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「・・・・っ!?」
世界が反転し、地面から体が空へと投げ出される浮遊感で一気に意識が浮上した
「・・・・ハァ、ハァ、ハァ・・」
今のは・・・・夢?
そのわりには嫌に鮮明に耳に残った
甘えてんじゃねえぞ
糞餓鬼が
まるで目の前で怒鳴られたかのようにはっきりと聞こえた
今だ暴れる心臓と荒れた呼吸をなんとか落ち着かせるため目をつぶり、深く深呼吸を繰り返す。
大丈夫、落ち着いて。
――ジャラ。
頬を流れる冷や汗を拭おうと腕を持ち上げると手首に嵌められた手錠に気付いた
周りを見渡せば見慣れたいつもの独房。
ああ、儀式は終わったんだ
今日も、痛かったなあ
なんで、私ばっかりこんな目に会うんだろ
きっと明日も明後日も明明後日だって私が死ぬまで、この儀式が続くのだろう
容易に想像できる自分の未来にもう涙はでなくて、
自分を支えてくれる過去を知らなくて、今の現在をどう生きればいいのかなんてわからない
もう、いっそのこと・・・・
「・・・・死にたいよ」
「そんなこと言うもんじゃない」
ポツンと漏れた本音は闇に融けることなく拾われた
「・・・・あなた、だれ?」
声が聞こえたほうを見ると独房の外に40代半ばくらいの大柄な男が立っていたこの独房には儀式が行われる時に自分を連れ出す以外人がいたことがないので人がいるというのが異様な光景に映った
「儂は医者だ。名前はラルド。あんたの気分がすぐれないから視てやってくれとリンドウ博士に頼まれてな」
と言ってもこんな所に閉じ込められてりゃ気分が悪いのも当たり前だな。
ふざけた奴だよ
はき捨てるように紡がれた言葉には同情と苛立ちの色がみえた。




