アランドルフ
俺たちが王都付近ついた時、外壁の周りは大量の魔物で溢れていた。
言葉で言い表すなら、外壁から1キロ近くが全て魔物で埋まっていた。
「あれ無理じゃない?」
「黒龍は…いないね、赤龍は飛んでる」
見たことのあるような姿をしている魔物が多く個々の討伐は何てこともないが数が多すぎる。
「もう陥落したか?」
「まだ人の魔力反応はありますが魔物が多すぎてうまく探知ができませんね…」
「囲まれる前に国民を国外に流したのは英断だな、パニックになってたらとっくに落とされてるだろ」
「いくつか強い反応もありますがこの数では…」
「援軍が来たことをアピールして中にいる人たちにはなんとか耐えてもらおう、2人は後ろからひたすら広範囲魔法をぶちかましてくれ、俺たちは前の方で寄ってくる魔物を処理していく」
「…おっけー」
「巻き込まれないでくださいね」
マヤとミヤを連れて前線に向かう。
リーシャの魔法にリナの支援魔法が加わり魔物の群れが一掃されていく。
「相変わらずすごい威力ね」
「パーティに加えて本当に良かったな、攻撃魔法も支援魔法も俺たちには縁がなかったからな」
「勧誘したのはあたし」
「あ、そ」
「いいから、くるよ」
攻撃を受けた魔物はリーシャとリナに向かって行動を開始する。
俺たちはそれらを止める壁だ。
「ワーウルフ?ワータイガー?」
「進化してるみたいだけど別にそこまで強くないね」
「問題はやっぱり数だな、こればっかりは2人に出来るだけ減らしてもらうしかないな」
少量ずつ減らす俺たちよりまとめて魔物を討伐できる2人にかかっている。
20発近く広範囲魔法を撃ったくらいでペースが落ちて来ていることに気づいた。
「マヤ、ミヤ、大丈夫か?」
「なんか体が重い感じがするけどまだまだ平気」
「ちょっと前線下げたいかも」
「大した事はないけど違和感があるんだよな、少し2人の様子を見てくるからもう少し頑張ってくれ」
一度前線を離れリナとリーシャと合流する。
「大丈夫…じゃ無さそうだな」
「リーシャはもう限界ですね」
「…ごめん、ここ魔素が濃すぎる」
魔素は自然界に存在する毒。
人体に取り込む事はできず、魔力抵抗力が低いと死に至ることもある。
人の魔力は時間と共に人体から溢れてる物だと言われており、外部から吸収することはできず枯渇すると休む以外に回復する方法はない。
魔素を魔力に変換できないかと数々の研究者が難題に挑み散っている。
マヤとミヤも感じていた違和感は魔素の影響みたいだ。
「魔素濃度はlabyrinthより強いですね、間違いなく異常です」
「リナは平気なのか?」
「平気ではないですけどリーシャよりは抵抗力があるので大丈夫です。」
「…後一回魔法を使ったらお荷物になるから、後よろしく」
「無理せず休んでくれ、助かったよ」
「魔力はまだ半分近く残ってるから全部蹴散らす、少し時間稼いで」
「わかった」
俺は前線に戻ってマヤとミヤに前線をゆっくり下げるように伝えた。
「魔素で動きが鈍るのは初めてだね」
「リーシャが動けなくなるほど濃度が濃いんだね?」
「どれだけ時間を稼げばいいか分からないけど2人を信じて待とう」
10分、20分、30分。
まだリーシャの魔法は完成しない。
そう思った時だった。
王都の外壁の周りに小さく燃える火の粉が円状に広がって見える見える
「あれってリーシャの魔法?」
「一度見たことあるけど…あの数…」
以前見た炎の魔法、その数がゆうに1000を超えている。
「どんな技術でどんな支援魔法をかければあそこまで制御できるんだ?」
全ての火の粉が一斉に弾け、爆音と共に魔物達を吹き飛ばした。
残っている魔物は王都を無視して全てこちらに向かって来ている
「2人はリナとリーシャを頼む、恐らく一歩も動けないくらいまで疲弊しているはずだ」
「おっけーじゃああとは任せるね」
「俺も働かないとな」
マヤとミヤは2人の元へ駆けつける。
俺は単独で魔物の群れを蹴散らしていく。
ファブニールで切り付けるだけで大体の魔物はほぼ即死する。
咆哮し威圧するも俺には効かない。
ひたすら魔物を切り付けながら前進する事で魔物の返り血を浴び全身が血まみれになってしまった。
「汚れるけど…さっさと討伐しないとな」
そうぼやき魔物の殲滅を続けている時、声が聞こえた。
「人間よ、何故を殺す」
声が聞こえるというより頭の中から声がする。
念話?これは魔法か?
王都の真上の雲の切れ間から光が差し込み、そこからゆっくりと龍が降りて来た。
光の中から降りて来た龍はまるで神の使い、神々しく光る鱗が終わりを告げる、そんなような気分にさせられた。
「…新種か」
到着した時にいた赤龍はリーシャの魔法で全て消し飛んだがまだ龍はいた。
そしてそれは黒龍ではなかった。
白、いや銀。
光が反射して見えるそれは銀だった。
「俺に言っているのか?」
「この場で1番力ある人間はお前だ、答えろ」
「お前達魔物と意思の疎通ができることに1番驚いているけど…そうだな…宿命か?」
「ほう」
「お前達魔物も人間を殺す、俺たち人間も魔物を殺す、どっちが先で後かなんて関係ない、生き残りをかけて戦っているに過ぎない」
「我らが安住の地を見つけた時、人間達は手出しせずほっといてくれるのか?」
「保証はできないな」
「我は安住の地を求めているだけだ、血を好んでいるわけではない、無駄な争いは虚しいだけだ」
まるで俺たちを相手にしていないような言い方をする。
事実勝てる気がしない、間違いなく戦闘になれば殺されるだろう。
銀龍はゆっくりと俺の前に降りてくる。
綺麗だ。
水晶玉を通して今の状況をオーリアの議員に見せておこう。
取り出した水晶玉を足元に置く。
「我と戦うか?」
「いや、ごめん被りたい」
念話ではなくしっかりと言葉を喋ったことに少し安堵した。
「あんたは魔物なのか?」
「人間から見れば同じだろうが我は最古の龍、ただ平穏でありたいだけだ」
「俺たちはlabyrinthから溢れ出る魔物の暴走を止めに来たんだ、戦闘の意思がないあんたとは戦いたくないが」
「人間が引き起こしたことを人間が止めるのか、不思議な生き物よ」
「…どういうことだ?」
「自分の目で確かめるといい、愚かな人間の子よ」
「待ってくれ、教えて欲しいことがたくさんある!」
飛び立とうとした銀龍を呼び止める。
「聞こう」
「あんたは安住の地を求めていると言いながらこの地にやってきた、人間と魔物が争っている場にだ、どう言う方法を取るかは分からないがここを安住の地にするつもりじゃないのか?」
「頭は悪くないようだな」
「あそこにはまだ人間が取り残されている、全員を連れてここを離れた後にあんたがここに住めばいい」
「ふむ」
「その後大陸の北は禁足地として人間が足を踏み入らないことを約束する、それでどうだろうか」
「良いだろう、人間がいなければ平和になる」
その言葉には引っ掛かりを覚えた。
人間がいなければ魔物は現れない?
人間がいなければlabyrinthは生まれない?
障害になり得るのは人間が原因だと言うことなのか?
…仮説にしか過ぎない。
「しかし問題がある」
「問題?」
「人間を連れてこの地を離れたとして、溢れ出る魔物はどうするつもりだ」
「あんたに任せるとはいかないな、この災害が人間の手で引き起こされたのなら始末をつけるのも人間であるべきだ」
「それで?」
「俺たちが必ず魔物を処理してこの地をあんたに明け渡そう」
「決まりだな、我は高みより貴様のことを待つとしよう」
その時マヤが走り込んできて銀龍に攻撃を仕掛けた。
俺は咄嗟に銀龍を庇いマヤの攻撃を受け止める。
「カイト!何してんの!?」
「絶対に勝てないからやめろ!話ができる相手だ!」
「そうなの?じゃあやめるわ」
「血の気の多い人間だな」
ミヤが気を失っているリナとリーシャを抱えて合流する。
「先の言葉、忘れるなよ」
そう言って銀龍は上空に舞い上がり雲の上へと消えていった。
「…王都に向かおう、そこで全部話す」
俺たちは一言を話さず、王都へと足を進めた。




