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東京の西に関する、いわゆる怪異の断章  作者: 藍沢 理
第5章 国家機関の介入

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第4話 情報統制

「申し訳ないが、これ以上君に協力する時間はない」


 桐野の言葉は、有無を言わせない響きを持っていた。


 蓮見教授は身を乗り出した。


「しかし、私の教え子が命を懸けて――」

「分かっている」


 桐野は手で制した。


「失踪者はすでに、公表の5倍を超えている。パニックを避けるため、我々は必死なんだ」


 桐野は立ち上がり、窓の外を眺める。穏やかな午後の霞が関。日本。その平穏を守ることが彼の仕事だ。


「報道管制も限界に近い。地方紙には怪死事件の記事が載り始めている。ネットでは様々な憶測が飛び交っている。もし真実が露見したら――」

「社会不安どころではないな」

「インバウンドへの影響、不動産価値の暴落、そして何より、説明不可能な現象への恐怖がもたらす混乱。我々はそれを防がねばならない」


 桐野は振り返った。その顔には、国交省トップとしての責任の重さが刻まれていた。


「すまない、壮介。君の気持ちは分かる。だが、今の私にできることは限られている」


 蓮見は立ち上がりかけたが、桐野が制した。


「ただし――」


 桐野は、一枚の名刺を差し出した。


「彼なら、力になってくれるかもしれない」


 名刺には「陸上自衛隊 特殊作戦群 伊吹(いぶき)健人(けんと) 三等陸佐」とあった。


「自衛隊?」

「災害派遣の名目で、すでに現地周辺に展開している。表向きは土砂崩れへの警戒だが、実際は『W-7』への対処部隊だ」

「自衛隊が動いているのか」

「正確には、ある特殊な任務を帯びた部隊だ。詳しくは彼に聞いてくれ」


 桐野は握手を求めた。


「気を付けろ、壮介。君の教え子が証明したように、あれは人間の理解を超えた何かだ」


 桐野の手は、微かに震えていた。


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