第17話 桜色の秘密訓練
ショッピングモールでのテロから、数日が経った。
私の身体は、未だに満身創痍だ。腹部を撃ち抜かれた傷は、まだ完全に塞がっておらず、全身の打撲痕は、見るも無残な色をしていた。
だが、私の心は、この上ないほどの安堵と喜びに満たされていた。
亮くんと、両親。
彼らは、私が命を賭して守った、私の全てだ。
彼らの無事を確認した私は、今、回復に努めなければならない。次の依頼がいつ来るか分からない。そして、いつ、私の日常を脅かす敵が現れるか分からないからだ。
私は、誰もいない休日の山にいた。
深緑の木々が生い茂る森の中。私は、制服ではなく、動きやすいジャージ姿で、一人、戦闘訓練を始めた。
最初は、身体が動かない。
腹部の傷が、ズキズキと痛む。肺に空気が入るたびに、胸が締め付けられるようだった。私は、数歩走っただけで、息が上がり、その場に膝をついた。
「…くそっ」
悔しさが、込み上げてくる。
こんな状態では、愛する人たちを守ることなどできない。
私は、再び立ち上がった。
私は、ナイフを構え、木を相手に練習を始める。素早く、流れるような動き。だが、身体が、私の意志についてこない。ナイフを振るうたびに、腕の筋肉が悲鳴をあげる。
痛み。
それは、ボロボロの身体をさらに苦しめるもの。だが、同時に、私がまだ生きていることの証でもあった。
私は、その痛みを、しっかりと受け入れた。
私は、木から木へと飛び移り、身体を酷使する。枝が、私の皮膚を切り裂く。地面に倒れ込むたびに、身体中の傷が、私にその存在を訴えかけてくる。
だが、その痛みが、私の心を奮い立たせる。
大丈夫。
私は、心の中でそう呟く。
私は、亮くんに誓った。彼を守ると。
私は、両親に誓った。もう、彼らを不安にさせないと。
私は、愛する人たちを守るために、ここにいる。
私は、この身体が動かなくなるまで、訓練を続けた。
夕方になり、私は、満身創痍で山を下りた。
私の顔は、泥と血で汚れ、ジャージは、破れ、血まみれになっていた。
だが、私の心は、満たされていた。
この傷は、私が、また強くなった証。
そして、この傷は、私が愛する人たちを守るために、戦った証。
私は、この傷を誇りに思う。