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桜色の殺し屋  作者: と近
14/25

第14話  終わりの始まり

その日は、私の誕生日だった。


私は、亮くんと二人で、ショッピングモールに来ていた。彼は、私の手を握り、少し照れたように微笑んでいる。


「真白、誕生日おめでとう」


「ありがとう」


私は、彼の温かさに、胸が満たされていくのを感じていた。


だが、その平穏な時間は、突然、切り裂かれた。


ドォォン…!


轟音と共に、モールの一角で爆発が起こる。悲鳴が響き渡り、人々はパニックに陥った。


「真白、こっちだ!」


亮くんが、私の手を引き、慌てて非常口へと走ろうとする。


「…待って」


私は、彼の腕を掴み、その場に立ち止まる。私の耳には、悲鳴に混じって、銃声が聞こえていた。


これは、ただの事故じゃない。


テロリストだ。


「真白、早く!」


亮くんが、私を焦るように見る。だが、私は動けない。


ふと、遠くの通路に、見慣れた二つの顔が見えた。


父と、母。


彼らは、人混みの中で、お互いの手を強く握りしめ、怯えた顔で私たちを見ていた。


私の頭の中で、すべての思考が停止した。


なぜ、二人がここに?


私の中に、焦燥が広がっていく。彼らは、私の誕生日プレゼントを探しに来たのだろうか。


「真白…!」


亮くんの声が、私を現実へと引き戻す。


テロリストたちが、銃を乱射しながら、人々を追い詰めていく。


この状況、私がどうにかするしかない。


「亮くん、ここにいて」


私は、そう言うと、持っていたナイフを構え、テロリストたちのいる方向へと駆け出した。


私の大切な人たちを、絶対に傷つけさせない。


一人、また一人と、テロリストを無力化していく。彼らが私に放つ銃弾を、私は、もう痛みとして感じる余裕さえなかった。


ただ、彼らが両親と亮くんに近づくのを阻むことだけを考えていた。


「真白…!」


父が、私の名前を叫んだ。私は、彼らに向かって、力強く頷いて見せた。


「大丈夫」


アイコンタクトで、そう伝えた。


だが、私の身体は、すでに限界を超えている。


無理な動きで、全身の傷口が開き、激しい痛みが襲う。それでも、私は立ち止まることはできない。


テロリストの一人が、父と母に向かって、銃を構えた。


「やめろ…!」


私は、絶叫し、その男に向かって突進した。


男が、引き金を引く。


パンッ…!


乾いた銃声が響き、私の腹部に、熱い痛みが走った。


「真白…!」


亮くんの声が、遠くで聞こえる。


私は、その男を倒し、両親と亮くんの方を見た。


彼らは、悲痛な表情が浮かべているが、店員の誘導で安全な場所へと避難しようとしていた。


ああ…よかった。


その光景を見て、私の身体から、力が抜けていく。


私の意識は、ゆっくりと暗闇へと沈んでいった。

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