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東京の西に関する、いわゆる怪異の断章  作者: 藍沢 理
第5章 国家機関の介入

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第2話 同窓の再会

 ランプの灯りが、古い手帳のページを照らしている。大学時代から使い続けている革表紙の手帳。ページをめくる指が、一つの名前で止まった。


 桐野圭吾。


 東大法学部の同期。卒業後は建設省――現在の国土交通省に入省し、順調に出世していると風の便りに聞いていた。もう30年以上会っていない。


 だが、この件を相談できる相手となると、彼しか思い浮かばない。


 黒電話の受話器を取り上げる。今どき珍しい回転ダイヤル式。研究室に置いているのは、デジタル機器を嫌う彼の性分ゆえだ。


 ダイヤルを回す。一回転ごとに、ジリジリという機械音。この音でなければならないのだ。


 呼び出し音が三回鳴った後、低い男の声が応えた。


『はい、桐野です』

「夜分に申し訳ない。東大の蓮見だ」


 一瞬の沈黙。


『……もしかして壮介か?』


 声に驚きの色が混じる。


「ああ。本当に久しぶりだな、圭吾」

『三十年ぶりか。どうした、こんな時間に』


 蓮見は言葉を選んだ。電話で話すには複雑すぎる内容だ。


「実は、相談したいことがある。できれば直接会って話したい」

『……よほどの事情のようだな』


 桐野の声が真剣になった。


「教え子が一人、亡くなった。その死に方が尋常ではない。そして、彼が遺した資料も」

『分かった。明日の午後なら時間が取れる。場所は?』

「そちらに伺う。霞が関なら、私も行きやすい」

『2時に本省の喫茶室で。2階だ』

「ありがとう」


 受話器を置いた後も、蓮見の脳裏には久坂部のメールがこびりついて離れなかった。


 何かを封印するための巨大な蓋。


 その言葉が持つ含意に、彼の背筋が冷たくなった。


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