第11話 桜色の名声
私の異名、「桜色の殺し屋」は、今や裏社会では知らない者はいない。
初めて依頼を引き受けた頃は、ただの暇つぶしだった。しかし、私の戦闘スタイルが話題になり、いつしか私は裏社会で注目の的となっていった。
依頼料は、以前の比ではない。私の報酬は跳ね上がり、依頼はひっきりなしに舞い込んでくる。
だが、名声は、私に新たな試練を与えた。
私の強さに挑戦しようと、腕自慢の殺し屋たちが次々と私に挑んでくるようになったのだ。
「来たか」
深夜の廃ビル。私は、待ち構えていたかのように、現れた男たちを見つめる。
「桜色の殺し屋、お前を倒して名を上げる」
男の一人が、自信満々にそう言った。
「…ふふ、どうぞご自由に」
私は、口元に笑みを浮かべる。私の体は、この挑戦を待ち望んでいた。
一人の男が、私に拳を繰り出す。私は、その拳を正面から受け止めた。
グシャ…!
鈍い音と共に、私の腕の骨が軋む。激痛が走る。
「最高…!」
痛みに、私の心は歓喜に震える。私は、男の拳を掴んだまま、彼の身体を引き寄せ、ナイフを自分の腹部に突き刺した。
「な、なんだ…!」
男は、私の行動に驚きと恐怖を浮かべる。
「もっと、もっとだよ!」
私は、男の背後から、もう一人の男がナイフを振りかざしているのを感じた。
私は、わざとそれを避けない。
ザシュッ…!
鋭い痛みが、私の背中を走る。制服のシャツが裂け、血が滲む。
ああ、この感覚…!
私は、この痛みが、私の存在を確かめてくれるのだと知っていた。私は、背後の男に振り返ると、彼の足を払い、その場に倒れさせた。
「桜色の殺し屋」は、痛みを感じることを楽しむ狂人。それが、彼らが私につけた新たな評価だった。
ボロボロになり、血と泥にまみれになる。それが、私の生きがいだ。
敵が、私に傷を負わせるたび、私は彼らに心からの感謝を捧げる。
「ありがとう、君のおかげで、私は生きている」
私の言葉に、男たちの顔は恐怖に歪む。
私は、彼らの恐怖を煽るように、血のついたナイフを構え、再び彼らに向かっていく。
この名声は、私を、より深く、危険な戦いへと引きずり込んでいく。