到着
「なんで居るのよ…」降りれる島は、他に大きな三宅島と最南端の八丈島がある。
三宅島はホテルが充実してるし八丈島は手付かずの自然がある。
降りるとすれば、いずれかだろう。
なんで三蔵島で下船するのが、淳と優だけなのか…
「それはこっちも一緒!なんで、こんな◯〇◯と!」
言葉にはしなかったが、ババアと聞こえた。
「ガキのくせに〜っ!」淳が優の頭を爪を立ててグシャグシャにする。
「オヤオヤ、仲良しやね〜」他の島は歓迎の囃子などがあるが、三蔵島は民宿のおばあちゃんが迎えに来ただけだ。
「仲良くないです!」淳は鼻を鳴らしておばあちゃんの
後を付いて民宿のおじさんが待つ車に乗り込む。
「お世話になります〜」と乗りながら頭を下げると優も乗ってきた。
「なんでよ?!」淳がにらむ。
「あ〜っ、とうが立った女のヒスとか勘弁やわ!」優はさすが配信者なので言葉を良く知ってる。
が、あまりに的確すぎると自殺行為となる。
狭い車の後部座席で機材でふさがった両手で淳に首を絞められた。
前の助手席のおばあちゃんが微笑みながら見てる。
「本当に仲良しやね〜」
「どこが?!!!」2人同時に答えた。
港から山の方へ向かう手前で車は高台の敷地に入っていった。
「このまま山の中に入ると島の神様『御神さま』が奉られてる御神神社があるんよ。
良かったら、すぐ挨拶行ってきなさい。」車を停めながらおじさんが無愛想にそう言った。
この島は、他の島ほど観光地化が進んでないのは、この島の神様へのリスペクトの高さが障害になってるらしい。
とにかく島民は、何より島神を敬い奉っている。
なのでしきたりも多く観光客も動きを制限される。
おじさんは良かったらと言ったが、これはほぼ強制だとガイドブックにも書いてあった。
まず島に入ったなら、ご挨拶をしないといけないらしい。
民宿の中に入ると1階の海に開けた茶の間が10畳ほどで「ここで夕飯と朝ご飯出すから食べに降りてね。」とおばあちゃんが説明する。
台所を過ぎて裏山の方に向かうとトイレと浴槽があった。
そのまま風呂を突っ切ると木戸の外には岩風呂の露天があった。
「客は、アンタらだけたから良かったら一緒に入って良いよ。」おばあちゃんがイタズラっぽく笑う。
「私達本当に仲悪いですから!」淳が弁解する。
「後から入ってギャーギャー言われたくないから、僕が先に入るで!ええな?」優が面倒くさそうに言う。
「変な垢落とさないで綺麗に使ってよ!」淳が言い返す。
2階に上がると洗面が廊下にあり、そこに鏡もあった。手前の部屋の襖を開ける。
「ここが淳さんの部屋ね。」6畳ほどのこじんまりとした部屋だ。
窓からは大海原が見える。
「わあ〜っ、スゴい風景ですね〜」東京湾みたいなネズミ色じゃない、真っ青な紺碧の大海原だ。
淳は早速荷物を下ろして窓側に寄る。
「隣が優さんの部屋ね。」おばあさんに案内されて優も荷物を置いたようだ。
音が筒抜けだ…
「あの…突き当たりの部屋には変更出来ないんですか?」優の部屋に入ってきて淳が頼む。
「う〜ん、ご夫婦とか家族用だからね〜料金変わるけど?」おばちゃんが首をひねる。
「あっ、はい、分かりました。」淳は諦めた。
それと他の宿と違う点がある。
「あの…部屋に鏡がないんですね。」淳が聞く。
洗面行くまで自分の顔が確認できないのだ。女としては不安だ。
「あっ、ごめんね。この島では部屋に鏡は置いたらダメなのよ。
持ち物に鏡とかあったら、廊下に出しといてね。」
おばちゃんは当たり前みたいに言う。
「どうしてですか?」優がキラキラした目で聞く。
「山の御神様は海へ行かれる時に鏡を通って行かれるのよ。人間が使う道は使わないの。見られることを嫌うから。
だから部屋に鏡があると神様を通せんぼしてしまう事になるのよ。」
おばあちゃんが説明する。
「面白いですね〜それをネットで知らせても良いですか?これから島に訪れる人にも注意喚起になると思うし。」優が熱心に話を聞いて携帯にメモっている。