表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東京の西に関する、いわゆる怪異の断章  作者: 藍沢 理
第11章 検査

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/57

第3話 内部文書

資料11-7:電子メール(漏洩データ)


From:k.kirino@██.go.jp

To:[REDACTED]@██.go.jp

Date:2025/05/21 03:45

Subject:【至急】定点観測ブイよりシグナル補足


西部湖定点観測ブイより、コード731に合致する高エネルギー反応を補足。

発生源は新宿区。座標特定急げ。

今回は『器』を逃がすな。

陸自の担当部署へ情報共有。至急。


追記:

前回の「ライター」「プリーチャー」の失敗を繰り返すな。

対象の確保は最優先事項。ただし、物理的接触は避けること。

詳細は会って直接説明する。


桐野




資料11-8:陸上自衛隊情報保全隊 状況報告書(抜粋)


文書番号:JGSDF-ISC-SITREP-20250521-01

機密区分:特定秘密

件名:新規顕現事象「エディタ」に関する初期プロファイリング


1.対象 コードネーム:エディタ:

高林 泰三(32歳)

株式会社蒼玄(そうげん)書房 文芸第三編集部

身長:172cm 体重:68kg 血液型:A型

既往歴:特記事項なし

家族構成:独身、両親は地方在住


2.状況:

対象は、先行事象「ライター」(朝霧雫)「プリーチャー」(金剛菩提)等とは異なり、能動的な情報発信を行わず、情報の「受信」「処理」「再構築」に特化したタイプと推察される。


2-1.行動パターンの変化

・5月15日以降、通勤経路が西方向へ偏向する傾向

・昼食を摂らなくなり、水分摂取量が通常の3倍に増加

・編集作業中、キーボードを使用せずに「入力」する様子が確認される

・睡眠時間が1日2時間程度に減少するも、疲労の兆候なし


2-2.身体的変化

・体温が平均35.2℃(通常より1.4℃低下)

・脈拍が17秒周期で変動(通常は一定)

・瞳孔の対光反射に異常(光源に関係なく拡大と縮小を繰り返す)

・皮膚に微細な幾何学模様が断続的に出現(特に前腕部)


3.特異点:

・通常の感染者と異なり、精神的崩壊の兆候が見られない

・むしろ認知能力の「拡張」が確認される

・対象の脳波パターンは、湖底からの信号と同期している

・周囲の電子機器に影響を与える(時計の狂い、画面のノイズ等)


4.関連事象との比較:


4-1.「ライター」との相違点

・ライター:情報を「物語」として再構成し、外部発信

・エディタ:情報を「編集」し、内部で蓄積し処理

・ライター:急速な精神崩壊の後、何者かによる物理的破壊

・エディタ:精神は保たれ、むしろ「進化」の兆候


4-2.「プリーチャー」との相違点

・プリーチャー:宗教的解釈を通じて情報を「布教」

・エディタ:論理的処理を通じて情報を「構造化」

・プリーチャー:多数への拡散を志向

・エディタ:自己完結的な処理を志向


5.措置:

対象は現在、提携医療機関による精神医学的アプローチ下での観察段階に移行。物理的接触は次フェーズまで待機。対象の通信記録は全てミラーリング中。


5-1.監視体制

・24時間体制での遠隔監視(赤外線カメラ、音響センサー)

・生体情報のリアルタイムモニタリング(協力医療機関経由)

・通信傍受(固定電話、携帯電話、インターネット)

・行動予測AI「OROCHI-7」による次期行動の推定


5-2.介入準備

・第31普通科連隊第3中隊を即応体制で待機

・特殊鎮圧装備(音響兵器、電磁パルス発生装置)を配備

・生物化学防護車両を3km圏内に配置

・緊急時の避難計画を策定(半径5km圏内の住民対象)


6.懸念事項:

対象が「最終段階」に移行した場合の影響範囲は予測不能。

早期の介入を検討すべきだが、前例を鑑みると慎重な対応が必要。


6-1.最悪シナリオ

・対象の脳が完全に「変換」され、人類には理解不能な存在となる

・東京都心部での大規模な「感染」拡大

・電子ネットワークを通じた全国規模での情報汚染

・湖底の「本体」との完全な同期による未知の現象


6-2.対応オプション

・A案:即時確保・隔離(成功率30%、リスク高)

・B案:継続監視・データ収集(現状維持、リスク累積)

・C案:「巫女」との接触を仲介(成功率不明、制御不能)

・D案:最終手段の行使(成功率90%、倫理的問題大)


7.追記(5月21日04:00):

湖底定点観測ブイより、対象の脳波と完全に同期した信号を確認。

もはや対象は、単なる「感染者」ではない。

湖底の存在にとっての「端末」、あるいは「アバター」となりつつある。


我々は、人類史上初めて、人間以外の知性体との「接触」を目撃しているのかもしれない。




資料11-9:地方自治体・広報誌(PDFスキャン画像)


[画像:奥多摩町広報誌「おくたま」2025年5月号より抜粋]


町民の皆様へのお知らせ


最近、奥多摩湖周辺で原因不明の地鳴りや、夜間に湖面が発光したという報告が複数寄せられています。また、湖の渇水期でもないのに、湖底の泥が巻き上げられ水が濁る現象が確認されています。専門家による調査が完了するまで、夜間はむやみに湖に近づかないよう、ご協力をお願いいたします。


なお、5月に入ってから、湖畔で体調不良を訴える方が増えています。めまい、耳鳴り、幻聴などの症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診してください。


また、湖周辺で不審な人物や異常な現象を目撃された場合は、下記までご連絡ください。


奥多摩町役場 総務課

電話:0428-XX-XXXX


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ