第4話 神事「鹿島踊り」に関する民俗学調査ノート
武蔵野文理大学 人文学部 民俗学研究室
調査者:久坂部遼一(准教授)
調査期間:2025年4月~5月
鹿島踊りの概要
小河内村に伝承されていた「鹿島踊り」は、表向きは豊作祈願の神事として知られているが、その実態は極めて特異な要素を含んでいる。
特徴:
1.踊り手は必ず男性で、女装して踊る
2.毎年旧暦7月7日の深夜に実施
3.村の中央にあった古社(現在は湖底)の境内で実施
4.踊りは7番まであり、必ず逆順(7番から1番)で踊る
歌詞の分析
現存する歌詞の断片:
七ツ目の門を閉ざせや(七番)
赤き瞳の主よ眠れ、千代に八千代に
六道の辻に戻れや(六番)
迷い子たちよ道を違えるな、水底の声に耳を貸すな
五つ星追いて沈めや(五番)
天の印を水に映して、逆しまの世界に封じよ
[四番は資料散逸により不明]
三つ数えて振り向くな(三番)
背の目が開けば[判読不能]
二つの世の境目に(二番)
生者と死者の[ページ欠損]
一つ身を水に委ねん(一番)
我らが礎となりて、永劫に蓋とならん
注目すべきは、これが「封印」の所作と酷似している点である。特に「門を閉ざす」「赤き瞳の主」「水底の声」といった表現は、何か強大な存在を封じ込める呪術的意味合いが強い。
踊りの型の分析
保存されていた8ミリフィルムを解析したところ、踊りの型が通常の民俗舞踊とは大きく異なることが判明した。
1.円を描くように踊るが、必ず反時計回り
2.7回転するごとに、地面に両手をつく所作
3.最後は全員が中央を向いて土下座の姿勢で固まる
これらの所作は、古代の「鎮魂」や「封印」の儀式に見られるパターンと一致する。
聞き取り調査
生存する元村民(94歳)への聞き取り:
「あれは踊りじゃない。抑えるためのものじゃ。何を?それは言えん。言ったら、また始まる」




