第6話 桜色の舞踏
私の戦闘は、誰もが想像する「殺し屋」のそれとは少し違う。
銃は使わない。爆弾も仕掛けない。私が使うのは、この手に馴染んだナイフ。そして、私自身の身体だけ。
私は、敵の懐に飛び込むことを好む。相手の呼吸、筋肉の動き、視線の先…すべてを読み取り、相手の意図を先回りする。彼らが拳を振り上げようとする一瞬、私は既にその拳の下をくぐり抜け、相手の死角にいる。私の桜色のふわふわな髪が、その動きに合わせてふわりと舞い、私の視界を遮ることも、敵を油断させる最高の武器になる。
私の戦闘は、優雅な舞踏に近い。
敵が私に攻撃を仕掛けるたび、私はそれをかわし、受け流し、そして反撃する。敵が必死に私を捉えようとするその瞬間、私は彼らの喉や心臓を狙う。それは、ダンスのステップを踏むような、流れるような動き。相手が放つ一発の銃弾。私は、その弾道さえも予測して、身体を傾ける。腹部を掠めた弾丸の熱と、皮膚が焼けるような痛みが、私の心に最高の興奮をもたらす。
「ああ、もっと、もっとだ…!」
心の中で叫ぶ。
私にとって、戦闘は生きていることを実感する瞬間だ。敵が私に与える痛みは、私という存在を証明してくれる。血が滲み、肉が裂け、骨が軋む。その一つ一つの感覚が、私を現実へと引き戻してくれる。
時には、わざと敵の攻撃を受けることもある。それは、私の心を揺さぶるための、大切な儀式だ。顔に切り傷を負い、肩を殴られ、体がボロボロになる。敵は私を「弱い」と誤解するだろう。だが、その痛みこそが、私の戦闘力を最大限に引き出すトリガーになる。
痛みに快楽を感じる私の戦闘スタイルは、相手にとっては理解不能な恐怖だろう。私が血まみれの笑顔で彼らを挑発するたび、彼らの顔は恐怖に歪む。その顔を見るのが、私は何よりも好きだ。
そして、すべてが終わった時。私の身体は満身創痍で、桜色の髪は、飛び散った血や泥でぐちゃぐちゃになっている。だが、私の心は満たされている。
桜色の殺し屋。それが、私だ。