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桜色の殺し屋  作者: と近
5/8

第5話  始まりは、ただの暇つぶし

路地裏での一件から数日後。


私の顔や体の傷は、少しずつ癒えてきた。亮くんは、毎日私のことを気遣ってくれた。彼は、何も聞かなかった。ただ、そっと寄り添ってくれる。


それが、私にとっては何よりも嬉しかった。


土曜日の午後。二人で、誰もいない河原の土手道を歩いていた。穏やかな風が吹いて、私の桜色のふわふわな髪を揺らす。


「真白…」


亮くんが、不意に足を止めた。私も、彼に合わせて立ち止まる。


「…話してくれないか?」


彼の声は、静かだった。


「どうして、真白が、あんなことをしてるのか」


私は、空を見上げる。雲一つない、真っ青な空。


「きっかけ、か」


私は、少しだけ笑った。


「…大した理由じゃないんだ」


私は、目を閉じる。


高校に入学した頃、私は何もかもが完璧だった。勉強も、運動も、容姿も。周りの子たちは、私を優等生として、特別な目で見ていた。


「…それが、すごく退屈だったんだ」


私は、正直に話す。


「なんでもできる。誰も私に勝てない。毎日が、同じことの繰り返し。…どうすれば、この退屈な日常を壊せるんだろうって、ずっと考えてた」


そんな時、偶然、裏社会の掲示板を見つけた。そこに書かれていたのは、殺人の依頼。


「最初は、ただの暇つぶしだった。もし、こんなことをしたら、私の世界はどうなるんだろうって」


私は、初めての依頼を、軽い気持ちで引き受けた。


「初めて、人を殺した時…血が、すごく綺麗だと思った。それに、痛みを感じた時、生まれて初めて、生きてるって実感したんだ」


亮くんは、何も言わずに、ただ私の話を聞いていた。


「それからかな。私が、桜色の殺し屋になったのは。このふわふわの髪の色も、血を連想させるから、気に入ってる」


私は、亮くんに、そう言って微笑んだ。


彼は、私の頭に、そっと手を伸ばす。


「…桜色の、ふわふわの髪」


亮くんの指が、私の髪に触れる。その手は、優しくて、とても温かかった。


「真白の髪、すごく綺麗だ。…それに、真白が、そうやって正直に話してくれて、すごく嬉しい」


彼の言葉に、私は、胸が熱くなるのを感じた。


「…ありがとう」


私は、彼の手に、そっと自分の手を重ねた。


彼は、私の殺し屋としての過去を、理解してはくれないだろう。だが、彼は私を否定しなかった。それが、何よりも救いだった。

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