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祝福の時

モーゼンタール家。その名前を知らない人はこの国には一人としていないだろう。

先祖代々魔法使いで、長年この地域を治めてきた、千年以上続く由緒正しき一族である。そして僕はこの家に産まれた38代目だ。この家系が途絶えることそれ即ちこの国の滅亡だ、でもそんなことが起きるなんてことは到底ないだろう。隣国との仲はちょっと悪いけど、それでも攻め込まれたとしても簡単に敵兵を殲滅できるほどの魔術があるし、国民からの信頼も厚いから。まぁ、僕が祝福を授かる前までは…ね。

「あなたに神が祝福を授けてくださるでしょう。これから司祭様が聖堂へとご案内いたしますので神の御像に祈りを捧げてください。」

馬車を降りた僕が服装を整えていたらシスターの一人が案内してくれた。

祝福とは、この世界に存在する王国を統べる王族だけに授けられる、簡単に言ってしまえばチート能力みたいなものだ。その王族の子が12歳になると儀式を経て神から授かることが出来る。

授けられる祝福の数は個人差があり、最大で五つの祝福を一個人が所有していたという記録が残されている。まぁ、その人はモーゼンタール家で、僕の先祖なのだけども…。

王族だけに与えられるから、国はその王族の家系が常に治め続けるって感じで、僕の家系もそういう感じで千年も続いているわけだ。僕の父は全属性の魔法が扱える祝福と魔力を高める祝福、『マジックマスター』『魔力増加』を持っていて、母は魔法を使うときに消費する魔力量が減少するっていう祝福、『マジカルファイン』を持っている。変な名前だな。

「こちらが聖堂となります。ささ、シーナイ坊ちゃま、神の御像にお手をお合わせください。そして神の名を3度唱えると祝福を授かることが出来るでしょう。」

あ、どうも僕はシーナイ=モーゼンタール、38代目モーゼンタール家次期当首です。こちらの司祭さんは僕の古くからの知り合いというか、第二の親とも言える方ですね。

でも、神の姿を模した像とは言え、そう簡単に祈りを捧げていいのだろうか。本当の意味で神に祈りを捧げる事にはならないのではないだろうか。

「たった今、シーナイ様が聖堂に参られました。本日8月13日はこの国の記念すべき日になるでしょう!次期国王様が祝福を授かり、魔法国家の安泰を約束してくださるでしょう!」

おぉ、TV中継ですか…じゃあ偶像への懐疑的な意見は言えないな…。

国民は自分の国の次期国王がどんな人なのかほとんど知らないから、授かった祝福だけでも知ろうとしてるのかな。でもなぁ、うちの家系は祝福が無くても以上に強い魔術を使えるからなぁ。その域まで僕が達することが出来るのか不安だよ。僕平均よりも魔力少ない方だし。あぁ、『魔力増加』の祝福が欲しいなぁ。

「シーナイ、国民に挨拶を。そして早く祝福を授かるんだ。」

おっとっと、考え事しすぎちゃったみたい。お父様に叱られちゃった。でも家族同伴ってちょっと恥ずかしいな。もう12歳なのにさ。

「お兄ちゃん、かっこいいよ!」

弟からかっこいいって言われるのもなおさら恥ずかしいや。9歳のかわいくて純粋な自慢の弟なんだけど、シチュエーションがね。

「どうも国民の皆様、初めまして、シーナイ=モーゼンタールです。この度は僕の12歳の誕生日のお祝い会と祝福の儀に来てくださりありがとうございます。」

国民の歓声が上がった。なんか「かわいい~」とか「結婚して~!」とか「女の子みた~い!」とかを言ってるご婦人方がいるようだけど…、ここは笑いかけておこうかな。スマイルって大事だしね。

「ほら、祈りを捧げろ。」

お父様…、もしかして早く終わりたいんですか?まぁ重要な仕事が入ってきたとか言ってたし急いで終わらせて仕事に取り掛かりたいのは分かるけどもさ、僕も早く帰りたいけどもさ。はぁ、めんどくさいな。 

「突然なのですが、待ちきれないので今ここで神に祈りを捧げたいと思います。」

こう言っておけば御像に祈りを捧げなくていいかな。それに早いしね。たしかこの一連の流れはただのパフォーマンスみたいなものだってお父様も言ってたし、まぁ大丈夫でしょう。

「神よ、どうか私に祝福をお捧げください。」

僕は手を合わせて祈りを捧げた。

そして目を開けると僕は謎の空間にいた。たしかお父様が、祈りを捧げたら神がおらっしゃられる謎の光の空間に転移するっていってたな。という事はここがそうなのね。一面真っ白だ。やっぱりこういうところは白で光ってるのがセオリーなんだ、暗闇ってのも想像してたけど。

「こんにちは、ァなたがシーナイですネ。」

突如目の前に神様らしき何かが現れた。本当に突如。瞬きもしてなかったはずなのに…現れた瞬間が見えなかった…。この人型の何かは凄い迫力がある…。僕はピクリとも動けなかった…。

「わたしは始祖の神ゴッドイル。神々の始祖である。汝二祝福を授けよゥ。」

あなたって呼ぶのか汝って呼ぶのかどっちなんだ…はっきりしてほしいな。

「ォぬし、聞ィてォるのヵ?」

あ…今度はおぬしか…。

「シーナイ=モーゼンタール38世!聞ィておるのか!」

「あっ、はい!」

しまった、また考え事をしてて反応が遅れてしまったぞ。

「なにをボケっとしている。神々の祖である朕の御前でァることを忘れたか。」

一人称もはっきりしてないのかこの神様…。でも神様の御前でボケっと考え事をしていた僕も悪いし…ここは謝ろう。

「申し訳ありません。少し考え事をしておりました。」

「考ェごととな?」

やばい…どんな事を考えておった?とか聞かれたらちょっとまずいかもな。話をそらさないと。

「はい、貴方様の迫力に恐れをなしたか、体が一切動かなくなってしまいまして…体が動かせないならやることと言えば考える事だけといいますか…そうなってしまいまして…。」

ダメだ…これじゃ話をそらせてないじゃないか僕!

「ふむ、それは余の力じゃ。拘束してォる。動かれて攻撃だのなんだのされては面倒でな…許せよ。」

へ~、さすが神様だ、動きくらいは簡単に止めれると。というか神に攻撃するような王族がいるってこと?世の中は恐ろしいな。それにしても本当に神様なんだなぁ。

「そういう事だったのですね、いえいえ、神々の祖たるゴッドイル様を許さないどころか、妬む事すら恐れ多いです。」

「ゥむ、すまぬな。さて、その話はどゥでもィィのだ。貴様に祝福を授けよゥではなィか。」

おぉ、ついにですか。この空間と現実がリアルタイムで連動してたら何気に5.6分くらい祈り続けてるって感じになるのかな。お父様とかご先祖様は何分くらいかかったんだろう。

いったいどんな祝福かな。僕は魔術師の家系にしては魔力が少な目だし魔法も扱いもまだまだ難しいし、魔法関連の祝福をいただければそこら辺の問題も解決するのかな。さすがに弟と魔法勝負して苦戦するのはちょっとね。魔力も技術もまだまだだからな僕は。

「貴殿に授ける祝福は…『超回復』、『タンパク質生成』、そして『摩擦力操作』だ。」

……………はい?今なんとおっしゃいました?

僕のこの驚きは言葉にならなかった。普段考えるだけであまり声に出さないのが影響したのかな…。

そうかそうか…『超回復』『タンパク質生成』『摩擦力操作』…か…。僕の家系は代々魔法使いなんですが???

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