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東京の西に関する、いわゆる怪異の断章  作者: 藍沢 理
第7章 連鎖する死

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第1話 発見

 朝霧雫は几帳面な性格だった。毎週金曜日の午後三時、必ず原稿の進捗を報告してくる。今回の締切りまであと一週間。最も重要な時期に、彼女が音信不通になるはずがない。


 ドアが開いた瞬間、濃密な死臭が二人を包んだ。


 玄関から直接見えるフローリングのリビング。その中央に、朝霧雫がいた。


 いや、朝霧雫だったものがあった。


 腰の位置で真っ二つに輪切りにされた体。上半身と下半身が一メートルほど離れて転がっている。切断面は不自然なほど滑らかで、巨大カミソリで一瞬にして切り離されたような断面。内臓が露出しているにも関わらず、出血は少ない。


 奇妙なことに、上半身は窓の方を向き、下半身は玄関を向いていた。死の瞬間、体が別々の方向へ逃げようとしたかのような配置。


 管理人が嘔吐しながら廊下で膝をつく。高林は金縛りにあったように動けない。視線が切断面に吸い寄せられる。そこに、何かが書かれていることに気づいた。


 血で描かれた文字。いや、違う。切断面の肉そのものが、文字の形に整形されていた。


『七』


 高林の手から携帯電話が滑り落ちた。震える手で拾い上げ、110番を押す。指が思うように動かない。


「警察で……殺人です……駒込1丁目の……」


 電話口で住所を告げながら、高林は部屋の異常さに気づき始めた。テーブルの上に原稿用紙が整然と並べられている。最新作の原稿だ。だが、すべてのページが真っ黒に塗りつぶされていた。


 壁には、高林が渡した資料のコピーが無数に貼られている。西部の湖の地図、失踪者のリスト、古い新聞記事。それらが螺旋状に配置され、中心には朝霧自身の著者近影写真。


 写真の目の部分だけが、鋭利な刃物でくり抜かれていた。


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