第25話 桜色の愛と使命/エピローグ
痛みを取り戻してから、私は、亮くんや両親との時間の尊さを、改めて深く噛みしめるようになった。
彼らはもう、私のことを過度に心配しない。私が戦闘で傷を負い、血まみれになって家に帰っても、母は何も言わずに温かい食事を用意してくれる。その手際の良さには、もはや熟練の域に達した理解が滲んでいる。父は、私の頬の傷に触れながら、そっとその労いの気持ちを伝えてくれる。その沈黙は、雄弁な愛を物語っていた。
そして、亮くんは、いつも私の隣にいてくれる。彼の存在そのものが、私の安息の地だった。
学校の授業中。
私の教科書には、亮くんの字で、いつものように小さな落書きが書かれている。それは、周りの誰にも気づかれない、私たちだけの秘密の交信だ。
『ボス、今日も忙しい?』
私は、小さく笑った。その落書きは、彼が私の二つの顔を、すべて受け入れ、愛してくれている証だった。彼は、私の使命を、一つの日常として捉えてくれている。
放課後、私は組織のアジトに向かい、そして、夜の闇へと消えていく。私の身体は、常に戦闘で酷使され、限界ギリギリの状態が続いている。
私の戦いは、もう、終わりがない。裏社会の混沌が続く限り、私を狙う者は絶えないだろう。
だが、私は、もう、孤独ではない。
私の戦いは、私一人のものではない。そこには、私を信じ、見守ってくれる人々の愛が宿っている。
この体にある傷は、愛しい人たちを守り抜いた勲章。その痛みは、私がこの世界にしっかりと生きていることの確かな証。
私は、愛する人たちを守るために、これからも、桜色の殺し屋として戦い続ける。
それが、私の選んだ、永遠の使命。
そして、その使命は、私に、最高の幸せを与えてくれた。この戦いが続く限り、彼らの平和は守られる。その事実は、私にとって何にも代えがたい喜びだった。
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エピローグ
数年後。
私は、相変わらず桜色の殺し屋として、裏社会で頂点に立ち続けている。私の名声は、もはや神話に近いものとなっている。
だが、私の日常は、以前にも増して穏やかなものだ。
大学では、亮くんと同じ学部に通い、共に未来の夢を語り合う。他愛のない会話、二人で食べる学食の味。それらのすべてが、私をこの世界に繋ぎ止めてくれる。
実家に帰れば、父と母が、私の帰りを温かく迎えてくれる。
「真白、おかえりなさい。お風呂を沸かしておいたわよ」
「ただいま、お母さん」
そして、私の身体には、無数の新たな傷跡が増えていく。その傷は、もはや私の身体の一部となり、私の歴史を刻んでいる。
だが、私はもう、その傷を隠さない。
私の隣には、いつも亮くんがいて、私のすべてを理解し、愛してくれる。彼は、私の強さも弱さも、すべてを包み込んでくれる。
私の背中には、両親の深く温かい眼差しがある。彼らの無言の信頼が、私を支える柱だ。
私は、これからも、「桜色の殺し屋」として、この終わりのない戦いを生き続ける。
愛する人たちに、安らぎと笑顔という平和を届けるために。
それが、私の、最高のハッピーエンドだから。




