を守るためだ」
「そうだ、直接戦闘に向いていない2人を守るためだ、俺が後ろに氷の壁を張れと言って遅れた、矢が飛んできた俺が対処し始め、氷の壁ができるまでの数十秒、何故後衛の後ろで隠れている?何故2人の前に出ない?俺が撃ち漏らしていたらどちらかが死んでいてもおかしくないんだぞ」
「…」
「お前らにはlabyrinthはまだ早かったな」
傷が完治する。
「ありがとう、行くぞ」
「待ってください!!」
リナが大きな声で制止する。
リオンに近づき、頬をビンタする。
その足でユウカ、リーシャの頬も叩いていく。
ユウカは笑ってリナの頬を叩く。
合計4発、ビンタの音が静寂のlabyrinthに響き渡った。
「先に進みましょう」
俺は少し嬉しくて少し、ほんの少しだけ口角が上がった。




