ep 4 キャラメイク
リアル→ホーム画面→代行者さんの謎空間。
場面は変わってるのに話は進まない。次でようやくエクスライブラ世界です。
世界がまた変わった。
先程までいたのんびり快適空間から一転、上には青空が広がる空間に立っている。
「ようこそ エクスライブラ へ」
上から中性的な美人がふよふよと降りてきた。
「これからきみの旅立ちを手伝わせてもらうよ。少しの間だけれどよろしく。僕のことは代行者と呼んでね。」
さっきのペンギンはロボット感が強かったけど、こっちは本当に人と話してる気分になるな。
「よろしく代行者さん」
まぁ挨拶は大事。代行者さんに好感度設定とかあるのか知らないがあったらいいなぐらいの気持ちで好感度稼ぎを意識して接しよう。
「じゃあ早速体の調整を始めようか」
代行者さんが手をかざすと目の前に俺が現れた。正確には俺のアバターが。
「キャラクリかぁ。」
「何か困ったことがあったり体を今の自分から大きく変えたい時は僕も手伝うから呼んでね。」
そう言って代行者さんは後ろの方に下がっていった。
顔も良いがまずは試しに身長を変更したアバターを試してみたい。というわけで
「代行者さーん」
「おっ早速かい?」
なんか嬉しそうだな代行者さん。
「とりあえず体を大きくしてみたいんだけど。」
「お安いご用さ!ちなみに大きくってどれくらい?」
どれくらい、どれくらいか。
「とりあえず限界まで頼みます」
まぁどこまでできるか気になったからなぁ
「ok!」
代行者さんが何かを弄り始める。
ぐんぐんと俺の目の前でアバターは見上げるような巨漢になっていく。
「そこのボタンで入ってみて」
言われたとおりボタンを押してみる。
視点が上がり元々自分と大して変わらない身長だった代行者さんのつむじが見えるくらいまで大きくなった。すげぇ面白い。
「あれ?」
突如全身に違和感が生じる。動きはするが自分の頭の動きと体の動きが一致しない。
「きみ大丈夫かい?」
代行者さんが俺を見上げる。
「あぁ無理っぽいです」
代行者さんがまた何かをいじるとあっという間に俺の体は元通りになった。
あゝ実家のような安心感。
さっきの感覚を言語化するなら小さい時にうまく走れない時の感覚に近いか。
腕を振って足を上げて体を前に倒す。
そんな体の動かし方の一つ一つはできてもそれらを複合化してできている走ると言う動作が最適化できていない、、、そんな感じだ。
これは慣れるまでは相当時間がかかるだろうなぁ。仕方ない夢の2m超えボディは諦めよう。だが身長を伸ばすことを諦めるつもりもない。
せいぜい違和感を妥協できるラインを探るとしよう。
「すいません代行者さん。ちょっとずつ大きくしていくことってできますかね?」
代行者さん協力の元最終的に+5cmぐらいに落ち着いた。この五センチは俺が日本人男性の平均身長を超えるための大事な5cmだ。そこの代行者さんよ誤差とか言わないでくれ。
だいぶ体型に時間がかかったが次に顔だ。俺は顔がそこそこいい。なにせうちの家業はサービス業。美人だったらしい母親譲りの素材を武器に容姿を磨く努力はしてきた。その甲斐あってか今ではカフェのイケメン店員と口コミされるぐらいにはだ。
俺は一瞬変えなくていいかと設定を閉じかけた。
改めて俺のアバターを見る。
これは、、、初期設定からほぼ変わっていない。これだと特定されかねないし、何よりうちの常連連中にもバレるな。ゲーム中の関係が拗れて問題が起きた時にリアルに影響が出るリスクがある時点で100害あるだろう。ということで急遽髪型をスキンヘッドに。目の色も黒から緑に。おっ傷もつけれるじゃん。、、、
数分後俺の目の前にいたのは犯罪を犯して指名手配中ですって感じの悪人面だった。隣で代行者が爆笑している。
まぁこれならリアルバレしないとは思うがこれは流石にやり過ぎだな。
今度は元の顔から髪を短くして顔の中心にデカデカと傷をつけてみた。うんまぁこれくらいならまぁいい塩梅だろう。俺はアバターの設定を終了した。
「じゃあ次に性能面を決めていこう。」
代行者さんはまた別のものを出した。
天秤?
「早速だけれどアーツの作り方を教えるね」
「えーっと代行者さん。アーツってなんです?」
なんとなくわかるけど一応聞いておこう。
「あっ説明をするの忘れてた。ごめんね!アーツとは何か。理屈やら歴史やらを置いておいて結果だけ言うなら事象の再現と言うことになるのかな。アーツは結果と結果を組み合わせて新しい結果を作れる。まぁみててくれ。」
代行者さんはさらに白と黒の丸いガラス玉のような物を幾つか取り出す。
「これはアーツオーブ。スキルを構成する核となるものだよ。白い方は恩恵と言って有益な効果をもたらす物で、黒い方は代償と言ってリスクや条件を課すものさ。」
「代償ね、、、それはまた随分物騒な。」
「まぁそんなに恐れる必要もないよ。代償といってもピンキリだからね。今回のだと再使用にかかる時間の延長だね」
代償のアーツオーブとやらを天秤の皿に載せる。
「アーツにおいて恩恵だけを受けることはできない。強い恩恵には相応の強い代償を求められる。これが神の定めた公平な法則で君たちはこれさえ守ればどんなアーツだって作れる。」
白い方をもう一方の皿に載せる。
「どんなアーツもっていうのは夢が広がりますね。」
「あぁアーツは無限の可能性があるからね。もっとも今載せたのは一撃の威力を上げるアーツオーブでとってもシンプルなものだけどね。」
2つ乗せたを天秤は釣り合っている。
「これで効果ができた。次は動きを作るよけど、うんまぁこんなもので良いか。」
どこから出したのか棒を上に構えてを振り下ろす。
「よし出来た。スラッシュと言ってみて」
棒を手渡してくる。
成人男性だからスラッシュと叫ぶのは恥ずかしいなどと言うと思うなよ。俺も親父も
大声で「エターナルフォースブリザード」を唱えることに羞恥のないタイプの人間だ。この程度なんてことない。
「スラッァァシュ」
何も起きなかった。、、、、はっず。
「あぁww今のは君がw元気いっぱいすぎてスラッシュがフフっ、スラッァァシュになって不発wだったんだよww」
代行者さんが過呼吸になってる。いやー好感度稼ごうとか思って丁寧に接してたけど今のでわかった。こいつとの接し方はもっと雑で良いなこれ。この遠慮しない代行者さんとの初期設定は正直楽しいけど人を選ぶぞ。後で感想に書いとくか。
「どうする?スラッシュじゃなくてスラッァァシュに変える?」
なんとか息を持ち直した代行者さんがニヤけながら聞いてくる。
「いやこのままでいいよ。」
気を取り直してもう一度。今度はちゃんと発音する。
「スラッシュ」
今度は一瞬光るエフェクトと共に体が勝手にさっき代行者さんがやっていた動きをする。外から無理矢理じゃないのに勝手に体が動くと言う感覚は初めてだが不思議と違和感はない。
「おー今度はできたね」
この後もう一つ「ショット」と言うアーツを貰った。
「じゃあこれで旅立ちの手伝いはおしまいだね。アーツの作成や調整がしたかったら神殿にきてくれれば僕は手伝うよ。」
「いろいろありがとな」
「新人のサポートも僕らの仕事さ。これお金ね。じゃあいってらっしゃい。」
また景色が変わった。
『エクスライブラ』
筐体で現在絶賛βテスト中のMMORPG。
筐体の技術が先進的すぎて他社の筐体対応のゲームの開発はまだまだ遠く現在筐体でプレイできるタイトルは販売元であるピオニアが開発に噛んでいる3タイトルのみである。エクスライブラはピオニアが世界的なAI作成企業と提携し最新のAIを用いたNPC達とゲームの管理自体も「テミスシステム」と呼ばれる自動調整でほとんど行うという挑戦的な作品。
自動化されたゲームバランスの調整によってプレイヤーの自由度を極限まで高めるようゲームデザインがなされている。
世間では筐体の廉価版の発売と同時に正式リリースするタイトルと噂されている。