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東京の西に関する、いわゆる怪異の断章  作者: 藍沢 理
第3章 怪異の起こした事件

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第4話 日刊東京デジタル 令和7年5月1日朝刊

東京西部で連続失踪 すでに30名超

特別捜査本部を設置 集団催眠の可能性も


 東京西部の山間部で4月以降、相次いで発生している失踪事件について、警視庁は30日、被害者が30名を超えたことを受け、多摩西警察署に特別捜査本部を設置した。


 一連の失踪事件では、行方不明者の多くが「水の音が聞こえる」「水に呼ばれている」などの異常な言動を示していたことが判明。警察では、集団催眠や新興宗教団体の関与も視野に、広域捜査を開始している。


 捜査関係者によると、失踪者の最終目撃地点は、いずれも奥多摩湖を中心とした半径15キロ圏内に集中。現場からは、失踪者の所持品とともに、意味不明な文字や図形が書かれたメモが複数発見されているという。


「通常の失踪事案とは明らかに異なる」と、ある捜査幹部は語る。「薬物反応は出ていないが、失踪者の多くが水に関する強迫観念を示している。何らかの暗示や洗脳の可能性も排除できない」


 失踪者の家族への聞き取りでは、失踪前に共通して見られた異常行動が明らかになっている。長時間の入浴、水道水を大量に飲む、「水底の声」について語る、意味不明な図形を描くなど、水に関連した奇行が目立つという。


 また、複数の失踪者が「扉が開く」「七つの封印」などの共通したフレーズを口にしていたことも判明。警察では、特定の団体が関与している可能性があるとみて、宗教団体や自己啓発セミナーなどへの捜査も進めている。


 地元住民の間では不安が広がっている。奥多摩町に住む主婦(67)は「最近、湖の様子がおかしい。風もないのに波が立ったり、夜中に変な音がしたりする」と話す。別の住民男性(72)も「昔からこの辺りには近づくなと言われていた場所がある。何か関係があるのかもしれない」と不安げに語った。


 東京都は、奥多摩湖周辺の夜間立入りを当面自粛するよう呼びかけるとともに、住民に対し、不審な勧誘や集会への参加を控えるよう注意を促している。


 警視庁の捜査一課は「現時点で事件性は確認されていないが、これだけの人数が短期間に失踪するのは異常事態。あらゆる可能性を排除せず、捜査を進める」とコメント。情報提供を呼びかけている。


 なお、警察関係者への取材で、実際の失踪者数は公表されている30名を大幅に上回る可能性があることも分かった。「把握できていない失踪者もいる。パニックを避けるため、情報は慎重に扱っている」と、ある関係者は明かした。


(社会部・鵜飼哲也)




[関連記事]奥多摩湖 建設時にも不可解な事故多発


 今回の連続失踪事件で注目を集める奥多摩湖だが、昭和32年の小河内(おごうち)ダム完成に至るまでの建設期間中にも、不可解な事故が多発していたことが、本紙の調査で明らかになった。


 建設工事は昭和13年に着工されたが、戦争による中断を経て、完成までに19年の歳月を要した。この間、公式記録では87名の殉職者を出している。


 しかし、当時の工事関係者の遺族への取材では「実際の犠牲者はもっと多かった」との証言も。「原因不明の失踪や、説明のつかない事故死が相次いだ」と、ある遺族は語る。


 また、ダム建設により、945世帯、約6000人が移転を余儀なくされたが「移転先不明の世帯が相当数あった」との指摘もある。


 地元の郷土史研究家は「あの土地には、古くから人を寄せ付けない何かがあった。ダムで水に沈めたことで、それが目覚めたのかもしれない」と話している。


(編集委員・門脇修一)


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