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73.ハーマン夫妻とオリバー

こんなことがあり得るのだろうか。

そんなことを考えながら部屋のベッドに腰を降ろす。


私は元奴隷のハーマン。

妻アリソンと住んでいた村を盗賊に襲われ、

違法奴隷にされていたところ、子供に助けられて今に至る。


その子供に出会ってからは信じられないことばかりだった。


子供は牢屋で動けなかった私達に、

「僕を主人として認めてもらえるのなら、カラッカの街で奴隷から解放します。帰りたい場所がある方には少しですがお金を渡します。帰る場所がない人は、僕が住んでる村で僕の仕事の手伝いをしてもらえるなら安全な生活を保障します。どうですか?」

と問いかけた。


最初は信じられなかった。普通ならついていかない。

どう考えても貴族の息子が道楽で言ってるようにしか思えなかった。

だが私には愛する妻がいるのだ。妻を守る為にも、この条件を飲むしかなかった。


彼の奴隷になって、カラッカの街に向かっている間、

彼は私達に普通に話しかけてくれた。

彼の同行者も、誰一人私達を蔑む人はいなかった。


街に向かう最中、モンスターに襲われることはなかった。

なぜなら彼がテイムしたモンスター達が護衛してるからだ。

あの歳で凄すぎる。


同行者の話を聞くと彼は廃村ギリギリの村の農家の息子らしい。

信じられなかった。

実際に同行者の中に彼の父親がいたのだから信じるしかなかったが。


意を決して、彼の父親に話しかけてみた。

「カイン様、お話いいですか?」

「は?あー俺には様をつけないでくれ、ハーマンさんもすぐに奴隷じゃなくなるんだから」

「は、はい。分かりました。カインさん。一つ聞きたいのですが、ライル様はどのような方なのでしょうか?」

「ライルか。俺の息子とは思えないくらい優秀だ。ライルのおかげで、長年くすぶっていた村の活性化が進んでいる。

まあ親目線だが愛くるしい天才だな。他人目線でいうと異常な天才かな。心配だよな。でも俺の息子は本当にあんた達を解放するから安心しな」


カインさんも含め、話しかけた同行者は、みんな同じようなことを言った。


私は彼に賭けてみようと思った。

解放後に自分達で生活するか、彼の元で彼の手伝いをするか問われた際、彼の元で働くことを選択した。

まだ信用はしきれていないが、妻を守るためには彼についていくことが1番だと感じたのだ。



街につき、

冒険者ギルドに登録に行く彼について行った。

彼は同じ年齢くらいの男の子と女の子をつれてギルドに入っていった。私達は馬車で待っていた。

ちょっとすると彼は馬車に戻ってきて、ギルドの訓練所で模擬戦のテストがあるといい、

テイムしたモンスター達と執事のようなゴーレムが彼の後を追いかけた。


数分後、訓練所の方から冒険者が数名出てきた。

「おい!あの子供達すごくねーか?」

「やばいだろ!Bランク冒険者がボコボコだぞ」

「テイムモンスターが強いのはわかるけど、魔法使いの女の子と弓矢の男の子もなかなかエグいぞ」

「おまえ、ちゃんとみてなかったのか?1番エグいのは真ん中の男の子だよ。あいつあの歳でモンスター5体と人間2人に指示出してたんだぞ?」

「はぁ?まじかよ!」


聞こえてきた話を信じることはできなかった。

Bランク冒険者をボコボコ?

彼が戦闘を指揮?頭がこんがらがった。


数分後、彼は何もなかったかのように戻ってきた。



奴隷商につき、奴隷解放が本当にされた。


私は彼を信じることにした。

彼についていくことを表明し、宿に移動することに。


宿でも驚きがあった。

普通の部屋を割り当てられたのだ。しかも妻と2人部屋。

奴隷じゃなくなったにしろ、今まで通り狭い部屋で雑魚寝を覚悟していたが、

綺麗なベッドがついてる2人部屋だった。

久々にベッドを使い、ゆっくり寝ることが出来た。妻も喜んでいるようだった。


街でいろいろあり、今後の拠点となる村についた。

聞いていた通り、廃村ギリギリの村の中に謎のエリアがあった。

綺麗に整地された場所に、綺麗な建物と畑が広がっていた。

彼はどこかにいったかと思ったら、

「今からみんなの家を作るね」と言い出した。


何を言ってるんだ?と思ってる間に

目の前に3階建ての建物ができていた。


「201号室はハーマン夫妻の部屋だから。これ鍵ね。無くさないように!あとできればでいいんだけど、みんなの面倒を2人に見てほしい。若い子が多いからご飯とかもろもろ」


その提案を了承し、部屋に入ると、宿で泊まった部屋の数倍は素晴らしい部屋だった。

私達は神様に出会ったのだろうか?


「アリソン!俺は彼、ライル様のために全力で働こうと思う。それでもいいか?」

「あなたがそうするならついていきますよ。ライル様にはまだ短い期間ですがとても大切にしてもらいました。助けてもらった恩は一生かかっても返しきれないかもしれません。だからあなたに頼るだけでなく、わたしも全力でライル様のために働こうと思う」


そう決意した私達は、今まで味わったことのないフカフカのベッドで身体を休めた。



▽ ▽ ▽




僕はオリバー

ライル様に奴隷解放してもらった元奴隷だ。


ライル様はだいぶ年下なのに、すごい方だ。


解放された後、宿に泊まった。

僕は疾風の斧のヒューズさんと同じ部屋になった。


「今日はゆっくり休めよ。今まで大変だったんだから」

「はい、ありがとうございます」

「そういえばオリバーは戦闘向きのエクストラスキルだったよな?」

「そうです、でも農家だったので剣を握ったことは数えるほどしかないです」


僕は農家の息子として生まれ、9歳の時にエクストラスキル『雷鳴の二刀』を取得した。

親からは農家に使えないスキルだといわれ、農家の跡取りだから必要ないと剣を持たせてもらえなかった。

その数年後、村が盗賊に襲われた。

僕は戦闘スキルを持っているのに何もできなかった。


「まあ、今後は数えきれないほど剣を握ることになるだろうからな」

「え?」

「ライルが言ってたんだよ。お前が自衛できるレベルになるように稽古をつけろってよ。だから明日剣を買いに行ってくれってさ。俺はいけないからリリアンかクララと一緒にな」


いままで否定されてきたエクストラスキルを認めてくれたライル様。

僕は自衛のためだけではなく、ライル様の力になるために剣を握ることを決意した。


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