表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/17

第1話 症例記録A:水恐怖症の逆説

聖明大学 医学部附属病院 精神神経科

診療録


患者ID:2025-PSY-0892

初診日:2025年4月21日

記載日:2025年4月28日

担当医:精神神経科 准教授 佐藤 明彦


患者情報

32歳 男性 会社員(IT企業勤務)


主訴

「水と一体化したい」


現病歴

2週間前(4月上旬)より、水に対する異常な執着行動が出現。家族からの情報によると、入浴時間が徐々に延長し、現在は10時間以上浴槽に浸かり続ける。会社では、ウォーターサーバーに直接口をつけて水を飲む、手洗い場で長時間手を洗い続ける等の行動が目撃されている。


本人は「体の中の水と外の水を一つにしなければならない」と繰り返し説明。論理的な会話は可能であり、自身の行動が異常であることは認識しているが、「そうしなければならない」という強迫的な思考に支配されている。


既往歴

特記事項なし


家族歴

精神疾患の家族歴なし


身体所見

身長172cm、体重58kg(2週間で5kg減少)

皮膚:長時間の入浴による浸軟(しんなん)あり

その他の理学的所見に異常なし


検査所見


1.血液検査

・一般血液検査:軽度の脱水傾向

・電解質:正常範囲内

・特記事項:赤血球形態異常

光学顕微鏡下で赤血球の約15%に異常形態を認める。通常の円盤状ではなく、六角形の結晶様構造を呈する。血液内科にコンサルトするも、既知の血液疾患には該当せず。電子顕微鏡での詳細観察を予定。


2.頭部MRI検査

・T2強調画像:左側頭葉内側部に高信号域を認める

・特記事項:高信号域の形状異常

通常の病変とは異なり、高信号域が同心円状の水紋様パターンを呈する。放射線科の見解では、アーチファクトの可能性も含め原因不明。造影剤使用でも同様の所見である。


3.脳波検査

・安静時:正常範囲内

・水音刺激時:側頭葉でのθ波の異常増幅


診断

強迫性障害の疑い

器質的要因の精査中(側頭葉病変)

赤血球形態異常(原因不明)


治療経過

SSRIによる薬物療法を開始するも、症状の改善なし。認知行動療法も試みたが、本人の「水との一体化」への確信は揺るがず。


考察

通常の精神疾患として説明困難な病態。MRI所見、血液所見ともに既知の疾患では説明がつかない。症状の特異性と検査異常の関連性について、さらなる精査が必要。


追記(手書き)

患者は面談中、繰り返し「西の方から呼ばれている」と述べる。妄想の内容か?

他の類似症例の報告を確認中。

西方との関連性を調査中。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ