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名前を付けてはならない

作者: 夏火

 可愛いものが好きだ。ロリでもショタでもないけれど。

 美少女も美少年も目の保養。少がつてなくても、目の保養だけど。

 それに、小さい子供は美がついてなくても、だいたいは可愛い。だいたいに含まれないやつもいることはいるが。


 小動物だってこちらに害がなければ可愛い分類だ。

 襲ってくるやつや害獣認定は別。仕事上見た目だけで愛は語れない。哀しい。


 フリルの服やリボン、フワフワなスカートなども見てる分にはとても心躍る。

 自分には無縁だけど。似合わないとかの前に仕事上邪魔だ。

 公私は分けてるけど、緊急時がいつ発生するかわからない仕事なもので、オシャレは自分で楽しむものじゃなくて見て楽しむものに変化してしまった。

 まぁ、さしてオシャレな部類の人間じゃなかったので後悔はないけど。


 可愛いは正義だ。もちろん異論は認めるし、正義だとは思いはするが限度はある。要は優先順位の問題。

 可愛い美少女とクソ生意気な小僧がいて、私が大きさの違うクッキーを持っていたとしよう。両方が同時に大きいクッキーを欲した時、日頃の行い込みでだろうが美少女に大きい方を渡すと思う。私はね。

 他が不公平だと思っても、それはその人の価値観だし。

 まぁ、目の前でこれ見よがしに渡したりはしない。

 私が悪者になるのはいいけど、職種として悪者になる訳にいけないので。あと、クソ生意気な小僧の後の言動が予想通りだと美少女が可哀相なので。


 そんな私の職業は、クラムト王国リンデンノール辺境伯騎士団、第三騎士団ワラライ砦ワラライ都市所属騎士。第三騎士団長直轄部隊の魔道騎士。

 長い名称だが、要は辺境伯の私設騎士団の第三騎士団長の雑用係だ。

 事務仕事したくないマンの、クソ団長のお守が主なお仕事である。

 見た目が極上の美少年なおっさんは、脳筋だが事務仕事をサボることにかけてはプライドを捨てて自分の容姿でごり押しして逃げ回るので、薄幸の美少年を心を鬼にして仕事に向かわせねばならない。

 普段は美少年な容姿について言及したら、七割本気の殺気飛ばしてくるのに。

 可愛いものや綺麗なもの好きには辛いお仕事である。

 おかげで、世間様からは私は血の通っていない冷徹魔女などと呼ばれている。クソ腹立つ。

 騎士団内部、特に第三騎士団副団長や団長補佐や侍従、事務方からはすこぶる評判はいいが。余り嬉しくない。奴を机の前、椅子に括り付けられる貴重な人材だと涙を流されても複雑だ。

 私は魔道騎士であって家庭教師でも子守でもないのだが。

 団長も黙って仕事だけしててくれたら、目の保養にはなるがすぐサボろうとするからな。

 近頃は私もサボりの共犯に仕立てようとしてくる。

 なにが「デートしよう?」だ。

 デートの前に仕事を片付けて私に休みをくれ。


 そんな理不尽の塊のような団長は、人の頭に巣食ってはなれない。

 そのことも理不尽。まぁ、八つ当たりのようなものかな、これは。

 可愛いものは好きだけど、観賞の対象であって愛を伝えたい対象じゃない。はずだった。

 私の好みや憧れは、年上高身長な細マッチョ。ついでに仕事ができるタイプ。

 おのれ、こうして思い出すと高身長以外あてはまるな。

 やればできる子な団長は、団長になるだけあって剣の腕はいうもなが事務処理だってちゃんとすればできる。

 嫌いだからやらないだけで!

 締めるとこ締めるタイプだから、仕事は意外にできるんだよな。腹立つことに。

 そして、職務上あの人を追いかけまわして仕事させる係な私は、あの人にとって優しい部類の人間ではない。

 小さくて可愛くて優しい人がタイプだと豪語しているあの人。ついでに胸派らしく、大きいと尚いいらしい。

 嫌味か?

 ちなみに、私は大きくはないが小さくもない。

 可愛いタイプでも、優しいタイプでもない。口うるさいからな。

 なので、この感情には名前を付けてはならない。

 ポーカーフェイスは得意な方だし、誰も気づいてないだろう。

 この感情に名前がないなら、きっと。

 あの人に恋人ができても、結婚しても。

 「よかったですね」「おめでとうございます」そういったあとに「仕事してください」と続けられる。

 一人になって、喪失感があっても慟哭することなく淡々と職務を遂行できるはず。


 だから、名前を与えてはならない。

 蓋をして、見てはならない。

 覗き込むなんてもってのほか。

 絶望を味わいたい人間なんて、いない。

 いないよね?まぁ特殊性癖の人は一定数要るから、絶対とはいわないけど。

 私は嫌だ。

 

 尊敬し敬愛できる団長。

 あなたが本気で共犯を望むなら、大概のことは共犯になりましょう。

 だけど、「デートしよう?」。

 これの共犯だけには死んでもなれません。

 あなたの幸せを祝いたいから。

 無理です。

単純明快。理解不能。

この二つが共存する、人の感情はとても複雑怪奇。

共感の生き物になれない筆者は、言語レベル初級。

ついでに豆腐メンタルなので、暗殺しに来ないでください。


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