71.襲撃
カラッカの街を出発した。
先頭はフリードが引くマジック馬車。俺・父さん・ゴーレ・ニーナ・カシムが乗っている。
真ん中の馬車には、御者はハーマンさんで元奴隷達・シモン・リリアンさん・クララさんが乗っている。
最後尾の馬車には、御者はヒューズさんでグーちゃんとキリーが乗っている。
ノコは周囲を警戒している。
15分ほど進んだところで、ゴーレが馬車を止めた。
ジジジジジジジジジジジジ
「マスター、何やら襲撃のようです」
「え?なに?」
俺は馬車から降り、進行方向を見ると、20人ほどの冒険者のような身なりのやつらが道を塞いでいた。
「すみません!通りたいんですけど!」
すると道を塞いでる冒険者の1人が
「通すわけねーだろ!お前が大量の金品と商品を奪ったって知ってるんだよ!ここでお前を捕まえないと困る奴らがいるんだよ!」
冒険者は良くわからないことを言っている。
「すみません!人違いだと思いますが!」
「お前ライルだろ?馬車の特徴も完全一致してるんだ。しらを切るな!」
色々考えてみるが、思い当たることがない。
「どうしても通さないんですかー?」
「当たり前だろ!冒険者舐めんな!」
「半殺しくらいにはしちゃうと思うんですけど平気ですか?」
「なめるなよ!やってやるよ!」
冒険者達が武器に手をかけた。
「おい!どうした?」
最後尾の馬車から降りたヒューズが来た。
「は?え?ヒ、ヒューズさん?」
「おーお前ら。何してんだ?」
「いや、ヒ、ヒューズさんこそ!」
「いや俺はこいつの護衛と、こいつの村に拠点を作ったから帰るんだが。お前らは?」
冒険者達はヒューズさんの姿を見て困惑しているようだ。
「いやそこのライルってガキが金と商品を商業ギルドから盗んだから、一緒にいるやつ含め全員捕縛して連れてこいって依頼を受けて」
「はぁ?なんだそれ!こいつは盗みなんてやらないぞ?むしろ、商人ギルドに商品売ってきたから金はあるけど物はないぞ」
「いやでも・・・」
「てかその依頼、誰に頼まれた?冒険者ギルドを通した依頼じゃないだろ?」
「すぐに逃げてしまうからって、ギルドを通すのは後って話になってます。依頼者は商人ギルドのグリモスというやつです」
「ライル、知り合いか?」
「俺が原因で異動になったギルド職員です」
「はぁー。お前ら!その依頼人の逆恨みだ。ライルは盗みなどしていない。それはAランク冒険者の疾風の斧が保証する」
「わ、わかりました、信じます」
ジジジジジジジジジジジジ
チチチチチチチチチチ!
ノコがシモンの糸を掴んで飛んでいる。
その糸の先にはぐるぐる巻になったグリモスが引っ張られていた。
「おい!離せ!虫が!ワシを誰だと思ってるんだ?」
「ヒューズさんこいつです!こいつに依頼されました」
「ライルを捕縛した後に、街の外で引き取って殺すつもりだったんだろうな」
ヒューズさんは頭を抱えた。
「しょうがない、警備兵に引き取ってもらうために戻るか」
ヒューズさんが引き返す指示を出そうすると、街の方から馬車が2台走ってきた。
先頭の御者が見たことある顔だった。
冒険者ギルドでボコボコにした光剣の輝きのジェイクだった。
▽ ▽ ▽
馬車に乗っていたのは、
光剣の輝き・商人ギルドマスター・アイザックさん・カラッカの街の警備隊だった。
「警備隊長のデンです。ヒューズさんとライルさん、お怪我はありませんか?」
「大丈夫だが、どういうことか説明もらえるか?」
「はい!説明します」
警備隊長のデンは経緯を説明してくれた。
光剣の輝きのジェイクが、俺を捕縛する依頼が商人ギルドから出ていると知り、
疑問に思い商人ギルドに確認したところ、そんな依頼はしてないことが判明。
ライルに恨みがあると思われるグリモスがどこにもいないことが判明。
商人ギルドマスターから警備隊に連絡が行き、警備隊と商人ギルドマスターとアイザックさん、
そして戦闘になる可能性があるからと光剣の輝きが同行して今に至るとのこと。
「すでに騙されて依頼を受けた冒険者達には誤解を解いているので、罪には問わないでほしい。主犯のグリモスは捕縛済みだ、警備兵で引き取ってほしい」
「承知しました」
警備隊長と話が終わると商人ギルドマスターとアイザックさんが話しかけてきた。
「ライルくん、本当に申し訳ない。完全にワシの管理不足だ。深くお詫びする。この件に関しては、言い訳のしようがない。販売の約束を破棄していただいても構わない。本当に申し訳ない」
ギルドマスターとアイザックさんが頭を下げる。
「いや、これに関してはギルドマスターは関係ないですよ。販売もアイザックさんにお願いしたいです」
「ありがとうございます!ライルさん!」
「ありがとう。ライルくん。お詫びと言ってはあれだがこれをもらってくれ」
ギルドマスターは銀色の輪っかを渡してくれた。
「これは?」
「カラッカ商人ギルド公認の商会に渡される物だ。今後、商会が大きくなれば力になる物だと思ってくれ」
「わー!ありがとうございます」
「紙は発注をかけましたので、届き次第村に運びますね。ご相談なのですが、その時に同行させたい者が1名いるのですが、大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ!ぜひいらしてください」
ギルドマスターとアイザックさんと話し終わると、光剣の輝きが近づいてきた。
「今回のことについてだけは、ありがとうございます。でも許してないから」
「わかってる。俺達も反省した。確実に調子に乗っていた。
この前お前達にボコボコにされたあと、冒険者ギルドに降格を頼んだ。お前のいう通り、ランク相応の人間になろうと思う。俺らにBランクは早かったみたいだ」
「わかりました。反省は受け取りました。いつか変わったと思ったら、うちの村に来てもいいよ。おもてなししてやるから」
「ありがとう。頑張るよ」
光剣の輝きは本当に反省したようだ。
今後に期待したい。
「では我々はこれで失礼します」
警備隊と光剣の輝きと商人ギルドはカラッカの街に帰っていった。
「すこし時間を食ってしまったが、再出発しよう!」
ヒューズさんがそういうと馬車3台は村へ向かった。




