国外追放
陛下に謁見を求めるとあっさり許可が出た。
むしろ出ない訳がない。
謁見に並ぶ貴族達を横切る。
「気分いいな」
「少し申し訳ないですけどね」
「最優先だろ、命にも関わるんだし」
扉を開けると玉座に座る陛下がいた。
「して、結果は」
「立ち会った時点で我々では勝てないと即判断致しました、力量の差は歴然。失礼のない様に何とかコミュニケーションを取ろうとし、病を治す薬を確保いたしました」
「おぉ!それを飲めば助かるのだな!?」
「そう聞いております」
俺は小瓶を陛下に渡すとすぐに蓋を開けて全て飲み干し、安堵した表情を見せた。
「これで余は助かるのだな…」
「貴重な体験を感謝します」
「待て」
立ち去ろうとした時、呼び止められる。
「宝具はどうした」
「エルフは排他的で生活に干渉されたくないらしく、宝具を渡せば薬を渡すと交換条件を提示してきました、陛下の御命と天秤にかけることもないと思い二つ返事で渡しましたが」
「ふむ…わかった」
「では」
「待て」
再度呼び止められる。
「黄昏の瞳だけで不十分な戦力であるとするならば、S級を全員投入して勝てると思うか」
「見ただけで勝てると言うビジョンが一切湧きませんでした。未知な存在のため敵対避ける方が良いと判断しました」
「勝てるかどうかを聞いている!」
語気が荒くなる。
「…陛下は私たち黄昏の瞳の戦力をどのくらいだと思っておいでですか?」
「一師団では釣り合うまい、2、3師団ぐらいか?」
「はっきり申し上げますが私たちだけでこの国の軍を殲滅する事が可能、それだけの実力があります」
「それは話を盛っておるわ、それならばお主達はいつでも国を武力で乗っ取れると言っている様なものではないか」
「いつでも可能ですよ、国の運営ができない、争いが嫌い、不満を感じていない、だから何もしていません」
少し不機嫌な顔で俺を見る。
知るか。
「陛下はエルフを従えたいのですか?」
「無論だ!強者が弱者を守るのは当然のこと、国の民のためになら何だってしよう!」
死が身近に迫って考えが変わったのか、近しい立場ではないから分からないが今の王の考えは好きじゃない。
穏健派の王だったから揉めたくはなかった。
戦力として手足の様に使われるのはごめんだ、軍と冒険者の威をかって自分を強者だと思っている国を裏で支え、守るつもりはない。
「黄昏の瞳に命ずる、S級を引き連れてエルフの集落を滅ぼし、捕縛し連れて帰るのだ!」
「お断りします」
「…何?」
もう言葉遣いを気にするのもやめた。
「断ると言ったんだ」
「これは王命だぞ!」
「冒険者は自由だからな、付き合う義務もない」
「民を思う気持ちはないのか!」
「だから成し遂げることが難しいと言われてるlabyrinthに率先して挑んでるだろ、それが俺たちS級の責任だ、あんたらの責任を俺たちに押し付けるな」
「ぬぅ…お主らはどう思う!」
後ろで黙って話を聞いている黄昏メンバーに語りかける。
俺を説得できなくて話を逸らしたか。
「ん?あんたにはあんたの考えがあるのかもしれないけど難しい話はさっぱりわかんねぇや、俺は俺のやりたい様にやる、ひとまずあんたが嫌いだからリーダーの意見に従うわ」
アシュルとミヤは同調して頷く。
こいつらは、何も考えていない組だな。
リナとリーシャも同調して頷く。
こっちは考えてる組だな。
「そもそもふんぞり返って命令してるの気に食わないのよね、監視までつけてビクビクして馬鹿みたい、挙げ句の果てにエルフ達を奴隷に?何様よ」
王様だ。
「貴様らの言い分は分かった…お前達7人は国外追放とする!」
「7人でいいのか?俺たちに賛同する奴らもいると思うぞ」
「王命は絶対だ!従えないやつは全員追放処分でかまわん!」
馬鹿だねえ。
「なら俺たちは国外追放になったから別の国に行くわ、とりあえず東の国にでも行くかぁ」
「別の国のlabyrinthってどんな感じなんでしょう」
「この国が1番危険度高いっておっさん言ってたからなぁ…なんとかなるだろ」
「とりあえず挨拶回り行って国出るか」
「今すぐだ!今すぐ国を出ていけ!」
空気が凍り付く。
近衛兵達が震え出し持っている槍が床を小刻みに叩く音が響く。
本気の殺意。
カトラスが静かにブチギレていた。
「カトラス、やめとけ」
「…」
「余計な口を開かずに黙ってろ、じゃなきゃせっかくの助かった命を落とすことになる」
俺たちは王宮を後にしてギルドへ向かった。
「私もブルッちゃいました…」
「カトラスが本気で怒る時は無言で圧出すからなぁ、というか2人とも良かったのか?」
「国外追放ですか?別に構いませんよ、私もリーシャも孤児ですし王様があんなに横柄だとは知りませんでしたから」
「私も…平和主義って聞いてたけど昨日も今日も印象が全然違ったからびっくりした」
「死を間近に変わっちまったんだろ」
ギルドに着くなりおっさんに報告した。
「俺たち国外追放になったから出てくわ」
「…は?」
「いや、だから国外追放」
「なんだ?その面白くない冗談は」
「本当でも嘘でも面白いと思うが、本当なんだなこれが」
「お前ら何やらかしたら国外追放になるんだよ!どうすんだよlabyrinthは!」
「他のS級に行かせればいいだろ、俺たちは国外追放だからな!」
「じゃあなんで悠々とここにいるんだよ!」
「うるせえなぁ黙ってろって脅したから」
「…あ、そ」
「国が不安定になってそのケツを拭かせようとする、俺たちはお断りなのさ」
「冒険者は基本自由だからな…本来国の権力が及ばない機関なんだが…」
「俺たちはすぐに国を出るつもりだ、その前におっさんには挨拶しとかないとって思ってな」
「西か?東か?」
「東の予定だな」
「ちょっと待ってろ」
おっさんは手紙を書き綺麗な封筒にしまった。
頭をかきながらそれを差し出し俺は受け取った。
「あっちのギルマスに宛てた手紙だ、それを渡しせば便宜をはかってくれるだろうよ」
「さんきゅーおっさん、元気でな」
「どうしてもやばいことになったら国外追放とか知らん、呼び戻すからな」
「その時はその時で、またな」
他のS級の奴らにも挨拶をしてこうと思ったがあいにくと誰とも会うことができなかった。
俺たちは屋敷に戻った。
「かくかくしかじか」
「ふむ…短い間でしたが楽しゅうございました」
「悪いなじいさん、荷物をまとめたら俺たちは出ていくから」
「いえ、皆様の無事をお祈りしております」
「話がある」
カトラスがじいさんの前に立つ。
一言も話さずにじいさんの目をまっすぐ見続ける。
「いいでしょう、あの子次第ですが」
「話してくる」
カトラスは駆け足で走っていった。
「兄さん本気なんですね」
「やっと来た春だもの、手放せないでしょ」
「青春ですね!」
「俺たちそんなに若くはないぞ…」
カトラスとメルが一緒に降りてきた。
「メルを俺の妻に向かい入れる」
「国外追放くらってるけどどうすんだ?」
「私も一緒に行きます」
メルははっきりと断言した。
「いいのか?」
「私の野望にまた一歩近づいたので問題ありません」
野望ねぇ…。
そのうち公になるだろう、今は何も言うまい。
「いいのかじいさん」
「あの子も子供ではありませんから、生きる道は自由にさせてあげたいのです」
「メルは国外追放じゃないからな、いつでも会える」
「そうですなぁ」
じいさんは心なしか嬉しそうだ。
俺たちは荷物をまとめて馬車に乗り、東の国【オーリア】を目指す。
エルフにもう一度会いにいくのはそれからでいいだろう。




