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東京の西に関する、いわゆる怪異の断章  作者: 藍沢 理
第8章 歴史の暗部

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第3話 現場監督の日記

ダム建設工事 現場監督 山崎 鉄蔵


日記の抜粋

(昭和26年4月~昭和27年3月)


昭和26年7月15日

本日、第3工区にて転落事故発生。犠牲者は田中組の若い衆、森本君(23)。目撃者の証言が奇妙だ。「何かに引っ張られるように、自分から飛び込んでいった」と。現場の岩肌を調査したところ、巨大な爪痕のようなものを発見。熊にしては大きすぎる。幅が30センチはある。



昭和26年9月3日

夜間作業中、複数の作業員が「赤ん坊の泣き声」を聞いたと報告。音源は川底の方向。この山奥に赤ん坊などいるはずがない。疲労による幻聴として処理。



昭和26年10月22日

また転落事故。今度は2名同時。午後3時17分、コンクリート打設作業中の小泉(28)と小林(25)が、足場から15メートル下の岩場へ転落。

奇妙なことに、二人は手を繋いだ状態で発見された。生存者、小林の証言「小泉さんの目が真っ赤に光って、『一緒に行こう』と。断ったら、もの凄い力で引っ張られた。川底に、巨大な目が開いた」。明らかに錯乱状態。

しかし、事故現場の岩に、前回と同じ爪痕。それも真新しい。爪痕の間隔を測定したところ、推定される「手」の大きさは2メートルを超える。



昭和26年12月1日

夜間、単独で現場を見回り中、奇妙な体験をした。突然、足元の地面が脈打つような感覚。地下深くで何か巨大なものが鼓動しているような振動。気のせいだと思いたい。



昭和27年2月14日

本日までの殉職者、31名に達する。通常の土木工事としては異常な数字だ。特に、旧神社跡地付近での事故が集中している。偶然とは思えない。



昭和27年3月10日

これが最後の記録になるだろう。やっとわかった。我々は、ただダムを造っているのではない。何か巨大なものに「蓋」をしている。それが何なのか、知らない方が幸せかもしれない。

明日、私は東京本社への転属願いを出す。もう限界だ。


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