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三蔵島  作者: たま
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アートの島

田舎の美術館で学芸員をやってる(じゅん)は疲弊していた。

私設美術館の為、人の異動は無い。

おじいちゃん達が、やりたい放題。おかげで新しい学芸員が入ってもすぐに辞めてしまう。

常に学芸員募集中の美術館なのだ。

刀や磁器の専門美術館なので、海外の客が多い。

人手不足で300日連続勤務もした事ある。

もう辞める!と言いたいが、学芸員資格を活かせる仕事など

なかなか無い。

今回はもう限界を迎えて医者の診断書を提出して長期休暇をもぎ取った。

その足で今インスタで噂になってる「アートの島」と言われてる三蔵島(みくらじま)へ行く大型船に飛び乗ったのだ。

島のあらゆる場所にアートがあるらしい。

竹芝から大型船で7時間くらいだ。夜行で朝には着くらしい。

島の民宿は3軒くらいしかなく、一人旅を受け付けてくれる宿はそこしかなかったので「御神(おんかみ)宿」にした。

島の守り神の名らしい。

アートの島になる前は土着の信仰が根強く他所の人間を受け付けない島だったらしいが、東京のリゾート会社が有名アーティストに作品を頼み、島の至る所に映えスポットを作った。

インスタグラムであっと言う間に拡散し、アートの島になったのだ。


その為、急に増えた観光客にまだまだ受け入れ態勢が整っていない感じだ。

ほとんどの人は手前の三宅島のホテルに止まり、三蔵島には日帰り観光する人が多い。

が、(じゅん)はとにかくゆっくりしたいのだ。

島でアートだけ見てボーッとしたいのだ。

その上で、これからの身の振り方も考えたいのだ。

友達もチラチラ結婚しだし、子供が生まれた友達もいる。

片や仕事バリバリでキャリアの道を進んでる子もいる。

(じゅん)は、そのどちらでも無い気がする。

好きなアートに囲まれて、じっくり考えたくて竹芝から大型船に乗り込んだ。


夜行なのでわらわらと人が賑やかに乗り込んでくる。

淳みたいに1人の客は少ないようだ。

でも、この寂しさが良い。

毎日毎日、人にあれしろそれしろと息つく暇も無かった。

やっと新人が入っても、あっと言う間に泣いて辞めてしまう。男は選定の段階で落とすから、若い女の子しか入らない。

その上で、やれ愛人なれやご飯付き合えや言われて大学出たての女の子は悲鳴を上げて辞めていく。

淳が生き残ったのは、言われても受け流し無視し、なんなら田舎の強みで奥様へ母経由で話を持って行くからである。

その上で、淳の父は武道の達人だ。道場主の娘なのだ。

父の耳に入れば、美術館のオーナーでも容赦しないだろう。

そんな訳で、1人残された学芸員の淳は三十路までフル稼働してきたのだ。

残ってるのは腰巾着な若いコネ入社のボンボン達だけだ。

働く意欲は限りなく薄い。

だが、無理やり仕事を押し付けてきた。

自分達で回してもらうしか無い。

1週間後それで回るのなら、もう辞めて良いかな?と

淳は考えている。

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