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桜色の殺し屋  作者: と近
17/25

第17話  桜色の秘密訓練

ショッピングモールでのテロから、数日が経った。


私の身体は、未だに満身創痍だ。腹部を撃ち抜かれた傷は、まだ完全に塞がっておらず、全身の打撲痕は、見るも無残な色をしていた。


だが、私の心は、この上ないほどの安堵と喜びに満たされていた。


亮くんと、両親。


彼らは、私が命を賭して守った、私の全てだ。


彼らの無事を確認した私は、今、回復に努めなければならない。次の依頼がいつ来るか分からない。そして、いつ、私の日常を脅かす敵が現れるか分からないからだ。


私は、誰もいない休日の山にいた。


深緑の木々が生い茂る森の中。私は、制服ではなく、動きやすいジャージ姿で、一人、戦闘訓練を始めた。


最初は、身体が動かない。


腹部の傷が、ズキズキと痛む。肺に空気が入るたびに、胸が締め付けられるようだった。私は、数歩走っただけで、息が上がり、その場に膝をついた。


「…くそっ」


悔しさが、込み上げてくる。


こんな状態では、愛する人たちを守ることなどできない。


私は、再び立ち上がった。


私は、ナイフを構え、木を相手に練習を始める。素早く、流れるような動き。だが、身体が、私の意志についてこない。ナイフを振るうたびに、腕の筋肉が悲鳴をあげる。


痛み。


それは、ボロボロの身体をさらに苦しめるもの。だが、同時に、私がまだ生きていることの証でもあった。


私は、その痛みを、しっかりと受け入れた。


私は、木から木へと飛び移り、身体を酷使する。枝が、私の皮膚を切り裂く。地面に倒れ込むたびに、身体中の傷が、私にその存在を訴えかけてくる。


だが、その痛みが、私の心を奮い立たせる。


大丈夫。


私は、心の中でそう呟く。


私は、亮くんに誓った。彼を守ると。


私は、両親に誓った。もう、彼らを不安にさせないと。


私は、愛する人たちを守るために、ここにいる。


私は、この身体が動かなくなるまで、訓練を続けた。


夕方になり、私は、満身創痍で山を下りた。


私の顔は、泥と血で汚れ、ジャージは、破れ、血まみれになっていた。


だが、私の心は、満たされていた。


この傷は、私が、また強くなった証。


そして、この傷は、私が愛する人たちを守るために、戦った証。


私は、この傷を誇りに思う。

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