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第十七話「突破」sideレブレサンド

「うおおおおおお! これでどうだぁぁぁぁ!!」


 レブレサンドは雄叫びと共にレッドドラゴンの腹に剣を突き立て切り開いた。

 

「―――――――!!」


 人の言葉とは思えない絶叫と共に、レッドドラゴンの体内の臓器があちこちに腹から漏れ出し、大地に広がる。

 ドラゴンは敵意を持った表情でレブレサンドをにらみ、その瞼を落とすことなく、地に伏した。


「取った……、取ったぞぉぉ!!」


 ドラゴンの死を確認したレブレサンドはできうる限り大声で叫んだ。

 彼の部隊は四分の一が負傷し、かなりの痛手を負ってはいたが、敵の最大戦力であるレッドドラゴンを倒す大金星を得たのだ。

 士気高揚につながるに違いない、そう確信し、彼は戦場を見渡した。


「へ……?」


 しかし、その戦場ではヴォーパルウルフたちの突進をしのげず、半壊した王国の兵があちこちに転がっていた。

 そんな馬鹿な話があるものかとレブレサンドは慌てて馬を拾い、防衛線に撤収を始める。

 

「一体何が―――」


 当初の作戦ではレブレサンドの部隊が敵の突進とすれ違うように、レッドドラゴンに突貫、奇襲を行う。

 レッドドラゴンを敵の群れから引きはがし、一時的に戦場で機能させなくすることとあわよくば無力化するための作戦だ。


 ただ、レブレサンドも、そのほかの兵士も自分たちの置かれている状況に気が付いていなかった。


「大丈夫か」

「は、はい……なんとか」


 レブレサンドは息のある兵士のそばに馬を寄せ、安否を確認する。

 思ったよりも落ち着いているようで、もう少し詳しい話を聞いても大丈夫そうだ。


「何があった?」

「……分かりません。ヴォーパルウルフならば、鎧や盾の鉄を切り裂くようなことはできないのですが……」

「切り裂かれているな」

「はい……」


 レブレサンドが、兵士のそばに転がっている鎧を見ると三本線にえぐり取られている。

 確かに、同じ魔物でも、取り分けて強力な個体は確かに存在する。

 だが、それは稀も稀、あの大群すべてがそうであるわけがないはずだ。


「そうなると……問題は装備のほうか?」


 レブレサンドは馬から降り、物は試しにと落ちている兵士の鎧を踏みつけてみた。

 くしゃりと簡単にひしゃげ、折れてしまった。


「そんな……」

「……鉄が粗悪なんだ。もしくは精練が甘いか」


 農民として生活をしていたころ、農具の目利きで知りえてた知識でレブレサンドは答えにたどり着いた。


 先日問題を起こしたフリードリヒ家は鉱山の管理、並びに軍の武器の管理を担っていたはずだ。

 その彼らの問題行動のおかげで権威が失墜し、そのしわ寄せで各方面の鉄の品質が落ちてしまっていたと考えられる。


(いや、これはそれだけじゃない――)


 レブレサンドは、フリードリヒ家の性急な行動を思い返し、一度考えを改めた。


(おそらくは、だいぶ前から軍の装備の品質が落ちており、それが露呈する前に事態を収めようとした。

 それがあの事件なのかもしれない。そうだとすると、これはまずいのかもしれないな――)


 貴族としても位の高いフリードリヒ家ならば、ロマネの変貌した日の情報なども手に入れられるだろう。

 おそらくはロマネの元侍女あたりを抱きかかえたか、軟禁したか……。


「レブレサンド様、我々はどうしたら」

「……そうだな。防衛線は突破され、魔物はもう王都内に入り込んでいる。

 まずは動ける兵を集め、東西門から援軍の要請、並びに住民の避難を手伝ってもらえるように願い出てくれ」

「分かりました」

「足は俺の馬を使ってくれ。

 俺たちの部隊はこのまま北門から突入して、入り込んだ敵をなるべく引き付けておく」

「ご武運を!!」


 レブレサンドの馬を借り、王国の兵はその場を去っていった。


 それを見送ったレブレサンドは改めて決意を固める。

 魔物の群れの狙いはおそらくロマネである。

 姫を魔物から守る騎士。それはいつか聞いたおとぎ話の様ではないか。


「まあ、やれるだけ、やるしかない――命の使い時だな」


 覚悟を決め、大きく息を吸ったレブレサンドは空に向けて息を吐いた。


 その視線の先には大きな鳥。

 いや、鳥はドレスなんか着ない。


(じゃあ、あれは、リザードマンか? しかしリザードマンは飛ばないし、ドラゴンにしては小さい。

 いや。いやいやいやいやいや、まてまてまて、あれは――――!?)


 彼の視線が捉えたものは、北へ飛んでいくドラゴンの翼を生やしたロマネだった。


「えー……」


 レブレサンドは悪い予感を感じ、頭を抱えた。

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