死人
ダンジョンはある意味labyrinthよりも謎に包まれている。
labyrinthは初代勇者が攻略し、破壊しなければ世界に禍が訪れると伝えられてきた。
御伽話として、吟遊詩人の歌として、書物として。
ならダンジョンは一体なんだ?
何のために存在しているのかは誰も知らない。
labyrinthが破壊されてから出現したそれは放置しても特に問題はなかった。
人々は興味を抱き、探索するようになった。
ある者はトレジャーハントとして。
ある者は己の腕試しとして。
ダンジョンには様々な形がある、地下洞窟、塔、屋敷、迷路。
labyrinthとの明確な違いは魔物の強さと環境に左右されない事、それだけだ。
ダンジョンにも格があり、FからAまである。
因みにlabyrinthはSしかない。
ギルドランク、パーティランクがF.E.D.C.B.A.Sで分かれているのは入場の目になっている。
「さあ今回やって参りましたのはA級から嫌われているダンジョン、通称【腐食の牢獄】でございます、魔物は死霊系しか現れないとの報告が、A級諸君はだらしがないですね〜」
カトラス君彼女が出来てご機嫌な所、解説ありがとう。
それぞれの力量もあるからだらしないとは思わないけど情報もろくに上がってきていないのは少しどうかとは思う。
それはさておき、いつもなら1人2人でダンジョンを攻略するが今日は連携を確かめるために全員できている…はずだった。
「アシュルはどこ行った」
「工房が出来たからそっちに専念したいとかで…来てません」
「…マヤは?」
「お姉ちゃんはサボり」
なんで言い出しっぺが居ねえんだよ。
「帰ったら2人ともお説教だな」
「お姉ちゃんは喜びますよ?」
「…じゃあ三日間口聞いてやんねぇ」
「き、効くー」
リナとリーシャはガチガチに緊張しているようだ。
「いつも通りやったら通りにやればいいさ、誰も責めねえよ?、」
「いえ、死霊が苦手なんです…実態がないタイプは気味が悪くて…」
「同じく」
「俺も人形の魔物は苦手だからな、誰だって苦手なものはあるさ」
「カイト、道案内頼むぞ」
「はいはい、前衛は2人に任せたからな」
ダンジョンは地下洞窟のようだ。
辺りは腐った倒木やら、動物の骨などが見受けられる。
リナが夜目魔法を使い、暗視能力を手に入れた俺たちはダンジョンに入った。
「こんな魔法があるんだな、いつも暗闇は光魔法で照らしてもらってたから助かるぜ、物陰からいきなり出てくると焦る時があるんだよな」
光で照らされるような明るさではないが暗くとも先が見通せるのはありがたい。
っと…早速魔物か、お手並み拝見と行こう。
現れた魔物はスケルトン、骸骨の魔物だ。
ボロボロの衣服を纏ってはいるが身につけている剣や装飾品はしっかりしている、さすがA級だな。
「ホーリーランス」
リーシャが光の槍を一本骸骨に飛ばしたが身を捩って避けられ、避けた所を2本目の光の槍が突き刺さる。
「二重詠唱、しかも遅延か」
「A級の魔物ならそのくらいしないと」
それでも骸骨はまだ消滅していない。
「爪が甘いな、まだ倒せちゃいないぜ?」
「それ、爆ぜる」
光の槍は爆発して、スケルトンはバラバラに吹き飛んだ。
「おぉ?」
「私の付与魔法で強化しました」
「なるほどな、後衛陣の連携はできてるわけだ、じゃあ俺達に合わせてみな、行くぞミヤ」
「命令しないで」
2人はさらに奥にいる魔物の群れに突撃した。
すかさずリナは弱化魔法をかける
「ウィークエネミー!」
スケルトンの動きが少し鈍る。
「こりゃいい、楽に倒せそうだな」
「柔らかいね」
2人は一撃でスケルトンの群れを粉砕した。
「全然余裕そうだな、このままどんどん行くぜ?」
2人は先に駆け出した。
「右、右、左、左で一階層降りる、一旦そこまでだ」
「オーケー!」
2人がどんどん先に進んでいくためリナとリーシャは走って二人に着いて行く。
だごカトラスとマヤはスケルトンをモノともせずにどんどん進んでいく。
「追いついた頃には敵が倒されてる」
「私たちが合わせないとダメですね…ファストムーブ!」
2人の足が早くなった。
俺にもかけてくれればいいのに、まぁ追いつけるからいいんどけどさ。
分かれ道を曲がった時、通り様に逆の通路を氷の壁で塞いで行く。
初歩的だがその配慮が出来るくらいにはリナには余裕がありそうだ。
「取り敢えず一層は終わりか?」
サクサク進んでいき二層に降りる階段まで辿り着いた。
「前衛が強すぎて丁寧なクリアリングが必要ないとこんなに早いんですね」
「戦利品とかは集めないの?」
「端金だしな、とはいえカイトが拾ってるだろ」
「拾ってはいるけどこれは端金じゃないな、A級なら使っててもおかしくない装飾品だ」
「あの速度で拾ってたんだ…」
「カイトはお金にはうるさい」
「金がかかるんだよ、お前らは」
とはいえこんな序盤の魔物がこれだけの装飾品を身につけているのは考えにくい。
この程度の敵にA級がやられるとも思えない。
「…奥に大物がいてそいつが冒険者を狩ってるな、その犠牲者が魔物化してる」
「魔物化なんて初めて聞くけど」
「俺も初めて見るケースだがそう考えないとこの量はおかしい」
魔物がアイテムをドロップすることは多くはない、大体は消滅するだけだ。
「欲に駆られて回収しながら奥進んでやられたって所じゃないか?」
「力不足だな」
「相手の力量くらい測れなくて当たり前、最初から本気で叩き潰せばいい」
「今の所着いて行くのがやっとです…」
「この程度なら着いてこれるだけだ十分さ、少しペースを落とすから二層からは後方支援を頼む」
そう言って階段を降り先に進む。
ペースを落としたとはいえ常に駆け足状態で先に進んで行く。
スケルトンは姿を表さず魔物は魔核生物がメインになった。
スライムやゴーレムといった核のある魔物、剣やナイフ、矢といった斬突に耐性のある魔物だ。
カトラスとの剣もマヤのトンファーも打撃系だから相性はいい。
不自由なく二層目も突破する。
「全然余裕だな」
「カトラスじゃないけどこの程度の魔物にやられるのだらしない」
そう言った次の瞬間、マヤは大きく後ろに飛び下がった。
その様子を見たカトラスも真剣に構えを取る。
一瞬で空気が凍りつく。
「避けきれなかった」
マヤの顔に一筋の切り傷が付いている。
その数は青緑色をしていた。
リナは直ぐに察しアンチドートをかける。
解毒魔法だ。
「リーシャ、撃ち落としてくれ」
俺は1つの袋を前方に投げ、それを光の矢で貫くと塗料が飛び散った。
塗料は何もないはずの空間に付着し、浮いているように見える。
そいつらは姿を現した。
黒い蠍、数にして20体はいる。
そしてまた姿を消した、塗料ごと。
「リナは解毒を最優先、ミヤは後方警戒、リーシャは広範囲攻撃の準備、カトラスはヘイト管理」
「ハウリング!」
カトラスは魔物の注意が自分に集まるスキルを使う。
生命体にしか効果が無いため死霊の対処は俺がするしか無い。
「ミヤ、どうだ?」
「左半分動かないし見えない」
三層目の蠍軍団。
初見殺しというべきか。A級がやられたのも納得だ。
暗がりに明かりや暗視で安心しきっている所に見えない敵、意図してか偶然か。
「リーシャ、先が崩れても構わないから全部蹴散らしてくれ」
詠唱中のためコクンとだけ頷く。
おれは目を閉じて耳を澄ませる。
近くにスカルトンの音はしない、であれば援護に回ろう。
マントの下に準備しておいた細く、固く、アシュルの付与のかかった針を間髪入れずに蠍がいた方に投げる。
弾かれることなく刺さるが大した効果はなさそうだ、それでも投げ続ける。
「炎の怒りを思い知れ、エクスバーン」
小さな青い炎球が杖から弾き出され、ゆっくりと進む。
「カトラス!下がれ!巻き込まれるぞ!」
炎球の小ささを見て大丈夫だろうとタカを括らず、ガタイに似合わない跳躍で後ろに下がる。
「大地よ!」
咄嗟にカトラスが土の壁を立ち上げ炎球と俺たちの間を土壁で遮断した。
直後爆発音が鳴り響き、振動で洞窟が揺れる。
「崩落はしない程度には抑えた、はず」
「あの小ささでこの威力かよ、魔法ってのは恐ろしいねぇ」
リーシャのように攻撃魔法に特化した魔術師や、リナのように支援に特化した治癒師と組む経験は少ない。
アシュルは付与魔法に特化しつつ万能的に魔法が使えるだけで潜在能力だけなら2人の方が上だ。
マヤは2人の才能を見抜いていたのかもしれない。
「倒せているとは思うが一度休憩を取るぞ、土壁はそのままだ」
「詠唱なしでこんな堅固な壁…少し悔しい」
「俺は堅いだけが取り柄みたいなもんだからな!それよりミヤはどうだ?」
「毒は取り除いたので直に動けるようになります」
「本調子じゃ無いけど動ける、あの虫絶対根絶やしにする」
へらず口がたたけるのであれば大丈夫だろう。
一度休憩を取ることにした。




