武器
地下に降りてグループ分けさせる。
「後衛の子達は私が面倒を見ておきますから前衛はお任せしますね」
「では順番に相手をしてもらって悪かった所を指摘していただきましょう」
シェンの言うことに素直に従い列を作って並ぶ。
すごい影響力だな。
順番に相手をしたがあまりに子供の遊びすぎる。
使っている武器の特性もまるで理解していない。
「ちょっとまて…武器の指導は今まで誰がやって来たんだ」
全員が講師を指差す。
おいもう戦犯だろこいつ。
ここまで冒険者のレベルが低いのは平和だからなのか?
labyrinthも難易度が高くないと聞くし。
「事情が変わったから全員集合」
全員を集めて基礎から話すことにした。
「武器の特性をまるで理解していない、ただ振り回したりしているだけじゃいつまで経っても強くなれないぞ」
相手がいないとうまく説明できないし実践で見せるのが1番いいと思うんだが…
「リナ、ちょっと来てくれ!」
「はい?」
「相手してくれ」
「こ、ここでですか!?」
「あぁ」
「そんな…心の準備が…」
なんて勘違いもなく。
「相手してくれ」
「何のですか?」
「武器の特性を説明したい」
「耐えるだけでいいなら大丈夫です」
「十分だ」
最初に短剣を手に持つ。
「短剣はリーチが短い代わりに小回りがきく、相手の懐に入って急所を狙うのが普通だ」
素早くリナの死角、背に周り後ろから首元に刃を立てるがリナは見ずとも杖で弾く。
弾かれた反動を利用して続け様に脇の下目掛けて刃を向けるが一瞬で氷の壁に遮られる。
「とまあこんな感じだ、支援魔法を勉強してる君たちもどんなふうに対応しているか見て勉強するといい」
リナが立ち回りを見て理解できる生徒がどれだけいるか、だが。可能であることを見せるのはいいことだろう。
リナなら後から説明もしそうだし。
「相手にもよるがこれに体術を加えるとさらに攻撃の幅が広がる、すべての武器に言えることだから体を鍛えることは忘れないように」
「次は片手用の剣だな、片手剣の最大のメリットはなんだ?」
質問を講師に投げかける。
「盾を持つことができることです」
「盾を持つことで片手剣は攻守共にバランスが取れる代わりに体術が使いずらい、攻撃魔法が使える後衛や攻めが強い前衛がいる時はかなり役に立つ、1人だと相手の手数に押されることがあるから注意だ」
リナが飛ばす小さな氷の刃を盾を防ぎ合間を縫って剣で斬りかかるがまたしても氷の壁で塞がれる。
弾かれた後に盾を捨て、両手で持ち壁を切り裂く。
「両手待ちは力が入る代わりに盾の防御が出来ないからな、両手持ち用の剣だともっと大きくて重い、動作も鈍くなる、リーチも変われば距離感に慣れるまで苦労するからあまりお勧めはしない」
「次は槍だな、槍はリーチが長いが切断には向いていなくて基本的には突きがメインになる、安全に手傷をおわせることが出来るが一突の威力がないため連続での突きが重要になる」
リナが張った氷の壁を突く。
徐々に速度を上げていき、連続突きで氷を削っていき人型の氷像を完成させた。
「扱いになれれば繊細な動きもできるようになる、急所を狙うのも可能だろう」
「斧は専門外だ、悪いな」
斧を扱っている奴もいたが中途半端にしか教えられないからやめておこう。
「あの…弓は後衛にはいるのでしょうか」
「弓は後衛だが高ランクの冒険者に弓はいない、理由はわかるか?」
「動いている相手に当てるのが難しいからですか?」
「それは問題じゃない、器用貧乏なんだ。攻撃魔法より威力が出るわけじゃないし前衛のように立ち回ることも難しい、ヘイトを買うこともできるがだったら片手剣でいい、耐えるのと避けるのだと前者の方が簡単だからな、もちろん操弓術なんてものもあるが、簡単に習得できるものじゃない」
俺は弓を引き絞り奥にある的と違う方向に矢を放つ。
放たれた矢は大きく弧を描いて的の中心に命中する。
「仲間に当てないように出来るだけの技術の習得は数年かかると思った方がいい、各々武器の特性をしっかり理解してどうやって戦うべきか考えるように」
リナは支援魔法のタイミングや使い方について説明を始めたようだ、俺も教えるか。
「闇雲に剣を振るな、ちゃんと当たることを意識して最小限に動くんだ」
「槍は振り回すな、どんな構えにすることで連続で突きを繰り出せるか考えろ」
もう一巡回して全員の動きに変化が見られた。
フェイントも雑でバレバレ、体術もぐだぐだだけど攻撃に取り入れようと考えているのがわかる。
そのうち形になるだろうから今はこれでいい。
「あとは自主練だ、目の前に敵がいると想像して戦い方を考えるように」
生徒達は返事をして訓練に励む。
「いやはや、カイトさんは教えるのが上手いですね」
「そもそも講師を変えた方がいいと思うけどな」
「講師も不足しておりまして…時々教えてくださると助かります」
「まぁ気が向けば引き受けるよ」
「カイトさんは普段何の武器を使っているのですか?」
「俺か?俺は短剣だな」
収納袋から一本の短剣を取り出す。
「…その禍々しい短剣は…」
「黒龍の牙から作り上げた短剣、名前は【ファブニール】」
一年かけて加工してもらったこの短剣は傷つけた相手の傷は簡単には塞がらない、むしろ徐々に傷が広がるといった効果を持っている。
「他の武器も扱いには慣れているご様子でしたが」
「手札が多いといざという時役に立つと思って一通りはマスターしたつもりなんだ」
「素晴らしいですね」
「カイトさん、お待たせしました」
「もういいのか?」
「理屈は伝えましたので後は実戦に慣れることが大切ですね」
「リナさんもありがとうございます、報酬はリナさんのギルドカードに入金させてもらいますね」
「え、俺の分も?」
「カイトさんはこの街のギルドカードの登録をしておりませんので、時間がある時にお願いします」
「普段何もしてないから仕方ないな」
「今日はどうでした?」
悪気はしなかった。
感謝もされるし冒険者の質が上がれば有事の際は任せることができるようになるかもしれない。
ほどほどに稼いでそろそろ家庭を持ってもいいのかもしれない。
「そうだな…仕事はともかく8人を養うって考えるとやらなきゃいけないって気持ちになるよ」
「8人って…そうですね、頑張りましょう!」
平穏な日々は長くは続かない。
2ヶ月後、北の国【アランドルフ】が壊滅状態になり、救援の要請が入ることになる。
原因は放置したlabyrinthの暴走だった。




