第2話 症例記録B:共鳴する皮膚
聖明大学 医学部附属病院 皮膚科
診療録
患者ID:2025-DRM-0341
初診日:2025年4月23日
記載日:2025年4月30日
担当医:皮膚科 講師 桑田 花子
患者情報
28歳 女性 小学校教諭
主訴
「入浴後、皮膚に地図のような模様が現れる」
現病歴
1週間前(4月中旬)より、入浴後に全身の皮膚に奇妙な模様が出現するようになった。模様は約2時間持続し、その後自然に消失する。痒みや痛みなどの自覚症状はない。
模様は日によって異なるが、いずれも複雑な線状パターンを呈し、患者自身は「地形図みたい」と表現。出現部位は体幹部を中心に、四肢にも及ぶ。
既往歴
アトピー性皮膚炎(小児期、現在は寛解)
家族歴
特記事項なし
身体所見
入浴後30分の状態で観察:
・体幹部から四肢にかけて、褐色の線状模様が出現
・模様は血管走行とは無関係
・触診にて、模様に沿って微細な振動(約50-60Hz)を触知
・圧迫により模様は消失せず
検査所見
1.皮膚生検
模様部位より生検施行
・H&E染色:表皮基底層に褐色色素の沈着
・特殊染色:メラニン染色陰性、ヘモジデリン染色陰性
・電子顕微鏡所見
色素粒子が正六角形を基本とした幾何学的配列を形成した。個々の粒子は直径約50nmで、結晶様構造を呈する。既知の生体内色素とは一致せず。
2.サーモグラフィ検査
・模様部分:周囲皮膚より0.5℃低温
・模様出現前後で体温分布に変化あり
3.皮膚インピーダンス測定
・模様部分で電気抵抗の有意な低下
・導電性が通常皮膚の約3倍
4.経時的写真記録
7日間の模様を写真記録。模様は日々変化するが、ある種の連続性を持つ。画像解析により、模様が特定の地理的パターンに類似することが判明。ただし、具体的な地域との一致は確認できず。
診断
原因不明の一過性色素沈着症
物理的要因による皮膚反応の可能性
治療経過
抗ヒスタミン薬、ステロイド外用薬ともに無効。症状は入浴に関連して出現するため、入浴制限を指示するも、患者は「入浴しないと体が重くなる」と訴え、指示に従わず。
考察
既知の皮膚疾患では説明不能な病態。色素の性質、幾何学的配列、物理的特性(振動、温度低下、導電性)すべてが異常。環境要因、特に水質との関連を疑うが、自宅の水質検査では異常なし。
追記(手書き)
患者は「模様が西を指している気がする」と述べる。心理的要因か?
西方との関連性を調査中。