66.奴隷商
無事試験に合格して、冒険者ギルドカードをもらった。
受付のお姉さんがギルドカードの説明をしてくれた。
「3人はGランクからスタートになります。依頼を達成していくとランクが上がるから頑張ってくださいね。
カードは依頼を受けるときに身分証として提出してもらうから無くさないように。ステータスプレートと統合できるから、やってみて」
「まだ、みんな魔法適性検査をしてないので持ってません」
「そうだったわね。じゃあ、もらったらやってみて!冒険者についての細かいことは疾風の斧に教えてもらって」
俺はものすごい違和感を覚えた。
「あの、さっきとお姉さんキャラ違くないですか?」
「あーバレちゃった?実はクララから君達のこと聞いていたから利用させてもらっちゃった」
「まじ?」
「でもライルくんあの詰め方ひどいよ、冒険者ギルドのシステムは確かに穴が多いけどあんなに詰めなくても」
「ほんとすみません」
「まあ副ギルドマスターの私が実力認めたんだから、自信持って」
「副ギルドマスター!?」
「そうよ。副ギルドマスターのマリーナよ。よろしくね!」
▽ ▽ ▽
俺達は冒険者ギルドを後にして奴隷商に向かっている。
その間、父さんとヒューズさんの説教を受け続けた。
カシムとニーナは庇ってくれるが、こればかりは諦めて説教を受けた。
説教も2週目に差し掛かろうとしていたら、奴隷商に到着した。
想像と違い、美術館のような清潔さがあった。
俺はヒューズさんと奴隷達と中に入っていく。
すると綺麗な衣服を着た、30代前半の男性がやってきた。
「ヤリネ奴隷商へようこそ。本日は販売でございますか?ヒューズ様」
綺麗な服を着た男性が話しかけてきた。
「いや、今回は付き添いなんだ。ヤリネさんが対応してくれるなんてありがたい」
「この街のBランク冒険者様のご対応は当然私の仕事でございます。で、どなたのお付き添いですか?」
俺はヤリネさんに言う、
「俺です。ここにいる奴隷を解放しようと思います」
「まあ、なんと。お名前頂戴してよろしいですか?」
「ライルといいます!」
「なんと!光剣の輝きをボコボコにしたライル様ですか?」
「えっ!なんで知ってるんですか?数分前のことなのに」
「商人は情報が命ですから」
「なるほど」
「失礼致しました。奴隷商のヤリネと申します。よろしくお願い致します」
「よろしくお願いします」
「奴隷解放ですが、後ろにいる20名ですか?私の方で買い取らせていただければ、多少お勉強させていただきますが?」
「いや、解放で大丈夫です。一応みんな違法奴隷と言っているんですが、犯罪奴隷じゃないかの確認もお願いします」
「わかりました」
ヤリネさんモノクルのようなものを使い、奴隷をジロジロ見るとニヤッと笑った。
「全員違法奴隷でございました」
「ありがとうございます。では解放をお願いします。」
「では皆さんこちらの部屋で作業を致しますのでいらしてください」
ヤリネさんは奴隷を連れて奥の部屋へ入っていった。
奴隷解放はほんの数分で終わった。
「お疲れ様でございました。本来なら金貨20枚ですが、今後ともよろしくお願いしますと言う意味も込めて金貨10枚で」
「え?そんなにですか?」
「私達、奴隷商人も人間でございます。人助けをしてる人を無下には扱いませんし、奴隷には幸せになってほしいのです。奴隷に時々いるのです。いい主人に買われて欲しいと思える奴隷が。なので、これからもご贔屓にしていただきたく思います」
「わかりました。よろしくお願いします」
▽ ▽ ▽
奴隷商を出て、帰るところがある元奴隷達11人に大銀貨を3枚ずつ渡した。
元奴隷達は感謝の言葉を俺に言い、散り散りに去っていった。
「君達は本当に村についてくるでいいの?」
頷く奴隷達。
「じゃあ簡単に自己紹介をしてもらってもいい?エクストラスキルとか言えるものは教えてほしい」
そういうと、盗賊の拠点で御者をしてくれた男性と女性が前に出た。
「私達は夫婦で、ハーマンとアリソンと申します。この度助けていただいて、ありがとうございます。私達は生まれた村で暮らしていたところ、村を襲われて奴隷になっていました。もう親もいませんので、ライル様のもとで、頑張って働かせていただきます。
スキルですが、
私は『牧畜の熟練者』といって家畜を育てるのが得意なエクストラスキルです。スキルは持っておりません。
魔法適性は水です。
妻は『意匠の創作者』といってモノを作るというより、モノのデザインを考えるのが得意です。スキルは裁縫を持っております。魔法適性は土です。よろしくお願い致します」
「旦那共々よろしくお願い致します」
「ありがとう。2人とも硬いからもうすこしリラックスしていいよ。じゃあ次は」
俺がそう言うと女の子が2人と男の子1人が前に出てきた。
「ライル様!奴隷解放、ありがとうございます。ゾーイ15歳です。奴隷になる前は商人の娘として生きていました。エクストラスキルは『多才な黒子』といい、誰かのサポートを得意としています。魔法適性は風です。よろしくお願い致します」
「ライル様!この度は助けていただきありがとうございます。ルーシー15歳です。私は奴隷になる前は、親がやっていた食堂で配膳を担当しておりました。エクストラスキルは『街の踊り手』といい、ダンスや身体を動かすのが得意です。魔法適性は火です。よろしくお願い致します」
「ライル様!助けていただき、ほんとにありがとございます。オリバー18歳です。僕は農家の息子でした。
エクストラスキルは『雷鳴の二刀』といい、二刀流が使えることと、二刀持っているときに限り剣に雷属性を付与できます。魔法適性は水です。よろしくお願い致します」
「みんな良いエクストラスキルだね!じゃあ最後は」
獣人が4人、前に出てきた。
「犬人族のチェスターと息子のジョシュ7歳。そして、狐人族のベラ7歳と兎人族のララ7歳です。
先日お話しさせていただいたのですが、奴隷になって買われた貴族の家でベラとララを見つけました。
主人が死に、フリー奴隷になった瞬間に息子と2人を連れて逃げていたところをまた捕まってしまい、今に至ります。
過酷な仕事は私がやりますので、息子と2人には何卒恩赦をいただければと思います。私はエクストラスキルの『強顎の獣』を持っているので、戦闘向きでございます。よろしくお願い致します」
「ジョシュとベラとララには疾風の斧が先生をやってる学び舎に通ってもらうつもりだから。チェスターが戦闘をしたいなら疾風の斧と稽古してもいいかもね。とりあえずみんなよろしく!」
「「「「よろしくお願いします」」」」
9人は頭を下げた。
「とりあえず宿に行こう。ヒューズさん早く宿行きましょ」
「馬車3台と馬4頭にフリードとグーちゃんを入れられる厩舎がある宿はあそこしかねーか。とりあえず案内するわ」
「こっちの馬車は収納できるから2台ね。
あと部屋なんだけど、
俺と父さんとニーナとカシム
リリアンさんとクララさん
ヒューズさんとオリバー
ハーマンさんとアリソンさん
チェスターさんとジョシュとベラとララ
ゾーイとルーシーの部屋割りでよろしく」
「「「え?」」」
元奴隷達が一斉に声を出した。
「え?なに?まずかった?」
「いえ、もう奴隷じゃないとはいえ、部屋をちゃんといただけるなんて思っていなかったもので」
するとヒューズさんが言った。
「慣れろ!このお人好しがやることを。だからと言って甘えるな・お前達が行く村は甘える奴なんていないからな」
「「「はい!」」」
「早く行こ!」
3台の馬車は宿に向かった。




