驚愕
翌日宝具を使うとワープした。
結界の内側に入るどころか集落の入り口に立っている。チラホラ見えるエルフ達が俺たちに気づいて近くにやってくる。
「これは…どう言う状況だ?」
「思っていたのと違う…」
エルフ達はどんどん集まってきて俺たちを見る目は異邦人に興味津々の目だ。
ちょっとあんた話に行きなさいよーなんて会話をしている様な感じもする
「歓迎されているのか?」
「分からないが…話せる人がいればいいな」
「ーーーーーーーーーーーー」
奥から古代語?を話す婆さんが出てきた。
エルフの老婆?いくつなんだこの人は。
「ーーーーーーーーー」
「どうだリーシャ、わかるか?」
「んと…多分…疑問と人…お前らは誰だ、だと思う」
「俺はカイトだ、カイト、みんな仲間だ、ギルドの冒険者をやっている」
身振り手振りでなんとか、説明しようとするが老婆には怪しむ目で見られている。
完全に遮断されたコミュニティが他のコミュニティと接触すると、まぁこんなもんだろう。
「会話ができないとやっぱりコミュニケーションは、取れないか…」
老婆が何もない空間に向かって話しかけている。
そこに何かあるのかと思って見ているが何も見えない、そう思ったその時、羽の生えた小人が現れた。
「面倒くさいなぁ…あたし妖精のランって言うんだけど、バーバラに通訳してくれって頼まれちゃった。あんたたち何者?」
エルフや精霊だけじゃなくて妖精という種族もここにいるのか?
初めて聞く種族だ。
「俺たちは人間だ、人間の王の命を受けてここにきた」
「どうやってここに入った?」
「人間の王に渡された宝具でここまで来た、王の病を治す方法を探している」
婆さんの眉間に皺が寄るのが見えた。
やはりマズイか?
「ちょっと待ってなさい」
そう言って老婆は1人のエルフの男性に何か命令すると走ってどこかへ行った。
すぐに戻ってきた彼が持っていたのは小さな小瓶。
「この中にどんな病でも治す薬が入っている、これとその宝具と交換だ、あたしらは平和に暮らしている、人間とは関わりたくないのさ」
薬の対価で宝具を渡せばもうエルフに会うという機会は無くなるだろうが、背に腹は変えられない。
「わかった」
小瓶を受け取り宝具を渡した。
宝具を受け取った老婆はその宝具を見つめて悲しむ様な、懐かしむ様な顔をしていた。
「製作者のダークエルフが気になりますか?」
「生きているならそれで良い、あの子は…アリスは私の血縁だからね…」
自分の血縁をエルフの里から追放したのか。
身を切る思いだったんだろうな。
「元気にしてるかい?」
「先日初めてお会いしたので彼女のことは何も知らないのです、申し訳ない」
「そうかい…」
「ひとつだけ、教えて欲しい事があります」
「馴れ合うつもりはないよ、一つだけだ」
一つで十分だ。
「1人以外の記憶を消す、もしくは1人の記憶を改竄する魔法をご存知ですか?教えて欲しいのはあるか、ないか、だけで結構です」
老婆は目を瞑り答えない。
つまりこの反応は…
「記憶を改竄する魔法は存在するよ、詳細は教えないけど儀式が必要な大規模な古代魔法、禁術さね」
存在する、それだけで十分だ。
誰かが俺に古代魔法で記憶を改竄してアリシアの記憶を植え付けた。
何のために?
なぜ俺に?
だれが?
疑問は残るがここで悩んでも仕方ない。
「これで答えが出たな、理由は不明だが記憶が改竄されてアリシアの記憶が植え付けられたって所だろう、古代魔法となればできるのはそのアリスっていうダークエルフくらいじゃないのか?」
かも知れないな…。
「今…なんて言ったんだい」
「ん?」
「アリシアって言ったのかい?」
「あぁピンクの髪をしたスラっとした女性だが…」
老婆は俯き少し悩んだ後、宝具を顔の前で握りしめ魔法を唱え、俺に差し出した。
「この宝具を使った時の場所に戻る魔法と、後一度だけここに転移できる魔法を上書きしたからもう一度訪ねておいで」
「よろしいのですか?」
「少し気になる事があってね、早く薬を届けておやり」
老婆に感謝し宝具を使うと屋敷の噴水前にワープした。
宝具はまだ光を放っていて使用が可能な事が確認できた。
「不思議な体験でしたね」
「エルフって美男美女しかいないのか?誰の顔を見ても整ったやつしかいなかったぞ」
「…最低」
「兄さん…呆れます」
「俺そんな変なこと言ったか?」
「さっさと薬を渡して婆さんに会いに行くぞ、何か…わかりそうだからな」




