第2話 供述書
警視庁捜査一課
供述調書
供述者:高林泰三(32歳 編集者)
聴取日時:2025年5月16日14:00-19:30
以下、供述内容:
朝霧雫さんは、私が担当していた作家です。
ホラー小説を専門に書く、将来有望な方でした。
昨年デビューして、すぐに新人賞を受賞しました。
最近、次回作の参考資料として、
西部で起きている怪異現象の記録を提供していました。
失踪事件の新聞記事、医療記録、民俗学的な資料など。
彼女は熱心に研究していました。
「これは本物だ」と何度も言っていました。
私は、ただの創作の材料だと思っていたのですが。
今日の昼、連絡したんですが、電話は繋がらない、メッセージは既読にならない。
それで、自宅を訪問しました。
マンションは駒込にある単身者向けの物件です。
管理人さんに事情を説明し、合鍵で開けてもらいました。
そしたら、朝霧さんはリビングの中央で…
(泣き崩れて中断)
申し訳ありません。続けます。
腰のあたりで切断されていました。
上半身と下半身が離れた場所に。
切り口に「七」という文字が。
いえ、文字の形に肉が並んでいたんです。
部屋の壁一面に、私が渡した資料が貼られていました。
原稿用紙は全部黒く塗りつぶされて。
彼女の写真の目がくり抜かれて。
私は、彼女にあの資料を渡したことを
深く後悔しています。
もし私が渡さなければ、彼女は…
(以下、泣いて聴取続行不能)




