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桜色の殺し屋  作者: と近
19/25

第19話  ボスの日常

組織のボスになった私の日常は、以前と比べて大きく変わった。


朝、学校へ行く前に、私専属の運転手が黒塗りの車で家まで迎えに来てくれる。車の中では、昨夜の組織の動向や、競合組織の情報が書かれた分厚いレポートに目を通す。


「ボス、昨夜、東の組織が我々の縄張りに手を出してきました。いかがいたしますか」


運転手は、私の顔色をうかがうように尋ねる。


「…そう。じゃあ、今日の放課後に行くから、彼らのアジトの場所を教えて」


私がそう言うと、運転手は、少しだけ驚いた顔をした後、すぐに「承知いたしました」と深く頭を下げた。


彼らは、私がまだ女子高生であることを知っている。だが、私の言葉に、誰も反論しない。私の桜色のふわふわな髪と、愛らしい制服姿の裏に、どれだけの暴力と狂気が潜んでいるか、彼らはよく知っているからだ。


学校では、私はいつもの「優等生の真白ちゃん」に戻る。


授業中、亮くんが、私の隣で教科書に落書きしてくる。


『真白、最近なんかすごいね』


私は、小さく笑った。


休み時間。亮くんと二人で、屋上でお弁当を食べていた。


「真白、最近なんか、すごい車で学校に来るけど、あれどうしたの?」


亮くんが、面白そうに尋ねる。


「ああ、あれね」


私は、水筒のお茶を一口飲む。


「私、組織のボスになっちゃったんだ」


私の言葉に、亮くんは、一瞬、目を丸くした後、大声で笑い出した。


「ははは! 真白、何言ってるの! ボスって!」


彼の笑い声が、屋上に響く。


「いや、マジで」


私が真剣な顔をすると、亮くんは、笑いを止めて、私の顔をじっと見つめる。


「…あ、本当?」


「うん」


私が頷くと、彼は、少しだけ考え込んだ後、再び笑い始めた。


「真白、ボスとか、似合わないよ! だって、真白、可愛いじゃん」


「可愛いボス、ってことで、いいんじゃないかな」


私は、彼の言葉に、少しだけ微笑んだ。亮くんは、私が裏社会のボスになったことを、面白おかしい冗談として受け入れている。その軽さが、私には何よりも心地よかった。


夜の顔。


私の前に、組織の幹部たちが集まる。彼らは、皆、屈強な男たちで、私を畏怖の眼差しで見つめている。


「我々は、あなたの指示を仰ぎます」


彼らが、一斉に頭を下げた。


「…じゃあ、今後のことだけど」


私は、彼らに、今後の組織の方針を静かに告げる。私の声は、いつも通りの、優しい声。だが、彼らは、その声に、絶対的な服従と、そして、畏敬の念を感じているようだった。


そして、その日の夜。私は、東の組織のアジトに乗り込み、たった一人で彼らを制圧した。


ボロボロになり、血まみれになった私を見て、部下たちは、さらに私への忠誠を誓った。


「…我々のボスは、やはり、この方だ」


彼らの視線は、熱狂に満ちている。


ボスになった私の日常は、昼は愛らしい優等生、夜は血にまみれた暴力の女王。この二つの顔を使い分けながら、私は、愛する人々の平穏を守るために、戦い続ける。

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