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「お待ちしておりましたよ。我らが天使様」
反射的に、肩が震えた。
いつもと同じ決まった挨拶
身体中にまきつき身動きを封じるようなこの男の声が聞こえた時、私は目的地についたことを知る。
「天使様」
この男は、いや、ここにいる人間は決まって私を天使様と、そう呼ぶ。
それが私の名前ではなく神話などにでてくる小さな羽を背中につけた神の使いの子どもだということは知っている。
きっと私の俗称だろう。
多分。
天使様などと呼ぶくせに酷い扱い方だ。
「ああ、天使様。そんなに震えないで。今、目隠しを外しますね」
この男の細く、骨張った大きな手が私に触れる。
まるで壊れものを扱うような、恋人に触れるような、優しい手つきで私に触れる。
体が石になったように動かない。
呼吸をするのさえ忘れる。冷や汗が体中を伝う。
シュルッ――。
目隠しが外された。
怖い。恐い。
目を開けるのが怖い。
今日は何をされるのか怖いでも暗闇の中にずっといるのも怖い。
何よりも、あの男を視界にいれるのが恐くて堪らない
「天使様。どうしました?天使様、目を開けてください。僕を見てくださいよ」
優しく諭すように私の頬に触れる、手が、人間と同じように温かい、体温が、気持ち悪くて堪らない。
「ねえ、天使様」
逆らえない。
拒めない。
ゆっくりと、瞼を開く。
我先に、と視界に飛び込んでくる光が痛い。
こんな光なら、欲しくなかったのに。
誰か、誰か、助けて
助けてください。
助けを呼ぶ名前さえ、私は持っていないんです。




